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第二部
作家 河原
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「おや、ご機嫌斜めですね~」
冥王が言うと、
「当たり前でしょ。
あの未完の小説が映画になるっていうんだもん。
終わってない部分は違う作家が書くって言うんだから、
これが怒らずにいられるかってのよ」
河原は円形ベンチに座った。
ギャラリーの中央には長方形のロング書棚があり、
それを囲むようにベンチが置かれている。
虎獅狼達がギャラリーで本を読みたいというので、
人気書物だけそこに置かれていた。
「おぬしのあの中途半端な小説が映画に? 」
虎獅狼が言った。
「失礼な。
書きかけで死んじゃったから未完になってるだけで、
続きは書いてます」
「本当ですか? 」
向井が顔を覗くと、
「あのね~あれは長編中の長編で考えてたの。
二十巻、三十巻と長く書くつもりだったから、
プロットもその都度書き足してたの。
まさかこんなに早く死ぬなんて、
思ってなかったしさ」
河原はむくれた顔をした。
「そんなに長く続く予定の本だったのですか? 」
冥王も驚いたように河原の顔を見た。
「そうだよ。君たちも読んだならわかるでしょ。
あれは魔界のファンタジーで、
何代にもわたる主人公の戦いの物語なんだもん。
異世界にも行くし、閻魔界にも行くの」
「あれは面白い、面白いがしかし、
閻魔は酷すぎる。私はあんな残虐非道ではないですよ」
「仕方ないじゃん。あくまでも私の想像なんだから」
「想像……想像の中の私は、
みんなにとってあんなに恐ろしいのか…
印象が悪くなるから、もう少し優しくできないかね」
「想像なんて何にも役に立たないよね。
死んでここに来たら実際はこれだし……」
河原が冥王を指さした。
「失礼な。ここのものは、
私を何だと思っているんですか」
冥王がふくれっ面になる。
「まあまあ、それだけ親しみやすいという事だろ」
虎獅狼が笑いながら宥めた。
「だって鬼は人間を食べるって言われてたし、
妖怪も人の血を吸うって」
「全く、人間とは恐ろしい生き物だな。
妖怪の方が余程情が深いというものよ。
抑々、鬼は人なんだぞ。
人間には妬みや僻みと言った陰湿なものを、
内に秘めてるものが多い。
それが鬼を生むんだ」
虎獅狼は情けないと言いたげに首を振った。
「別に鬼や妖怪が何を食べようが、
いいじゃないですか?
ただの物語なんですから」
「私は嫌ですよ。
食事は体を作る大切なものなんですから、
栄養ある美味しいものが食べたいです。」
「冥王はグルメだもんね」
河原はそういって、冥王を見た。
「俺だって季節のものを食べたいぞ」
虎獅狼が言うと、
冥王もそうだそうだと頷く。
「でさ、そんなことを考えてたら、
物語が迷走して、
少しストーリーが変わってきちゃったのよ。
だから映画化は嫌なんだよね」
「なるほど」
虎獅狼が気持ちはわかるぞというように、
頷いた。
「とりあえず完結まで時間はかかるけど、
書いてるから。
まぁ、気長に待っててよ。
それに他の話も書きたいし。
この前の冥界ラブロマンスは、
冥王と盛り上がっちゃったよね~」
「あれは傑作ですよ。
出来れば連ドラにしたいくらいです」
二人はニコニコ笑いながら楽しそうだ。
「うちには新田君というスターはいるけど、
女優がいないのが残念です。
いたら冥界ドラマを作りたいですね~」
冥王は次から次へと、
色んなことを思いつく人だなと、
向井は飽きれながら見ていた。
「あ~冥王いた~」
そんな話をしていると、
三鬼とこんがギャラリーに飛び込んできた。
座っている冥王の背中に飛び乗ると、
「かんなくず集めてきたよ~」
「冥王来ないから探しに来た」
嬉しそうに言った。
冥王は二人を背負うと、
「そうか。じゃあ、作りに行くか」
「子供に材料集めさせて、
冥王はここでおしゃべりですか。
お殿様はいい御身分ですね」
向井が言うと、
こんが冥王のブローチを見て聞いた。
「これなあに? 」
「冥王の顔? カッコイイ~僕も欲しい!! 」
「こんも欲しい~」
冥王が向井の顔を見て、
しまったという表情をした。
『だから、言ったじゃないですか』
向井が口だけ動かして言う。
「じゃあ、山川と作家さんにお願いしてみようか」
「お願いしたら作ってくれる? 」
「いい子でお願いしたら、
作ってくれるかもしれませんよ」
「じゃあ、早くいこ~!! 」
「工房に行くなら、俺も行くぞ」
虎獅狼もいい、
冥王は三鬼とこんに引きずられ、
妖怪とともに部屋を出て行った。
「あれが冥王だからなぁ~
何か威厳あるイメージで物語を作ってたから、
根底から覆っちゃうんだよね」
河原もそういうと、
図書室へと戻っていった。
「あっ、アメジストドームのこと、
言おうと思ってたのに忘れた。
まあ、いいか」
