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1章 第六天魔王、異世界に降り立つ
15話 ロー・レイヴァンドの憂鬱
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サブロー・ハインリッヒが1人になりたいと外に出て行ってから、ロー・レイヴァンドの元には、貴族たちが押しかけていた。
「レイヴァンド卿、あのような貴族としての礼儀も弁えぬ大馬鹿者に好き勝手させるなど看過できませんぞ!」
「よもやナバル郡とタルカ郡が攻めてくるなど世迷言まで、あのような大馬鹿者に政務などできるはずもない!」
「ここは、マーガレット様に代行してもらうべきだ!」
さらに貴族たちの罵詈雑言は、この場にいるヤスやタンダザークにまで及んでいた。
「それに貴様は、士族でありながらロルフ様を守れなかった無能であろう。死罪を命じたいところだが話の邪魔だ!とっととでていけ」
「それに奴隷と同じ空気を吸うなど我慢ならん!この場で叩き斬ってくれるわ!」
その前に立ち塞がるロー・レイヴァンドが威厳を込めた声で制する。
「それを言うなら貴殿らはロルフ様の1番近くにいて、守れなかったのではあるまいか?敵に情けをかけてもらい見逃されて、亡骸だけは守ったとでも言うのではなかろうな?」
「いくらレイヴァンド卿としてもその言葉は看過できませんぞ!取り消されよ!」
「ヤスもタンダザークもあの状況で持ち場を死守したのだ!褒められることはあっては、貶される筋合いなどない!貴殿らが取り消せというのならそちらが先に取り消すのが筋であろう!」
「どうやらあの大馬鹿者のお守りさせられるうちに奴隷共への扱いを忘れたと見える。我らは断じて、あの大馬鹿者を当主には認めませんぞ!」
「サブロー様は、大馬鹿者なんかではない!俺たち奴隷に対しても礼節を待って尽くしてくれる!貴様らの方がよっぽど野蛮人だ!」
「俺も奴隷を見下してた側ですけどね。坊ちゃんのことを悪く言うのは許せませんぜ。それに、坊ちゃんは大馬鹿者じゃありませんぜ。それにマジカル王国の使者に対しても一歩も退きやせんでしたぜ。マーガレット様なら首を斬れと騒いで、ややこしくなったんじゃねぇですかい?」
自分たちよりも格下の士族や奴隷に言われて、刀を抜く貴族たち。
「貴様ら如きが我らに口答えするんじゃねぇ!」
「大馬鹿者には馬鹿が集まるってことだな!全く、嘆かわしい!こんなことならあの大馬鹿者の躾は我らがやるんだったわ!」
剣を抜いた貴族に対して、ロー・レイヴァンドが静かに言葉を紡ぐ。
「剣を抜いたということは覚悟できてるのであろうな?」
貴族たちと違い剣を抜いていないにも関わらず喉元に剣を当てられている感覚に貴族たちがその場から動けなかった。
「若様が御出陣なされました!」
その静寂を打ち破ったのはマリーの一言であった。
ローとヤスとタンダザークの3人は驚愕の表情を浮かべ、貴族たちは嘲っていた。
「それはそれは、御出陣ですか。ククク。先行きを考えて自ら姿をくらませるだなんて、良い心がけですねぇ」
「これでマーガレット様に代行してもらうということで構いませぬな?」
ローは、その言葉に答えずマリーに聞く。
「若は、どうして出陣した?」
「ロー様、それが思った以上にナバル郡とタルカ郡の動きが速くて、斥候の知らせを聞いて、すぐに迎撃に!」
「馬鹿な!?本当にナバル郡とタルカ郡が攻めてきたというのか!?直ぐに若を追う」
「ロー様、俺も連れて行ってください。サブロー様を殺させるわけにはいきません」
「全く、度胸があるのかしらねぇが1人で無謀だろ。いや、それともあの時のように何か勝算があってのことかい?どっちにしてもロー様、俺もついて行きやすぜ。坊ちゃんは、死なせちゃならねぇ」
「ヤスにタンダザークよ。感謝する」
部屋を後にする3人を横目に貴族たちは、今後のことを話し合っていた。
「ナバル郡とタルカ郡には、あの大馬鹿者が勝手をしたと謝罪するとして、今後のオダ郡だが」
「反乱を起こしそうな奴隷を全員処断しましょう」
「言うことの聞かない士族連中も引っ捕らえるのが良いかと」
「せめて、マーガレット様がもう1人産んでくだされば」
「何処かのガキをロルフ様の子として傀儡にするのはどうですか?」
「まぁ、親を戦争で亡くした子供を使えば良いか。目下の危険人物はレイヴァンド卿だ。睨んだだけで我らが手も足も出なかった」
「ならば、追手を差し向け、機を見て殺させるのがよいでしょうな」
「いくらレイヴァンドといえどナバル郡とタルカ郡の兵と戦いながら背後を気にする余裕はないでしょう。あわよくば、あの大馬鹿者も亡き者に」
「そうすれば、我らの天下よな。奴隷と士族を排除して、商人に特権を与えて、その上がりをピンハネすれば、直ぐにでも懐を潤せますぞ」
「絞れるだけ縛らねばな」
オダ郡の貴族は腐り切っていた。本来なら、次期当主であるサブローを皆で盛り立てて行かなければならないところを自分たちの懐事情と立場しか考えていないのである。
日の本における公家たちは、金を無心することはあってもそれを朝廷のために使っていた。
