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2章 オダ郡を一つにまとめる
140話 今後に向けて
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王都キュートスク、周りを霊山に囲まれた清らかな水の溢れるここに本拠を構えるのは、アイランド公国の王であり、14代目となるルードヴィッヒ14世陛下である。
そしてその前では、正座をして、両手の親指を地面につけ、深々と頭を下げるサブロー・ハインリッヒ。
「面を上げよ。サブロー・ハインリッヒ」
「はっ」
「オダにて、内乱があったことは真か?」
「はい。陛下に御心配をかけ、御報告を怠ったこと弁解のしようもございません」
「ふむ。きちんと弁えておるようで、感心感心。では、本題に入ろう、マーガレットは何処じゃ?」
「やむを得ず反乱の首謀者であったため泣く泣くその首を斬り、亡き父と同じ墓に埋めました」
「何じゃと!?お前は、実の母を殺したと?ワシのワシの後妻候補を殺したと。そう言うのか!」
「はい」
「あいわかった!この愚かな行いに対して、ワシはオダの取りつぶしを命じる!以上じゃ。下がれ!もう顔も見たくないわ!」
当然の反応であろうな。
だが、お前のような俗物に母は勿体なかろう。
子が母の幸せを願うことの何が悪かろうか。
「かしこまりました。ですが陛下、これだけは言わせてもらいたい。オダは、簡単に取りつぶしを受け入れぬ。アイランド公国からの独立を宣言する」
「!?馬鹿な!このアイランド公国を敵に回すと?」
「陛下がオダの取りつぶしを命じるのであれば」
「それは、ワシに対しての脅しと捉えるが」
「そんなつもりはありませんが。1つ、どうしてこの大事な場に宰相が居ないのでしょう?」
「フン。内乱の責任が大事な場であると申すか。尋問して、追求する場にクレーバーは必要ない」
成程。
どうやら、ワシをここに呼ぶことで一悶着あったと見た。
せめて宰相がどう言う意見なのか知りたかったのだが。
仕方あるまい。
少し早いが本当に独立を画策するべきか。
「陛下、1つ宜しいでしょうか?」
ん?
女か?
あぁ、陛下の側女の1人であったか。
「お初にお目にかかります。オダを治める若き領主のハインリッヒ卿。陛下の妻で皇后のルージュです」
!?
若い若すぎる!
その見た目で、皇后ということは、相当歳なのか?
わからん。
どんな魔法を使えば若々しい姿に。
「ふふっ。ハインリッヒ卿が驚くのも無理はありません。御想像の通りと言えればよかったのですが亡くなった皇后様の代わりに新たな皇后となりましたので、歳は陛下よりも貴方に近いぐらいかしら」
ある意味、よかったと言えよう。
しかし、この歳で皇后になるとは、案外女傑かもしれん。
油断はできんな。
「何だルージュ。お前は、ワシの隣でニコニコと。ほげぇ」
ルージュの強烈な平手がルードヴィッヒ14世の頬を2度往復した。
「何をするんじゃ!」
「ハァ。今ハッキリとしました。この国を守っていたのは、貴方じゃなくて、クレーバーだったってね!ここでハインリッヒ卿の独立を許せばどうなると思います?」
「フン。こんなクソガキの1人や2人離反したところで、踏み潰せば終わりよ」
「成程。なら、踏み潰されるのは貴方じゃなくて?」
「何じゃと!?このアマ、好き勝手に言いよって、そもそもお前は見てくれが良いだけのお飾りなのだからニコニコと笑って。ほげぇぇぇぇ」
さらに4度、ルージュの平手打ちが往復する。
「国を治めるなら国だけじゃなく人を見なさい!ハインリッヒ卿の治世は素晴らしいものです。そんな人間を敵に回せばどうなるとお思いです?」
「だから踏み潰せば。ほげぇぇぇぇぇぇぇぇ」
さらに8度、ルージュの平手打ちが往復する。
