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第五部

琥珀糖

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「大丈夫です」

そして赤姫を見た。

「今のは何なのですか? 」

「ミヒカの情が流れてきたのだろう。

それがミヒカが見てきた景色よ。

お前にはきつかろうから、私が消してやった」

そしてトリアを見た。

「お前なら分かるであろう? 

この国の多くを見てきているのだからな」

「………」

トリアは黙ると向井の様子を見た。

ミヒカの光り輝く姿に赤姫が言った。

「ふむ。その小さな玉ではこれが精一杯じゃな。

ここから移動させてやりたいが、

今は無理だ」

トリアは暫く黙って考え込んでいたが、

「冥王にちょっと相談してみる。

いい案がないとも言えないので」

「そうか」

赤姫は頷くと、

「そうだ。またイベントとやらをやるそうじゃな。

黒谷が楽しそうに報告しに来たぞ」

「うん。ちょっと小銭が稼げそうなんでね」

トリアが言う。

「まあ、頑張るがよい」

赤姫は佇む向井をちらりと見ると、

ミヒカとともに姿を消した。

「向井君、大丈夫? 」

「ちょっと驚いただけです。

説明したくても、一瞬で…

見たはずなのに、思い出せないです」

向井は心配そうに見るトリアに笑顔を見せると、

「ちょうどおやつの時間ですし、

今、安達君がハマっているお菓子を、

買って帰りませんか? 」

と歩き出した。



向井がトリアを連れてやってきたのは、

和菓子店。

和洋折衷な彩りのお店を見て、

「魔法の宝石? 」

トリアは看板を見上げた。

店内に足を踏み入れると、

「うわ~何これ? お菓子の家みたい。

綺麗。可愛い~」

飾られているお菓子を夢中になって見た。

「ここの琥珀糖はとても上品な甘さで、

フルーティーで美味しいんですよ。

ほら、飴細工の玉木さん。

彼に安達君が喜ぶお菓子があるって言われて、

このお店を教えていただいたんです」

「確かに。これは可愛い。

安達君が喜ぶはずね」

トリアも言いながら笑顔で眺めた。

「俺は苦手なお菓子だったんですけど、

ここのは甘すぎず美味しいのでお勧めですよ」

そういうと果実入りを幾つか選び、

「トリアさんは気になるのありますか? 」

と聞いた。

「これ可愛くない? 苺よ苺」

楽しそうなトリアに店員が、

「苺と苺ミルクは人気がありますよ」

と説明した。

「ではこれも三セット入れてください」

袋に入れてもらい、笑顔のトリアと店を出た。


冥界に戻ると、

休憩室にはアニメを見る安達と、

編み物をする真紀子だけで、

静かだった。

「今日はみんなどこに行ったのかな? 」

向井とトリアが部屋に入っていくと、

「あら お帰りなさい」

真紀子が編み物の手を止めて二人を見た。

アニメに夢中な安達を見て向井は笑うと、

「安達君が大好きなお菓子を買ってきましたよ」

と声をかけた。

「えっ? 」

嬉しそうに振り返り、袋のショップ名を見て、

目を輝かせると走ってきた。
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