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2章 オダ郡を一つにまとめる
126話 サブロー暗殺
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セル・マーケットの胸騒ぎは正しかった。
モリトキが奇襲に向いている複数箇所にトガクシの面々を配し、可能性の1番高いところに腹心であるダンゾウを派遣。
そこにサブロー・ハインリッヒの暗殺を伺っていた盗賊団が居た。
間も無くしてダンゾウからモリトキに連絡が入る。
「頭領、サブロー様の暗殺を請け負ったのは、フリーダム盗賊団という者たちの模様。話してみたところ頭領を嵌めた者と同一人物の可能性あり。このまま、そちらにお連れする。御理解得られたし」
「うむ。ダンゾウから見て信頼足る人物か?」
「頭領。何かを隠している可能性は否めませぬ。ゆえに警戒は怠らない方が良いかと」
「では、何故。御館様の元に案内を?」
「サブロー様に合わせることで、胸の内を探ることができると判断致した」
「ふむぅ。それは危険な賭けだダンゾウ。御館様に万が一のことあれば」
「その時は、変わり身にて、この身を差し出す所存」
「そこまでの覚悟があるのなら御館様にはこちらから話をするとしよう」
「有難き」
ツーツーツーと言って、通話が切れる。
落ち着いて考えていたモリトキに声が聞こえる。
「遠くの人間とまるで近くにいるように話せるあーていふぁくと?であったか?便利なものだな」
「御館様!?どうしてこちらに?」
「なにやら話声が聞こえたのでな。して、どうであった?あーてぃふぁくととやらで話をした結果は?」
「はっ。ダンゾウが御館様の暗殺を謀る盗賊団を発見した模様。しかしダンゾウの見立てでは、この盗賊団にも我らのようになんらかの問題を抱えている可能性があると御館様に引き合わせたとのこと。危ないから許可できないと」
「であるか。だが、その必要はない。こう見えても暗殺には慣れている。自分の身は自分で守れる。許可せよ」
「御館様ならそう言うであろうと読み。既にこちらに来るように伝えた」
「仕事が早くて何よりだモリトキ。これからも頼りにしている」
「はっ」
モリトキは、サブロー・ハインリッヒに仕えるに当たって、呼び名を御館様に変更した。
当初、御城様と呼んでいたのをサブロー・ハインリッヒから御館様に変更して欲しいと頼まれたからである。
理由は明白である。
かつて、織田信長の同盟相手であった武田信玄が家臣たちにそう呼ばれていたのを聞いたことがあり、どうせ呼ばれるならこっちの方が良いとそう判断したからである。
「マタザは、居るか?」
「はっここに、おります」
「これよりダンゾウが捕えたワシの暗殺を謀った一団がやってくるとのことだ。ワシの護衛をせよ」
「ポンチョ殿ではなく俺がですか?」
「槍を手足のように器用に扱えるお前の方が対面での護衛には向いていると判断したまでのこと。嫌か?」
「いえ、期待に応えられるように頑張ります」
この男、どう見ても農民には見えない。
なにやら訳ありと判断したが名は無いと言い切る。
その癖にとんでもなく槍の扱い方が上手い。
とても初めて握ったとは思えんかったことからどこぞの貴族の御子息では無いかとワシは推測した。
こういうやつが名を捨てるのは、並大抵の理由ではなかろう。
ワシは、後押ししてやるつもりで、此奴に新たな名を与えた。
マタザとな。
名の由来か。
犬千代の奴の異名を使った。
あの大馬鹿者は、ワシの目の前で寵臣の拾阿弥を斬っておきながら権六と可成に取りなされて出奔した。
理由を話せばよかったものを、なにも話さず。
ただムカついたからなどと言っておったな。
大事な形見を盗まれたこと。
理由を話せばワシが罰したものを。
ワシの目の前で、躊躇いもなく斬ればワシが処分を降さねばならんことが何故わからんと思ったものよな。
だが彼奴は武働きにて、ワシを支え続けた。
まさに犬じゃ。
何度放逐されようともワシの元がまるで帰る家かのようによう仕えてくれた。
お前のことだワシが死んだ後は権六と禿げ鼠との間で、苦慮してあることだろう。
あの2人は兎に角、合わんからな。
皆で、信忠のことを支えていてくれれば良いが。