だがこの世界の貴族は、奴隷や士族が居なくなったら商人や職人に融通してやる代わりに上がりを取って、懐を温めようとする屑ばかりである。
ここにサブローが居たら、全員叩き斬られていたであろう。速やかな改革が必須なのである。
「レイヴァンド卿、あのような貴族としての礼儀も弁えぬ大馬鹿者に好き勝手させるなど看過できませんぞ!」
「よもやナバル郡とタルカ郡が攻めてくるなど世迷言まで、あのような大馬鹿者に政務などできるはずもない!」
「ここは、マーガレット様に代行してもらうべきだ!」
さらに貴族たちの罵詈雑言は、この場にいるヤスやタンダザークにまで及んでいた。
「それに貴様は、士族でありながらロルフ様を守れなかった無能であろう。死罪を命じたいところだが話の邪魔だ!とっととでていけ」
「それに奴隷と同じ空気を吸うなど我慢ならん!この場で叩き斬ってくれるわ!」
その前に立ち塞がるロー・レイヴァンドが威厳を込めた声で制する。
「それを言うなら貴殿らはロルフ様の1番近くにいて、守れなかったのではあるまいか?敵に情けをかけてもらい見逃されて、亡骸だけは守ったとでも言うのではなかろうな?」
「いくらレイヴァンド卿としてもその言葉は看過できませんぞ!取り消されよ!」
「ヤスもタンダザークもあの状況で持ち場を死守したのだ!褒められることはあっては、貶される筋合いなどない!貴殿らが取り消せというのならそちらが先に取り消すのが筋であろう!」
「どうやらあの大馬鹿者のお守りさせられるうちに奴隷共への扱いを忘れたと見える。我らは断じて、あの大馬鹿者を当主には認めませんぞ!」
「サブロー様は、大馬鹿者なんかではない!俺たち奴隷に対しても礼節を待って尽くしてくれる!貴様らの方がよっぽど野蛮人だ!」
「俺も奴隷を見下してた側ですけどね。坊ちゃんのことを悪く言うのは許せませんぜ。それに、坊ちゃんは大馬鹿者じゃありませんぜ。それにマジカル王国の使者に対しても一歩も退きやせんでしたぜ。マーガレット様なら首を斬れと騒いで、ややこしくなったんじゃねぇですかい?」
自分たちよりも格下の士族や奴隷に言われて、刀を抜く貴族たち。
「貴様ら如きが我らに口答えするんじゃねぇ!」
「大馬鹿者には馬鹿が集まるってことだな!全く、嘆かわしい!こんなことならあの大馬鹿者の躾は我らがやるんだったわ!」
剣を抜いた貴族に対して、ロー・レイヴァンドが静かに言葉を紡ぐ。
「剣を抜いたということは覚悟できてるのであろうな?」
貴族たちと違い剣を抜いていないにも関わらず喉元に剣を当てられている感覚に貴族たちがその場から動けなかった。
「若様が御出陣なされました!」
その静寂を打ち破ったのはマリーの一言であった。
ローとヤスとタンダザークの3人は驚愕の表情を浮かべ、貴族たちは嘲っていた。
「それはそれは、御出陣ですか。ククク。先行きを考えて自ら姿をくらませるだなんて、良い心がけですねぇ」
「これでマーガレット様に代行してもらうということで構いませぬな?」
ローは、その言葉に答えずマリーに聞く。
「若は、どうして出陣した?」
「ロー様、それが思った以上にナバル郡とタルカ郡の動きが速くて、斥候の知らせを聞いて、すぐに迎撃に!」
「馬鹿な!?本当にナバル郡とタルカ郡が攻めてきたというのか!?直ぐに若を追う」
「ロー様、俺も連れて行ってください。サブロー様を殺させるわけにはいきません」
「全く、度胸があるのかしらねぇが1人で無謀だろ。いや、それともあの時のように何か勝算があってのことかい?どっちにしてもロー様、俺もついて行きやすぜ。坊ちゃんは、死なせちゃならねぇ」
「ヤスにタンダザークよ。感謝する」
部屋を後にする3人を横目に貴族たちは、今後のことを話し合っていた。
「ナバル郡とタルカ郡には、あの大馬鹿者が勝手をしたと謝罪するとして、今後のオダ郡だが」
「反乱を起こしそうな奴隷を全員処断しましょう」
「言うことの聞かない士族連中も引っ捕らえるのが良いかと」
「せめて、マーガレット様がもう1人産んでくだされば」
「何処かのガキをロルフ様の子として傀儡にするのはどうですか?」
「まぁ、親を戦争で亡くした子供を使えば良いか。目下の危険人物はレイヴァンド卿だ。睨んだだけで我らが手も足も出なかった」
「ならば、追手を差し向け、機を見て殺させるのがよいでしょうな」
「いくらレイヴァンドといえどナバル郡とタルカ郡の兵と戦いながら背後を気にする余裕はないでしょう。あわよくば、あの大馬鹿者も亡き者に」
「そうすれば、我らの天下よな。奴隷と士族を排除して、商人に特権を与えて、その上がりをピンハネすれば、直ぐにでも懐を潤せますぞ」
「絞れるだけ縛らねばな」
オダ郡の貴族は腐り切っていた。本来なら、次期当主であるサブローを皆で盛り立てて行かなければならないところを自分たちの懐事情と立場しか考えていないのである。
日の本における公家たちは、金を無心することはあってもそれを朝廷のために使っていた。
だがこの世界の貴族は、奴隷や士族が居なくなったら商人や職人に融通してやる代わりに上がりを取って、懐を温めようとする屑ばかりである。
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