あなたはずっと俺のもの

文野多咲

文字の大きさ
19 / 57

社長は変態?!2

しおりを挟む
 運転席に座った社長はムスッとした顔で言ってきた。

「どうしてそうなる?」
「え?」
「どうしてわざわざ二台で行く必要がある?」
「あ、それもそうですね」

 スマートにエンジンがかかる。景色が通り過ぎる。
 視界が高くて気持ちがいい。
 ふうん、社長って運転する人だったんだ。

「社長って運転できるんですね」
「免許証、見せたよね」
「はあ。でも替わりましょうか?」
「何を」
「運転」
「何で?」
「さあ?」
「もしかして、運転したい?」

 そう訊かれて返答に詰まる。運転したいわけではないけど、どことなく居心地が悪い。
 いつも私が運転しているため、助手席に乗っているのがとても変な感じだ。

「左ハンドル、大丈夫?」
「あ、いいえ、大丈夫じゃないかもです」

 SUVは左ハンドルで、しかも、車体が大きい。うん、無理だ。こすったら修理代、高そうだ。

「じゃあ、運転は俺に任せて」
「はい、ありがとうございます」

 そこで会話は終わってしまった。
 何だか気まずい。もう9年の付き合いで、沈黙が気まずくなる仲ではないのに。
 しかし、気まずいのは私だけで、社長の方はそうでもないらしく、横顔は普段通り無機質だ。
 信号待ちで止まると、私を向いて、いつものねぎらいの笑みを浮かべた。

「乗り心地は悪くない?」

 無機質な顔に浮かべる美麗な作り笑顔だ。どことなくほっとして、私は普段通りを取り戻す。

「はい、上々です。社長って、意外と運転うまいんですね」
「意外と……?」
 
 そこで何故か不服ありそうな顔になる社長を無視して続ける。

「あ、確か鎌倉の老舗旅館が経営難でしたよね。あれ、随分古い建物で、売りに出るかもしれないって噂ありますけど、もしかして、そこ、見に行くつもりです?」

 和牛ステーキは仕事のついでの気がしてきた。
 社長は、ちょっと呆れた顔で見てきたが、苦笑して肩をすくめた。

「見に行きたい?」
「はい!」

 私も仕事人間ですから。社長も同じ仕事人間。二人揃ってるのに、単に遊びに行くはずもないでしょうよ。

「じゃあ、帰りにでも寄ってみよう」
「はい!」

 SUVは、新しくできたばかりの商業施設に入っていく。仕事柄、私も知っている場所だ。

「ここ来てみたかったんです! 〇〇エステートが土地をまとめあげたところですよね!」

 高級ブランドの揃ったモールだ。

「うん、そうだね」

 自動車に乗ったまま見るだけだと思えば、社長は駐車場に止めると運転席から降りた。そして、助手席のドアを開けてきたものだから、私も降りるしかなくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

元遊び人の彼に狂わされた私の慎ましい人生計画

イセヤ レキ
恋愛
「先輩、私をダシに使わないで下さい」 「何のこと?俺は柚子ちゃんと話したかったから席を立ったんだよ?」 「‥‥あんな美人に言い寄られてるのに、勿体ない」 「こんなイイ男にアピールされてるのは、勿体なくないのか?」 「‥‥下(しも)が緩い男は、大嫌いです」 「やだなぁ、それって噂でしょ!」 「本当の話ではないとでも?」 「いや、去年まではホント♪」 「‥‥近づかないで下さい、ケダモノ」 ☆☆☆ 「気になってる程度なら、そのまま引き下がって下さい」 「じゃあ、好きだよ?」 「疑問系になる位の告白は要りません」 「好きだ!」 「疑問系じゃなくても要りません」 「どうしたら、信じてくれるの?」 「信じるも信じないもないんですけど‥‥そうですね、私の好きなところを400字詰め原稿用紙5枚に纏めて、1週間以内に提出したら信じます」 ☆☆☆ そんな二人が織り成す物語 ギャグ(一部シリアス)/女主人公/現代/日常/ハッピーエンド/オフィスラブ/社会人/オンラインゲーム/ヤンデレ

Catch hold of your Love

天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。 決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。 当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。 なぜだ!? あの美しいオジョーサマは、どーするの!? ※2016年01月08日 完結済。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

処理中です...