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第五部

移動する冥界の部屋

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「そうだ。安達君が作った焼き菓子食べてみない? 」

早紀はそういうとテーブルから持ってきた。

「優香ちゃんに手伝ってもらって作った、

新作だって。

凄く美味しいの」

「へえ~」

向井達も紙に包まれた焼き菓子を受け取った。

口に入れて、三人の顔が驚きに変わる。

「ほんとだ。美味しい。これクルミ? 」

向井が聞くと、

「俺の大好きなもの詰め込んだの。

くるみとチョコとキャラメル」

安達がトコトコと歩いてきて、

説明してくれた。

「凄いじゃん」

「この前のフロランタンも美味しかったし、

ここでお菓子屋さんできるんじゃないの? 」

妖鬼とアートンも笑顔で褒める。

「食堂に置いてもらえるかな」

安達も満面の笑みで、

美味しそうに食べる三人の姿を見た。

その時いい香りが漂い、

「ココア飲む人~」

と真紀子が声をかけた。

「飲む~」

安達が駆けだしていくのを見て、

チビ達もキッチンに集まっていった。

「あれじゃぁ大変だ。冥王まで………

子供じゃないんだから。

私も手伝ってこよう。あなた達も飲むでしょ」

「こんないい匂いを嗅いじゃったらね~」

アートンも笑い、三人は頷いた。

「そういえば、さっき冥王に言われたんだけど、

図書室のハンモック増やしたいんだって? 」

「ハンモック増やしてくれるの? 

嬉しいなぁ~いつ行っても使えなくて」

アートンが声を上げた。

「ハハハ。みんな使いたいんですね。

だと、数を少し多めに設置してもらえます? 

疲れてるところ悪いんですけど、出来るかな」

向井が妖鬼を見て言った。

「それくらいはどうってことないから、

構わないけどさ。

図書室の空間をどのくらい広げられるかな~

少し前にリノベで空間を広げてるでしょ。

この休憩室も新たに広げたから………

いっそのこと、図書室リニューアルして、

場所を移動させるか」

妖鬼は少し考え込むと、向井を見た。

「移動って? そんな簡単にできるの? 」

驚いて聞くアートンに、

「百年以上何もしてなかったから、

あっちこっちガタがきて、

リノベしたでしょ。

その時だって移動させてるんだよ」

「そうなんですか? 」

向井が吃驚して妖鬼を見たところで、

早紀がトレイに乗せたココアを運んできた。

「はい。どうぞ」

「あ~いい香り~」

「有難うございます」

三人がカップを受け取った。

「でも、どうやって部屋を移動させるんですか?」

向井の言葉に、

「なに? 新しく部屋を作るの?」

早紀がココアを飲みながら三人の顔を見た。

「そうじゃなくてね。図書室が狭くなったから、

場所を移動させて、

空間を広げようって話をしてたの」

「ああ~そういうこと」

「なに? 早紀ちゃんは分かるんですか? 」

「えっ? だってこの前、妖鬼が部屋を切り取って、

移動させてるの見たもん。ね~」

妖鬼を見て笑った。
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