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第五部

毘沙門天登場

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「ミヒカは地域神と言っても、

由緒ある貴族神。

天上界でふんぞり返っている神と、

出自にそれほどの違いはないでしょう? 」

「…………」

「冥王は頭下げたくないだろうけど」

「頭など下げませんよ。

下げる理由なんか一ミリもありません」

冥王がプンと横を向く。

「そうそう。向こうが冥王に平伏するのが当然」

トリアの言葉に、

「まあ、そこまでしろとは思いません。

意味不明な階級で軽視される事には、

我慢なりませんけど………」

「で、そんな優しい冥王にお願い。

頼んでもらえません? 

毘沙門天とお友達じゃないですか」

トリアの言葉に、

シェデムも納得するかに笑った。

「なるほどね~毘沙門天では、

天上界も嫌とは言わないかもしれませんね」

向井は意味が分からず、シェデムを見た。

「あの方は一種独特なんですよ。

十二天であり、七福神であり、四天王ですから」

「ああ~そういう事ですか」

向井も笑った。

その時シェデムが両手をならして、冥王を見た。

「ちょうどよかったじゃないですか。

毘沙門天は牧野君に会いたがってたから、

ここに呼んでお話しされたら」

「神様が牧野君に会いたがっているんですか? 」

向井も驚くと同時に、

ちょっと面白くなってきたなと笑った。

「君たちは楽しんでいるでしょう」

「そんなことないですよ」

三人は笑いながら首を横に振ると、

「目的はミヒカさんの静養ですからね」

トリアは言うと、冥王に顔を近づけた。

「まあ、暇そうでしたからね。

牧野君をエサに来てもらいましょうか」

冥王もそういうと笑った。


――――――――


冥王が高天原から戻ってきて数日後。

毘沙門天がやってきた。

ワイルド系イケメンという言葉がピッタリな、

五十代位のオヤジが休憩室にいるのを見て、

牧野が立ち止まった。

悪霊退治を終えて、

牛丼をテイクアウトして、

これからみんなでお昼~と喜んでいた牧野に、

突然大きなオヤジが抱きついてきた。

向井は部屋にいた冥王の姿に、

ああ~この方が毘沙門天? 

と思わず見入ってしまった。

「何すんだよ~変態野郎!! 」

牧野が男を叩いて暴れているのを、

冥王は笑って見ていた。

毘沙門天は、

呆然として立っていた新田と、

向井の後ろに隠れて覗いている安達に気づくと、

「悪いね~牧野君に会いたくてさ~

来ちゃった」

と言ってから、

「えっと、君が向井君で、そっちが新田君。

で、この可愛いのが安達君だ」

と指をさしながら笑った。

「毘沙門天様ですね」

向井はそういうと怖がる安達に、

「この人は神様ですよ」

と言った。
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