あなたはずっと俺のもの

文野多咲

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ママ?!3

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 物陰から覗いていると、ママの動きに合わせてママの声が脳内で再生される。

『私、さっきまでここにいた娘の母ですの。あなたは娘のお友だち?』

 にっこりと笑っているものの、不審人物でも見るようなママの顔。そりゃ、娘と恋人っぽいことをして過ごしている男が誰なのかは気になるわよね。そして、セフレだなんてバレたら卒倒するわ。
 非モテの非リアの娘が、いきなり大人っぽい格好で男といるだけで驚かせただろうに。
 社長は立ち上がり、名刺らしきものを差し出している。そして、丁寧にお辞儀をしている。

『山田さんのお母様でいらっしゃいますね。山田さんには大変よくしていただいております』

 名刺を見るママ。

『はて、瀬川エステート?』

 ママったら私の会社の名前も忘れていそうだわ。

『山田さんには長年勤務していただいております』
『あらまあ、そうでしたの』
『我が社には大変貢献していただいております』

 脳内再生だけど、ママがご機嫌になったから、多分、こんな会話のはず。
 ママは社長をぶしつけに見ながら言う。

『で、二人はお付き合いをしているのかしら。あの子もそろそろ30よ。どういう落とし前をつけてくれるのかしら』

 ママったら、こんなことを言ってないわよね?
 そうね、今頃、社長が御曹司だってことでも思い出して、私が遊ばれてるって勘ぐっちゃってるかもしれないわね
。でも、安心して、ママ、私も社長で遊んでるから。
 真面目な顔をママに向けている社長。 

『お嬢さまとは、真剣なお付き合いをさせていただいています』

 うふふ、ないない。
 ふふ、社長ってばクズの癖に真面目な顔すれば誠実そうに見えるのね。すこしだけときめいちゃうわ。
 社長のことだからきっとうまいこと言い逃れてるわね。
 ママは終始ご機嫌な様子で、しばらく私を待つそぶりを見せていたが、私がなかなか戻ってこないためか、連れの女性客の方へと戻っていった。
 社長にメッセージを打つ。

『ごめんなさい、用事を思い出しました。先に電車で帰ります』

 はあ、ママに何て説明しよう。何か訊かれてもすっとぼけるしかないわね。
 しばらく着信はスルーするか。

 駅に向かう出口から出たところで、社長がいた。
 あれ、社長、何でいるの?
 ちゃんとトレーは片付けてくれたわよね?

「あ、社長、では、私は失礼します」

 社長は、前を通り過ぎる私の腕を取って引き留める。

「家まで送る」
「私に遠慮せずにイルミネーションを楽しんできてください」
「一人でどうやって楽しめと。山田さんがいないと面白くないでしょ。わー、あのイルミネーション、おいしそー、とかいうのが聞きたかっただけだし」
「へえ、社長ってば、私を楽しんでるんですね」
「いつも思いっきりね」

 結局、SUVで、家まで送ってもらうことになった。
 私も社長を楽しんでますよ。社長の体だって何もかも楽しんでますから。

 それから怒涛のメッセージがママから届くかと思いきや、何の音沙汰もなかった。
 却って不気味ですけど。
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