「何もわかっていませんね。貴方は、流石国を譲られただけのボンボンで、色欲に溺れるクソ野郎ですね。マーガレット様にだって、選ぶ権利はありましょう?ハインリッヒ卿の聡明さを見れば、貴方なんか選ばれることは一生無いでしょう。現実を見てみたら如何です?」
想像以上に剛毅な女だ。
陛下に対して物怖じしないどころか逆に平然と平手打ちをかまして、間違っていると指摘している。
優秀すぎる女と言えよう。
この女がいる限り、何れ陛下の方からワシに喧嘩を売らせようと考えていた計画は頓挫するやも知れん。
「このクソアマが。離縁じゃ!離縁じゃ!」
「ハァ。本当に感情をコントロールできないようですね。別に離縁は構いませんよ。でも、ここは私の祖国。黙っていたら滅ぶのがわかっているのに口を慎むなんて、できませんの」
「滅ぶのは、このクソガキ。ほげぇぇぇぇぇぇ」
「貴方は、何も聞いていないのかしら?何処か知りませんけど謎の軍隊が侵攻したのも追い返したそうですわよ。ひょっとしたらガルディアン王国やマジカル王国が密かに内乱に乗じて狙ってたのかも知れませんわね。あらあら、鈍感な愚王は、そんなことにもお気付きになられない。これで、どうやってハインリッヒ卿に勝つと言うのかしら。刃を向けられたわけでもないのに。ハインリッヒ卿は、内乱における当然の行いをしただけですのよ。それなのに、それだけで国ぐるみで、飛ぶ鳥は落としておくのが良いと。クスクス。またデイルかドレッド如き、成り上がりに口でも挟まれたんじゃなくて?」
「ぐぬぬ」
「言い返せないのが証拠ね。哀れね。ホント、利用されてることもわからないのかしら?少しは己の頭で判断しなさいませ!」
ルージュがピシャリと言い放った言葉によって、陛下は、ワシに深々と頭を下げ、お咎めなしということとなった。
こうして、ワシはルージュというこの国を取るであろう時に厄介となるであろう女との邂逅を乗り越え、ようやくタルカへと目を向けることができるようになったのであった。
-------------
作者のあとがき的なところ。
これにて、2章は完です。
暫く充電期間(3章の執筆作業)に入りますので、再開はX(旧Twitter)にて、お知らせします。
そしてその前では、正座をして、両手の親指を地面につけ、深々と頭を下げるサブロー・ハインリッヒ。
「面を上げよ。サブロー・ハインリッヒ」
「はっ」
「オダにて、内乱があったことは真か?」
「はい。陛下に御心配をかけ、御報告を怠ったこと弁解のしようもございません」
「ふむ。きちんと弁えておるようで、感心感心。では、本題に入ろう、マーガレットは何処じゃ?」
「やむを得ず反乱の首謀者であったため泣く泣くその首を斬り、亡き父と同じ墓に埋めました」
「何じゃと!?お前は、実の母を殺したと?ワシのワシの後妻候補を殺したと。そう言うのか!」
「はい」
「あいわかった!この愚かな行いに対して、ワシはオダの取りつぶしを命じる!以上じゃ。下がれ!もう顔も見たくないわ!」
当然の反応であろうな。
だが、お前のような俗物に母は勿体なかろう。
子が母の幸せを願うことの何が悪かろうか。
「かしこまりました。ですが陛下、これだけは言わせてもらいたい。オダは、簡単に取りつぶしを受け入れぬ。アイランド公国からの独立を宣言する」
「!?馬鹿な!このアイランド公国を敵に回すと?」
「陛下がオダの取りつぶしを命じるのであれば」
「それは、ワシに対しての脅しと捉えるが」
「そんなつもりはありませんが。1つ、どうしてこの大事な場に宰相が居ないのでしょう?」
「フン。内乱の責任が大事な場であると申すか。尋問して、追求する場にクレーバーは必要ない」
成程。
どうやら、ワシをここに呼ぶことで一悶着あったと見た。
せめて宰相がどう言う意見なのか知りたかったのだが。
仕方あるまい。
少し早いが本当に独立を画策するべきか。
「陛下、1つ宜しいでしょうか?」
ん?
女か?