向井もこれ以上邪魔が入らないうちにと、
仮眠を取りに休憩室に向かった。
冥王が言うと、
「当たり前でしょ。
あの未完の小説が映画になるっていうんだもん。
終わってない部分は違う作家が書くって言うんだから、
これが怒らずにいられるかってのよ」
河原は円形ベンチに座った。
ギャラリーの中央には長方形のロング書棚があり、
それを囲むようにベンチが置かれている。
虎獅狼達がギャラリーで本を読みたいというので、
人気書物だけそこに置かれていた。
「おぬしのあの中途半端な小説が映画に? 」
虎獅狼が言った。
「失礼な。
書きかけで死んじゃったから未完になってるだけで、
続きは書いてます」
「本当ですか? 」
向井が顔を覗くと、
「あのね~あれは長編中の長編で考えてたの。
二十巻、三十巻と長く書くつもりだったから、
プロットもその都度書き足してたの。
まさかこんなに早く死ぬなんて、
思ってなかったしさ」
河原はむくれた顔をした。
「そんなに長く続く予定の本だったのですか? 」
冥王も驚いたように河原の顔を見た。
「そうだよ。君たちも読んだならわかるでしょ。
あれは魔界のファンタジーで、
何代にもわたる主人公の戦いの物語なんだもん。
異世界にも行くし、閻魔界にも行くの」
「あれは面白い、面白いがしかし、
閻魔は酷すぎる。私はあんな残虐非道ではないですよ」
「仕方ないじゃん。あくまでも私の想像なんだから」
「想像……想像の中の私は、
みんなにとってあんなに恐ろしいのか…
印象が悪くなるから、もう少し優しくできないかね」
「想像なんて何にも役に立たないよね。
死んでここに来たら実際はこれだし……」
河原が冥王を指さした。
「失礼な。ここのものは、
私を何だと思っているんですか」
冥王がふくれっ面になる。
「まあまあ、それだけ親しみやすいという事だろ」
虎獅狼が笑いながら宥めた。
「だって鬼は人間を食べるって言われてたし、
妖怪も人の血を吸うって」
「全く、人間とは恐ろしい生き物だな。
妖怪の方が余程情が深いというものよ。
抑々、鬼は人なんだぞ。
人間には妬みや僻みと言った陰湿なものを、
内に秘めてるものが多い。
それが鬼を生むんだ」
虎獅狼は情けないと言いたげに首を振った。
「別に鬼や妖怪が何を食べようが、
いいじゃないですか?
ただの物語なんですから」
「私は嫌ですよ。
食事は体を作る大切なものなんですから、
栄養ある美味しいものが食べたいです。」
「冥王はグルメだもんね」
河原はそういって、冥王を見た。
「俺だって季節のものを食べたいぞ」
虎獅狼が言うと、
冥王もそうだそうだと頷く。
「でさ、そんなことを考えてたら、
物語が迷走して、
少しストーリーが変わってきちゃったのよ。
だから映画化は嫌なんだよね」
「なるほど」
虎獅狼が気持ちはわかるぞというように、
頷いた。
「とりあえず完結まで時間はかかるけど、
書いてるから。
まぁ、気長に待っててよ。
それに他の話も書きたいし。
この前の冥界ラブロマンスは、
冥王と盛り上がっちゃったよね~」
「あれは傑作ですよ。
出来れば連ドラにしたいくらいです」
二人はニコニコ笑いながら楽しそうだ。
「うちには新田君というスターはいるけど、
女優がいないのが残念です。
いたら冥界ドラマを作りたいですね~」
冥王は次から次へと、
色んなことを思いつく人だなと、
向井は飽きれながら見ていた。
「あ~冥王いた~」
そんな話をしていると、
三鬼とこんがギャラリーに飛び込んできた。
座っている冥王の背中に飛び乗ると、
「かんなくず集めてきたよ~」
「冥王来ないから探しに来た」
嬉しそうに言った。
冥王は二人を背負うと、
「そうか。じゃあ、作りに行くか」
「子供に材料集めさせて、
冥王はここでおしゃべりですか。
お殿様はいい御身分ですね」
向井が言うと、
こんが冥王のブローチを見て聞いた。
「これなあに? 」
「冥王の顔? カッコイイ~僕も欲しい!! 」
「こんも欲しい~」
冥王が向井の顔を見て、
しまったという表情をした。
『だから、言ったじゃないですか』
向井が口だけ動かして言う。
「じゃあ、山川と作家さんにお願いしてみようか」
「お願いしたら作ってくれる? 」
「いい子でお願いしたら、
作ってくれるかもしれませんよ」
「じゃあ、早くいこ~!! 」
「工房に行くなら、俺も行くぞ」
虎獅狼もいい、
冥王は三鬼とこんに引きずられ、
妖怪とともに部屋を出て行った。
「あれが冥王だからなぁ~
何か威厳あるイメージで物語を作ってたから、
根底から覆っちゃうんだよね」
河原もそういうと、
図書室へと戻っていった。
「あっ、アメジストドームのこと、
言おうと思ってたのに忘れた。
まあ、いいか」
向井もこれ以上邪魔が入らないうちにと、
仮眠を取りに休憩室に向かった。
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