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続編 国の誤算
キャンピングカー購入
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それから数日後――――――
向井とディッセ、黒谷は、
美美香に紹介されたディーラーを訪ねた。
「なんでフェムトンも付いてきたの」
ディッセが顔を顰めた。
「向井君がいるから大丈夫だと思うけど、
ディッセと黒谷君じゃ、
カッコイイからとかなんとか言って決めちゃいそうでしょ。
高い買い物を一括で払うのよ」
フェムトンはそういうと大きな店舗へと入っていった。
店内には中古キャンパーも揃っていて、
黒谷の顔も輝いていた。
予約していたので担当を待つ間、
ディッセと黒谷は展示されている車を見ていた。
「あれでしょ。絶対、オプションが増えていくもの」
フェムトンが楽しそうな二人の様子を見て、
小声で向井に話した。
そこへ、
「お待たせしました。中島さんのご紹介という事ですが」
男性がやってきたので、二人も戻ってきた。
担当者は名刺を出すと『大隈』ですと名乗った。
「中島さんとはキャンパー仲間で、
一緒に此方に伺うお約束をしていたんですけど、
あんなことになってしまって」
ディッセが説明した。
「そうだったんですね。
私も亡くなったと聞いた時はすぐには信じられなくて」
大隈も寂しそうに声を落とした。
「それでせっかくご紹介いただいたので、
今回お伺いしました」
「分かりました。中島さんのご紹介なら、
出来るだけ勉強させていただきます」
大隈はそういうと案内した。
黒谷は室内の展示を見ながら驚いていた。
「よく出来てるね」
「本当ですね」
向井も頷いていると、
「中島さんも最初は軽キャンから始まって、
最後は大きなキャンピングカーになったんです。
移動する人にとっては、
少しでも居心地の良い空間がいいですからね」
大隈が説明した。
「今回はいい中古車が入っていますのでそちらと、
ちょっとお値段の方はしますが新車のご用意もできますので、
ご検討ください」
大隈はそう言って外にある中古車を案内してくれた。
「全然走ってないですね」
走行距離を見て向井が驚いた。
「そうなんですよ。
このオーナーさんが新車の方をご購入されたので、
いい状態の中古が出たんです。
中も綺麗ですよ」
「入ってもいいの? 」
扉を開けてくれた大隈に黒谷が聞くと、
「そこで靴を脱いでお入りください」
と言った。
「これ何人乗りですか? 」
「六名です」
フェムトンの質問に大隈が答える。
「うちは自社で一貫制作している専門店なので、
ある程度のご要望にも応えられますよ。
元々捨て地は自動車メーカーが多かったんですけど、
あのバリアで殆どが消えて、
今捨て地にはうちともう一社が残っています。
わが社はキャンパー専門なんで、
ここだけの話、
大手の競合がいなくなってホッとしてるんですよ」
大隈が声を潜めて話した。
「捨て地は電車が停止されて、
移動が長距離バスか車でしょう。
なので中古も人気です。
捨て地は部品一つとっても黒の街から脅迫があります。
バリアがあるのでみんな無視してますけど、
資源にも限りがありますからね。
全てを大事に使わせてもらってますよ」
大隈が静かに微笑んだ。
「大変ですね」
向井が言うと、
「おかげでうちは儲かってます」
大隈が笑った。
「それにね。実は私、鉄オタなんです。
だから列車が消えた方がショックで」
「えっ? 」
フェムトンが驚いて笑う。
「電車運転士になるつもりが、
いつの間にか車屋になっていました。
だからですかね。
今でも鉄オタ仲間と廃線鉄を見て回るのが趣味です。
いつかは捨て地にも電車を復活させたいですね」
「大隈さんは捨て地………この町の出身ですか? 」
向井が聞くと、
「はい。この辺りの海はきれいでね。
今じゃ危険であまり近づけなくなったけど、
ドライブで遠くから眺めることはできます。
私の子供の頃までは都道府県があったんですよね。
あの大災害の年は丁度大学生の時でね。
怖かったですね。今もうなされる時があります。
街がどんどん沈んでいって。
海に呑まれないように、地に沈まないように、
みんな必死でした。
だからでしょうね。向こうに見える黒い街には絶対行きたくない。
ここが黒の街にならなくてよかった。
捨て地で暮らせて私は幸せです」
大隈は反対側の黒い空を見て話した。
「中島さんもこの国を守る為に、
バリアが現れたんだと話されていました。
国の歴史がどんどん壊されていって、
捨て地だけがそれを守っているって。
全国を回ってそう感じたそうです」
「そうかもしれないわね。
黒の街に馬鹿にされても闘う人たちを守る為に、
神様がバリアを張ったのかもしれないわね」
フェムトンがにっこり笑った。
「神様………そうか、神様。そうですよね。