あぁ、陛下の側女の1人であったか。
「お初にお目にかかります。オダを治める若き領主のハインリッヒ卿。陛下の妻で皇后のルージュです」
!?
若い若すぎる!
その見た目で、皇后ということは、相当歳なのか?
わからん。
どんな魔法を使えば若々しい姿に。
「ふふっ。ハインリッヒ卿が驚くのも無理はありません。御想像の通りと言えればよかったのですが亡くなった皇后様の代わりに新たな皇后となりましたので、歳は陛下よりも貴方に近いぐらいかしら」
ある意味、よかったと言えよう。
しかし、この歳で皇后になるとは、案外女傑かもしれん。
油断はできんな。
「何だルージュ。お前は、ワシの隣でニコニコと。ほげぇ」
ルージュの強烈な平手がルードヴィッヒ14世の頬を2度往復した。
「何をするんじゃ!」
「ハァ。今ハッキリとしました。この国を守っていたのは、貴方じゃなくて、クレーバーだったってね!ここでハインリッヒ卿の独立を許せばどうなると思います?」
「フン。こんなクソガキの1人や2人離反したところで、踏み潰せば終わりよ」
「成程。なら、踏み潰されるのは貴方じゃなくて?」
「何じゃと!?このアマ、好き勝手に言いよって、そもそもお前は見てくれが良いだけのお飾りなのだからニコニコと笑って。ほげぇぇぇぇ」
さらに4度、ルージュの平手打ちが往復する。
「国を治めるなら国だけじゃなく人を見なさい!ハインリッヒ卿の治世は素晴らしいものです。そんな人間を敵に回せばどうなるとお思いです?」
「だから踏み潰せば。ほげぇぇぇぇぇぇぇぇ」
さらに8度、ルージュの平手打ちが往復する。
「何もわかっていませんね。貴方は、流石国を譲られただけのボンボンで、色欲に溺れるクソ野郎ですね。マーガレット様にだって、選ぶ権利はありましょう?ハインリッヒ卿の聡明さを見れば、貴方なんか選ばれることは一生無いでしょう。現実を見てみたら如何です?」
想像以上に剛毅な女だ。
陛下に対して物怖じしないどころか逆に平然と平手打ちをかまして、間違っていると指摘している。
優秀すぎる女と言えよう。
この女がいる限り、何れ陛下の方からワシに喧嘩を売らせようと考えていた計画は頓挫するやも知れん。
「このクソアマが。離縁じゃ!離縁じゃ!」
「ハァ。本当に感情をコントロールできないようですね。別に離縁は構いませんよ。でも、ここは私の祖国。黙っていたら滅ぶのがわかっているのに口を慎むなんて、できませんの」
「滅ぶのは、このクソガキ。ほげぇぇぇぇぇぇ」
「貴方は、何も聞いていないのかしら?何処か知りませんけど謎の軍隊が侵攻したのも追い返したそうですわよ。ひょっとしたらガルディアン王国やマジカル王国が密かに内乱に乗じて狙ってたのかも知れませんわね。あらあら、鈍感な愚王は、そんなことにもお気付きになられない。これで、どうやってハインリッヒ卿に勝つと言うのかしら。刃を向けられたわけでもないのに。ハインリッヒ卿は、内乱における当然の行いをしただけですのよ。それなのに、それだけで国ぐるみで、飛ぶ鳥は落としておくのが良いと。クスクス。またデイルかドレッド如き、成り上がりに口でも挟まれたんじゃなくて?」
「ぐぬぬ」
「言い返せないのが証拠ね。哀れね。ホント、利用されてることもわからないのかしら?少しは己の頭で判断しなさいませ!」
ルージュがピシャリと言い放った言葉によって、陛下は、ワシに深々と頭を下げ、お咎めなしということとなった。
こうして、ワシはルージュというこの国を取るであろう時に厄介となるであろう女との邂逅を乗り越え、ようやくタルカへと目を向けることができるようになったのであった。
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作者のあとがき的なところ。
これにて、2章は完です。
暫く充電期間(3章の執筆作業)に入りますので、再開はX(旧Twitter)にて、お知らせします。
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