説明しよう。
マタザとは、槍の名手で、槍の又左の異名を取る前田利家のことである。
前田利家は、初め林秀貞の与力として、仕え、14歳の時に信長の与力になったと伝わる。
出仕停止期間中に起こった桶狭間の戦いにおいて、三つの首を挙げるも帰参を許されず。
斉藤家との戦にも出仕停止を無視して無断で参加。
2つの首を挙げ、信長の面前で功績が認められ帰参を許された。
まさに犬千代の名に相応しい忠犬ぶりを発揮した信長の家臣の1人である。
それでは、話を戻そう。
「頭領、間も無くそちらに」
「ダンゾウ、くれぐれも油断するで無いぞ」
「はっ」
こうして、ダンゾウがフリーダム盗賊団のオカシラを案内したのだが。
「サブロー・ハインリッヒ、覚悟しな!」
いきなり襲いかかってくる盗賊団のオカシラの短剣を槍にて弾くマタザ。
「サブロー様、お怪我は?」
「無事だ。こんな手荒な話し合いとは」
「そんな。どうして、ロマーニが居るのよ」
盗賊団のオカシラの呼んだ名前に反応するマタザ。
「まさか、ミランダ。君なのかい?」
「えぇ、そうよ。笑えるでしょ。お父様が嫌で逃げ出して、盗賊に身を奴したのに、お父様に脅されて、領主様の暗殺を謀るんだもの」
「君の妹も母上も無事だよ」
「そう。それが聞けてよかった。さぁ、私を殺しなさい。領主の暗殺は重罪でしょ」
「暗殺?何のことだ?モリトキ、今のは、暗殺か?」
「暗殺などと到底呼べるものでは無いかと。マタザ、この者の世話、お前に任せる。積もる話もあるだろうロマーニ・カイロ」
「!?やっぱり、兄さんの一瞬の表情を見逃さなかったのですねサブロー様」
「フッ。一瞬だけでは無い。お前が相撲で土俵に上がるために祈るように見ておった。そこから親族だろうと推測したまで」
「スパイだとは考えなかったのですか?」
「すっぱい?」
「若様、スパイです。間者ということですよ」
「フッ。そんなもの一々疑っていては、生きていけぬゆえな」
「ハハハ。やっぱりサブロー様は大物だ。ミランダのこと許してくださったこと感謝します。俺なんかでよければ、これからもサブロー様の手足となり働く所存。例え、相手が兄さんであろうとも」
「そう気負うな。ではな」
「はっ」
こうして、マタザことロマーニはミランダを連れて、この場を後にした。
モリトキが奇襲に向いている複数箇所にトガクシの面々を配し、可能性の1番高いところに腹心であるダンゾウを派遣。
そこにサブロー・ハインリッヒの暗殺を伺っていた盗賊団が居た。
間も無くしてダンゾウからモリトキに連絡が入る。
「頭領、サブロー様の暗殺を請け負ったのは、フリーダム盗賊団という者たちの模様。話してみたところ頭領を嵌めた者と同一人物の可能性あり。このまま、そちらにお連れする。御理解得られたし」
「うむ。ダンゾウから見て信頼足る人物か?」
「頭領。何かを隠している可能性は否めませぬ。ゆえに警戒は怠らない方が良いかと」
「では、何故。御館様の元に案内を?」
「サブロー様に合わせることで、胸の内を探ることができると判断致した」
「ふむぅ。それは危険な賭けだダンゾウ。御館様に万が一のことあれば」
「その時は、変わり身にて、この身を差し出す所存」
「そこまでの覚悟があるのなら御館様にはこちらから話をするとしよう」
「有難き」
ツーツーツーと言って、通話が切れる。
落ち着いて考えていたモリトキに声が聞こえる。
「遠くの人間とまるで近くにいるように話せるあーていふぁくと?であったか?便利なものだな」
「御館様!?どうしてこちらに?」
「なにやら話声が聞こえたのでな。して、どうであった?あーてぃふぁくととやらで話をした結果は?」
「はっ。ダンゾウが御館様の暗殺を謀る盗賊団を発見した模様。しかしダンゾウの見立てでは、この盗賊団にも我らのようになんらかの問題を抱えている可能性があると御館様に引き合わせたとのこと。危ないから許可できないと」
「であるか。だが、その必要はない。こう見えても暗殺には慣れている。自分の身は自分で守れる。許可せよ」
「御館様ならそう言うであろうと読み。既にこちらに来るように伝えた」
「仕事が早くて何よりだモリトキ。これからも頼りにしている」
「はっ」
モリトキは、サブロー・ハインリッヒに仕えるに当たって、呼び名を御館様に変更した。
