上 下
173 / 352
第五部

冥王 高天原へ

しおりを挟む
発表会も無事終了。

今回の優勝は虎獅狼達の戦隊ヒーローショーで、

準優勝に佐久間と真紀子のジャグリングが入り、

牧野は五位に終わった。

「ウケてたのに、観客賞も取れないなんてさ」

不機嫌で準優勝のすき焼きに食らいついていた。

「まあ、子供には敵わないよね~」

早紀はそういいながら、

喜んでチキンを食べているチビ達を見た。

「それにさ~

私達のお姫様の演技もなかなかだったでしょう? 」

早紀はビールを飲むとケラケラ笑った。

「源じい達のリベルタンゴもよかったですよね。

セイ君のカスタネットには笑っちゃいましたけど」

弥生が言うと、オクトが笑いながら説明した。

「俺はマリンバ奏者の憑依の経験あるからさ。

源じいのピアノと合わせてやることにしたら、

ティンがタップダンスするって言うから、

三人でエントリーするはずだったんだよ。

そしたらセイがやりたいって言うんで、

急遽カスタネット? あいつ楽器何にもできないから」

「でも第三位ですから、大したもんですよ」

向井も楽しそうに言うと、すき焼きを食べた。

「おや、安達君は寝ちゃったんですね」

ソファーでぐっすり眠る姿に、

冥王は笑顔になった。

「今日は優香ちゃんと、

お菓子屋さんをやってましたからね。

疲れたんでしょう」

向井はそういって、

寝ている安達のほっぺたをプニ~ッと押した。

「起きないですね~」

向井のいたずらにその場にいたものも、

笑いながら見ていた。


――――――――


数日後、冥王はシェデムを連れて、

高天原に出かけて行った。

「すぐに戻ってくるけど、

留守の間はアートンにお願いしてあるので、

何かあったら彼に相談してください。

特別室はこの前の一件から、

大沢達も大人しいので、

大きな問題は起こさないでしょう」

冥王は前日に向井を呼ぶと、

そんな話をした。

底無しの獅子事件から、

大沢からの呼び出しも少なくなり、

向井は少し違和感も感じていた。

そのことを話すと、

「大沢は自分を神格化してましたから、

下界では彼に逆らうものはいなかったのでしょう。

彼をそのようにしてしまったのは、

この国の者達です。

冥界に上がってきた時には、

自分は神に等しいと言っていましたからね」

冥王はばかげているというように首を振った。

「それを聞いて俺達を愚か者と思いませんでしたか? 」

「向井君、人も神も変わりませんよ。

愚かなものはどこにでもいます。

だからこそ、そこから学び、

また成長もできるんです」

冥王はその時、ただ静かに笑っただけだった。


その話をシェデムにすると、

「人も神も愚かだというのは、

ある意味正解ですね。

その愚か者の数が多いか少ないかで、

生活は変化するんです。

今回も天上界の視察を兼ねて、

御機嫌伺に行くんですけど、

たまには顔を出して、

天上界の様子も見ておかないと、

神様と一言で言っても、

色んなのがいますから。

それと少し前に、

宝器扱いで高天原に渡った人物にも、

会いたいんだと思いますよ」

と笑った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

王子に転生したので悪役令嬢と正統派ヒロインと共に無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:575pt お気に入り:276

チートなタブレットを持って快適異世界生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:958pt お気に入り:14,313

GB版【お試しサイズ】リーチ・ザ・サミットフィルム

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:2

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:208,530pt お気に入り:12,428

転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,568pt お気に入り:23,937

【完結】契約妻の小さな復讐

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,345pt お気に入り:5,878

こっちは遊びでやってんだ

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:0

処理中です...