こんな不思議なことなんて、
人には起こせませんよね。
大沢神伝説に惑わされている人間を見て、
本当の神様が怒ったのかもしれない」
大隈もそういうと二人を見た。
向井とディッセ、黒谷は、
美美香に紹介されたディーラーを訪ねた。
「なんでフェムトンも付いてきたの」
ディッセが顔を顰めた。
「向井君がいるから大丈夫だと思うけど、
ディッセと黒谷君じゃ、
カッコイイからとかなんとか言って決めちゃいそうでしょ。
高い買い物を一括で払うのよ」
フェムトンはそういうと大きな店舗へと入っていった。
店内には中古キャンパーも揃っていて、
黒谷の顔も輝いていた。
予約していたので担当を待つ間、
ディッセと黒谷は展示されている車を見ていた。
「あれでしょ。絶対、オプションが増えていくもの」
フェムトンが楽しそうな二人の様子を見て、
小声で向井に話した。
そこへ、
「お待たせしました。中島さんのご紹介という事ですが」
男性がやってきたので、二人も戻ってきた。
担当者は名刺を出すと『大隈』ですと名乗った。
「中島さんとはキャンパー仲間で、
一緒に此方に伺うお約束をしていたんですけど、
あんなことになってしまって」
ディッセが説明した。
「そうだったんですね。
私も亡くなったと聞いた時はすぐには信じられなくて」
大隈も寂しそうに声を落とした。
「それでせっかくご紹介いただいたので、
今回お伺いしました」
「分かりました。中島さんのご紹介なら、
出来るだけ勉強させていただきます」
大隈はそういうと案内した。
黒谷は室内の展示を見ながら驚いていた。
「よく出来てるね」
「本当ですね」
向井も頷いていると、
「中島さんも最初は軽キャンから始まって、
最後は大きなキャンピングカーになったんです。
移動する人にとっては、
少しでも居心地の良い空間がいいですからね」
大隈が説明した。
「今回はいい中古車が入っていますのでそちらと、
ちょっとお値段の方はしますが新車のご用意もできますので、
ご検討ください」
大隈はそう言って外にある中古車を案内してくれた。
「全然走ってないですね」
走行距離を見て向井が驚いた。
「そうなんですよ。
このオーナーさんが新車の方をご購入されたので、
いい状態の中古が出たんです。
中も綺麗ですよ」
「入ってもいいの? 」
扉を開けてくれた大隈に黒谷が聞くと、
「そこで靴を脱いでお入りください」
と言った。
「これ何人乗りですか? 」
「六名です」
フェムトンの質問に大隈が答える。
「うちは自社で一貫制作している専門店なので、
ある程度のご要望にも応えられますよ。
元々捨て地は自動車メーカーが多かったんですけど、
あのバリアで殆どが消えて、
今捨て地にはうちともう一社が残っています。
わが社はキャンパー専門なんで、
ここだけの話、
大手の競合がいなくなってホッとしてるんですよ」
大隈が声を潜めて話した。
「捨て地は電車が停止されて、
移動が長距離バスか車でしょう。
なので中古も人気です。
捨て地は部品一つとっても黒の街から脅迫があります。
バリアがあるのでみんな無視してますけど、
資源にも限りがありますからね。
全てを大事に使わせてもらってますよ」
大隈が静かに微笑んだ。
「大変ですね」
向井が言うと、
「おかげでうちは儲かってます」
大隈が笑った。
「それにね。実は私、鉄オタなんです。
だから列車が消えた方がショックで」
「えっ? 」
フェムトンが驚いて笑う。
「電車運転士になるつもりが、
いつの間にか車屋になっていました。
だからですかね。
今でも鉄オタ仲間と廃線鉄を見て回るのが趣味です。
いつかは捨て地にも電車を復活させたいですね」
「大隈さんは捨て地………この町の出身ですか? 」
向井が聞くと、
「はい。この辺りの海はきれいでね。
今じゃ危険であまり近づけなくなったけど、
ドライブで遠くから眺めることはできます。
私の子供の頃までは都道府県があったんですよね。
あの大災害の年は丁度大学生の時でね。
怖かったですね。今もうなされる時があります。
街がどんどん沈んでいって。
海に呑まれないように、地に沈まないように、
みんな必死でした。
だからでしょうね。向こうに見える黒い街には絶対行きたくない。
ここが黒の街にならなくてよかった。
捨て地で暮らせて私は幸せです」
大隈は反対側の黒い空を見て話した。
「中島さんもこの国を守る為に、
バリアが現れたんだと話されていました。
国の歴史がどんどん壊されていって、
捨て地だけがそれを守っているって。
全国を回ってそう感じたそうです」
「そうかもしれないわね。
黒の街に馬鹿にされても闘う人たちを守る為に、
神様がバリアを張ったのかもしれないわね」
フェムトンがにっこり笑った。
「神様………そうか、神様。そうですよね。
こんな不思議なことなんて、
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