当初、御城様と呼んでいたのをサブロー・ハインリッヒから御館様に変更して欲しいと頼まれたからである。
理由は明白である。
かつて、織田信長の同盟相手であった武田信玄が家臣たちにそう呼ばれていたのを聞いたことがあり、どうせ呼ばれるならこっちの方が良いとそう判断したからである。
「マタザは、居るか?」
「はっここに、おります」
「これよりダンゾウが捕えたワシの暗殺を謀った一団がやってくるとのことだ。ワシの護衛をせよ」
「ポンチョ殿ではなく俺がですか?」
「槍を手足のように器用に扱えるお前の方が対面での護衛には向いていると判断したまでのこと。嫌か?」
「いえ、期待に応えられるように頑張ります」
この男、どう見ても農民には見えない。
なにやら訳ありと判断したが名は無いと言い切る。
その癖にとんでもなく槍の扱い方が上手い。
とても初めて握ったとは思えんかったことからどこぞの貴族の御子息では無いかとワシは推測した。
こういうやつが名を捨てるのは、並大抵の理由ではなかろう。
ワシは、後押ししてやるつもりで、此奴に新たな名を与えた。
マタザとな。
名の由来か。
犬千代の奴の異名を使った。
あの大馬鹿者は、ワシの目の前で寵臣の拾阿弥を斬っておきながら権六と可成に取りなされて出奔した。
理由を話せばよかったものを、なにも話さず。
ただムカついたからなどと言っておったな。
大事な形見を盗まれたこと。
理由を話せばワシが罰したものを。
ワシの目の前で、躊躇いもなく斬ればワシが処分を降さねばならんことが何故わからんと思ったものよな。
だが彼奴は武働きにて、ワシを支え続けた。
まさに犬じゃ。
何度放逐されようともワシの元がまるで帰る家かのようによう仕えてくれた。
お前のことだワシが死んだ後は権六と禿げ鼠との間で、苦慮してあることだろう。
あの2人は兎に角、合わんからな。
皆で、信忠のことを支えていてくれれば良いが。
説明しよう。
マタザとは、槍の名手で、槍の又左の異名を取る前田利家のことである。
前田利家は、初め林秀貞の与力として、仕え、14歳の時に信長の与力になったと伝わる。
出仕停止期間中に起こった桶狭間の戦いにおいて、三つの首を挙げるも帰参を許されず。
斉藤家との戦にも出仕停止を無視して無断で参加。
2つの首を挙げ、信長の面前で功績が認められ帰参を許された。
まさに犬千代の名に相応しい忠犬ぶりを発揮した信長の家臣の1人である。
それでは、話を戻そう。
「頭領、間も無くそちらに」
「ダンゾウ、くれぐれも油断するで無いぞ」
「はっ」
こうして、ダンゾウがフリーダム盗賊団のオカシラを案内したのだが。
「サブロー・ハインリッヒ、覚悟しな!」
いきなり襲いかかってくる盗賊団のオカシラの短剣を槍にて弾くマタザ。
「サブロー様、お怪我は?」
「無事だ。こんな手荒な話し合いとは」
「そんな。どうして、ロマーニが居るのよ」
盗賊団のオカシラの呼んだ名前に反応するマタザ。
「まさか、ミランダ。君なのかい?」
「えぇ、そうよ。笑えるでしょ。お父様が嫌で逃げ出して、盗賊に身を奴したのに、お父様に脅されて、領主様の暗殺を謀るんだもの」
「君の妹も母上も無事だよ」
「そう。それが聞けてよかった。さぁ、私を殺しなさい。領主の暗殺は重罪でしょ」
「暗殺?何のことだ?モリトキ、今のは、暗殺か?」
「暗殺などと到底呼べるものでは無いかと。マタザ、この者の世話、お前に任せる。積もる話もあるだろうロマーニ・カイロ」
「!?やっぱり、兄さんの一瞬の表情を見逃さなかったのですねサブロー様」
「フッ。一瞬だけでは無い。お前が相撲で土俵に上がるために祈るように見ておった。そこから親族だろうと推測したまで」
「スパイだとは考えなかったのですか?」
「すっぱい?」
「若様、スパイです。間者ということですよ」
「フッ。そんなもの一々疑っていては、生きていけぬゆえな」
「ハハハ。やっぱりサブロー様は大物だ。ミランダのこと許してくださったこと感謝します。俺なんかでよければ、これからもサブロー様の手足となり働く所存。例え、相手が兄さんであろうとも」
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