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第三部

妖怪 クロと呉葉

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「ほお~凄いの~

特別賞とやらを取るとは」

若侍のような姿の黒狐が言った。

「まぁな。おぬし等にも見せてやりたかったぞ。

人気投票で一位になったその副賞の菓子だ」

「うまいの~」

黒狐のクロは美味しそうに頬張った。

「当たり前じゃ。名店の菓子折りよ」

虎獅狼と千乃は得意げに話しながら、

妖怪たちと公園で菓子を食べていた。

「わらわも出たかった」

鬼の姿をした可愛らしい姫が、

菓子をもぐもぐ食べながら言う。

「呉葉、お前の魔の力は、

人間どもにはエグすぎてうけん。

もっと愛嬌のある………ほら、

そこらのわっぱどもが持っておる、

魔法のステッキか? 

ああゆうもので変身でもすれば、

ウケるかもしれんがな」

「………」

呉葉は不機嫌そうに眉根を寄せた。

「で、優勝したのは誰だ? 」

「それが死神にやられた。

一人はへたくそなダンスなんだが、それが大うけでな。

もう一人はイイ男で、これも客に大うけよ」

「それは仕方がないの」

クロは笑うと菓子を口に放り込んだ。


――――――――


虎獅狼と千乃を探していた向井は、

アーケードを抜け公園に向かった。

ただの広い空き地の公園には、

ベンチとテーブル以外何もない。

木々は目隠しになり犯罪の温床と、

少しだけ植えられ、

昔の子供たちが遊んでいたものは危険遊具と言われ、

略取り外されているので、

休憩するための場所のようになっている。

子供の数も減り、

道具を使って遊ぶこともできないので、

いるのは年寄りか、

姿は見えないが妖怪のたまり場になっていた。

向井は公園に入ると、

この辺りにいつもいるからな………

と周りを見渡す。

すると奥のベンチに妖怪四人の、

何やら楽しそうな姿が視界に飛び込んできた。

「ここにいましたか」

向井が声をかけると、

「おお~今、発表会の話で盛り上がっていたところだ」

虎獅狼が言った。

「お二人はサロン客に人気でしたよ。

羽の生えた冥王に化けた姿は、

皆さん大喜びでしたから。

お菓子ももらえてよかったですね」

向井も笑顔で話した。

その姿をじっと見つめる可愛い姫に、

向井は気づいた。

「お友達ですか? 」

「そう。呉葉とクロよ」

千乃が紹介すると、

「次に発表会があるなら、俺も出たいぞ」

クロが向井を見た。

「虎獅狼達に聞いていると思いますが、

ブレスレット装着されるのでしたら、

冥界に来られますよ」

「だったら次は俺も出る!! この菓子が欲しい!! 」

「美味しかったですか? 」

「うむ。美味だ」  

「次に開催が決まったら、

この四人で出られたらどうですか? 」

「それはいいの~冥王に第二回をやってくれと、

お前からも頼んでくれ」

虎獅狼もやる気満々の様子だ。

呉葉がもじもじしながら千乃の後ろに隠れる。

見た所、三鬼やこんと変わらない年のようだ。

「こやつは人見知りでな。

人間は特に苦手なんだが、

お前には興味はあるようだな」

「呉葉も女の子だから、いい男には弱いのよ」

千乃が笑った。

「褒められて悪い気はしませんけどね」

向井は戸惑うように笑った。

「で、何か用か? 」

「あぁそうそう。これ」

そういって、向井は小さな袋を手渡した。

「この前、虎獅狼と千乃が作っていたプラ板です。

青田さんがアクセサリーにしてくれましたよ」

「それはわざわざ、すまんの」

虎獅狼と千乃が嬉しそうに受け取った。

「これなんじゃ? 」

呉葉とクロが袋の中身を覗く。

「可愛い………」

呉葉は千乃のヘアアクセサリーを見て、

笑顔になった。

「これはどうやって作るんだ? 

俺も作りたいぞ」

クロも虎獅狼のブローチを見て、向井を見上げた。

「これはな、冥界の工房で教えてもらって作るんだ。

この他にも針を刺して人形も作れるしな」

向井の代わりに虎獅狼が説明していると、

「人形に針を刺すのか? そりゃ呪いの人形だろ」

クロが言う。

「違うわよ~本当に可愛いお人形が作れるの。

私は次にそのニードルに挑戦するのよ」

千乃が笑顔になった。

「わらわも作りたいぞ」

呉葉はアクセサリーをじっと見つめたまま言った。

「だったら許可をもらって、

ブレスレットを装着して、

工房で作られたらどうですか? 」

そんな話をしていると、突然大きな揺れが起こった。

「地震じゃ」

五人は大きく揺れる地面に座り込み、

おさまるのをじっと待った。

公園の周囲でも人々が立ち止まり、

揺れが緩やかになるまで動かずにいた。

「ん? おさまったか? 」

虎獅狼は立ち上がると、辺りを見回した。

「最近、特に多いですよね」

向井も周囲を見ながら、怪我人がいないか確認する。

「人間どもが自ら結界を崩しておるからの」

「結界? 」

虎獅狼の言葉に向井が怪訝な顔をした。

「ん? そうか。お前は知らんのか。

だったら俺からは言わんが、

気になるなら冥王に聞くがいい」

思い見る向井に虎獅狼はそれだけ言うと、

千乃たちとアクセサリーを見ながら、

楽し気に話し始めた。
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