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第三部
冥界図書室
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その声に向井達が振り返ると、
伸びをする牧野が立っていた。
「あ~よく寝た。図書室の椅子って寝心地いいよね」
「わがままって、私ですか?
牧野君に言われたくないですね~」
「俺のはわがままじゃなくて正直なの」
「ほお~勝手気侭に行動しているものを正直とは、
いつからそうなったんでしょうね~」
「なんだよ。喧嘩売ってるの? 」
くだらないことで言い争っている二人を、
向井はばかばかしく見ていた。
「あぁそうだ。この前の発表会。
虎獅狼達がまた参戦したいそうですよ。
なんだか盛り上がってましたから、
余程楽しかったんでしょうね。
他の妖怪も出たいと言ってました」
「だったら、俺もリベンジする!
佐久間の紙切りが準優勝なんて悔しいじゃん」
「でも、佐久間さんの副賞のA5ランクの肉で、
焼き肉して一番多く食べてたの牧野君でしょう? 」
「それはそれ、これはこれ。
皆だって食べたじゃん。
で、俺って結局何位だったのよ。
早紀や源じいたちにも負けたんだよ」
「参加できなかった死神達もいるし、
大盛況でしたからね。
またやりますか」
つい数秒前まで文句を言いあっていたのに、
もう忘れてる。
言いたいことを言っても許されてしまう。
牧野君のこの性格だけは、
神様が彼に与えた特権のように思えるな。
向井は楽しそうな二人を見ながら微笑んだ。
数日後―――
地震と水害が続けて発生し、
下界ではちょっとした騒ぎになっていた。
冥界でもアートン達が冥王と執務室にこもって、
何やら話し合いをしていた。
特別室も騒がしくなり、
大沢からの呼び出しも頻繁になっていた。
向井がそのことを冥王に伝えると、
「暫くは特別室には行かなくていいです。
何か問題がある時は私が処理します。
なので、
向井君には下界での変動を見ていてもらえますか? 」
「結界か………」
向井のつぶやきに冥王の眉が上がった。
「実は虎獅狼から結界の事を聞いたんですけど、
詳しいことは冥王から聞けと言われて。
この災害にはそれが関係しているんですか? 」
「この前図書室で、
聞きたいことがあると言っていましたが、
その事ですか」
「はい」
「………いずれ君には説明しますが、
今は下界も冥界も迷走状態です。
結論が出ないままに動いているので、
しばらく様子を見たあと、
君にもお願いをすることになると思います。
安達君のことも頼みます」
「分かりました」
冥王が口を濁すときは、
それ以上今は言いたくないという事なので、
向井は頭を下げると静かに執務室を出た。
下界の災害がこのまま治まらないとなると………
大きな事件に発展しそうだな。
向井はパトロールの為、
その足で下界に下りた。
伸びをする牧野が立っていた。
「あ~よく寝た。図書室の椅子って寝心地いいよね」
「わがままって、私ですか?
牧野君に言われたくないですね~」
「俺のはわがままじゃなくて正直なの」
「ほお~勝手気侭に行動しているものを正直とは、
いつからそうなったんでしょうね~」
「なんだよ。喧嘩売ってるの? 」
くだらないことで言い争っている二人を、
向井はばかばかしく見ていた。
「あぁそうだ。この前の発表会。
虎獅狼達がまた参戦したいそうですよ。
なんだか盛り上がってましたから、
余程楽しかったんでしょうね。
他の妖怪も出たいと言ってました」
「だったら、俺もリベンジする!
佐久間の紙切りが準優勝なんて悔しいじゃん」
「でも、佐久間さんの副賞のA5ランクの肉で、
焼き肉して一番多く食べてたの牧野君でしょう? 」
「それはそれ、これはこれ。
皆だって食べたじゃん。
で、俺って結局何位だったのよ。
早紀や源じいたちにも負けたんだよ」
「参加できなかった死神達もいるし、
大盛況でしたからね。
またやりますか」
つい数秒前まで文句を言いあっていたのに、
もう忘れてる。
言いたいことを言っても許されてしまう。
牧野君のこの性格だけは、
神様が彼に与えた特権のように思えるな。
向井は楽しそうな二人を見ながら微笑んだ。
数日後―――
地震と水害が続けて発生し、
下界ではちょっとした騒ぎになっていた。
冥界でもアートン達が冥王と執務室にこもって、
何やら話し合いをしていた。
特別室も騒がしくなり、
大沢からの呼び出しも頻繁になっていた。
向井がそのことを冥王に伝えると、
「暫くは特別室には行かなくていいです。
何か問題がある時は私が処理します。
なので、
向井君には下界での変動を見ていてもらえますか? 」
「結界か………」
向井のつぶやきに冥王の眉が上がった。
「実は虎獅狼から結界の事を聞いたんですけど、
詳しいことは冥王から聞けと言われて。
この災害にはそれが関係しているんですか? 」
「この前図書室で、
聞きたいことがあると言っていましたが、
その事ですか」
「はい」
「………いずれ君には説明しますが、
今は下界も冥界も迷走状態です。
結論が出ないままに動いているので、
しばらく様子を見たあと、
君にもお願いをすることになると思います。
安達君のことも頼みます」
「分かりました」
冥王が口を濁すときは、
それ以上今は言いたくないという事なので、
向井は頭を下げると静かに執務室を出た。
下界の災害がこのまま治まらないとなると………
大きな事件に発展しそうだな。
向井はパトロールの為、
その足で下界に下りた。
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