前世粗チンの俺が勇者の引き立て役で殺される巨根オークに転生した話

揚惇命

文字の大きさ
23 / 23
二章 大王烏賊編

風俗嬢ミサ

しおりを挟む
 ミサミサに着ぐるみの手を握られ、王族だと言われてしまった俺。

「アハハ~ミサちゅわん何を言い出すんだい。ラインハック家の僕ちんが知らないわけないじゃないか……ぬわんと!?」

 こういう出会い方で無ければ、ゲーム世界では同じく勇者の踏み台にされる仲同士、仲良くしてやろうとも思ったが……現実世界で俺の心を救ってくれた存在を手篭めにしようとしたとあっては、許す訳にはいかんか。

「おい、アイツ王族らしいぜ」

「あ、あぁ。俺のさっきの言葉、不敬罪とかで処罰されたりとかしねぇよな」

「し、知らなかったんだからだ、大丈夫だろ」

「でも、王族に粗末なナニって……俺処されるかも」

「いや、俺らよりもあの貴族の坊ちゃんの方がヤバいだろ。王族に面と向かって愚民って」

「た、確かに」

 民衆とは本当に単純な生き物だよな。
 得体の知れない着ぐるみを着ただけの中身がオークの俺をミサミサの嘘の言葉を間に受けて、お忍びで来ている王族と認識した途端に手の平返しなのだから。

「ラインハック卿。いやチッターよ」

「ひぃっ!」

 いや、名前を呼んだだけでビビり過ぎだろ。
 そんなんだから勇者に軽くあしらわれるんだぞ。

「ヤバいって、アイツ貴族のボンボンの名前知ってるって!マジものの王族だって!」

「そ、そうだな。俺らラインハック家のボンボンとしか言ってないもんな……今のうちに謝っておくべきかな?」

「もう遅いって!口は災いの元だったと諦めるしかねぇよ」

「そうかもう遅い……か。俺、もう得体の知れない何かを見ても絶対に無視することにするわ」

「俺も」

 まぁその点、民衆より冒険者の方が弁えてるところはあるな。
 冒険者は得体の知れない俺を見ても気にするそぶりは見せても無視を決め込んでたからな。
 それよりもこの怯えたチッター君をどうするべきか。

「チッターよ。そう怯える必要はない。お互い、ここでは会わなかった事にしよう。周りの皆もそう怯えることはないぞ。先程までの言葉で処したりすることはない。俺はここに居なかった。良いな?」

「は、はひぃ!何処の誰かは存じませぬが寛大な御心に感謝致しまする」

 先程までとは打って変わって平身低頭で謝るチッター君。
 こういう所も勇者に小物として軽くあしらわれるところだよな。
 というか俺がクレアとねんごろにならなかった世界線で、勇者の女になっていたクレアとやっていた場合、勇者の守りによって、酷い目に遭ってたのはチッター君の方なのだが。

「おい、聞いたかさっきの俺の不敬、許してくれるってよ」

「あ、あぁ。これが王族の威光って奴なんだな」

 まぁ、これでもう騒ぎ立てられることもないだろう。
 というか、本当にここに王族がお忍びで来るのかどうかなんて、少し考えれば分かりそうなものだが。

「ミサミサもこれで許してくれるな?」

「ミサミサ……?は、はい。そういうことですので、ラインハック様のお気持ちは嬉しいのですが」

「も、勿論です!どうぞどうぞ、王族。ではなくて……そ、そちらの着ぐるみの男性とお楽しみください。僕ちんはこれで失礼します」

 いうだけ言って、走っていってしまったチッター君。
 これが脱兎の如くというやつか。

「あ、あの。ここでは公共の目もありますので、寄って行かれませんか?」

 ミサミサが囁くような声で言うので、共に中に入っていく。
 というか店のキャストに嫌がらせをするのを追い払うのは、店長やスタッフの役目だと思うが……いや現実世界の『アソコヘGO』も気弱な店長が1人で切り盛りしていてスタッフも居なかったような……成程、そういうところも原作再現みたいな感じか。

「い、いらっしゃいませ。あ、ミサさんとラインハック家の坊ちゃま……じゃないんですね。あのど、どちら様ですか?」

「店長、こちら私のお客様で王族の人なの。ラインハック家の勘違い坊やに困ってたところを助けていただいたの。そういうわけだから私の奢りで部屋を使わせてもらっても良い?」

「お、王族!?も、勿論。ど、どこでも好きに使ってください。僕は何も見ていない。僕は何も見ていない」

 関わりたくないってのを口に出すのはどうかと思うが……1つ良いことを思い付いた。

「店長よ。この女性を身請けしたいのだがいくらの金額を用立てれば良い?」

「「えっ!?」」

 店長とミサミサの声が揃う。
 勝手に俺のことを利用したのだ少し驚かせるぐらいでバチは当たるまい。

「はぁ。ミサを身請け……(うちの稼ぎ頭を身請け……普段なら喜ぶべきところを相手が王族となると……ゴクリ。ダメだダメだ。高値を付けて睨まれるなんてこと……)ミサはもう十分うちで稼いでくれましたからミサが良いならお代は結構です」

「「えっ?」」

 今度は俺とミサミサが同時に驚いた。
 というか、この店長めちゃくちゃ逡巡してただろ!
 目がだいぶ泳いで何度か金マークが目に出てたぞ。
 で、関わりたくないと判断して、ミサミサ任せにしやがった。

「本当に良いのか店長?」

「は、はい……。」

 いやめちゃくちゃ惜しがってるだろ!

「そうか……店長よ別に今すぐにというわけではない。驚かせてすまなかった。だが、言質は取ったぞ。後でやっぱりお金をと言っても渡さぬからな」

「も、勿論です」

「ミサミサもすまなかったな。勝手に利用されたせめてものの意趣返しだ。許せ」

「もう。酷いお人ですね。それでは部屋に御案内します」

 俺はミサミサの後に続いて、部屋へと入った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...