4 / 32
4
しおりを挟む
父親が夕飯の席に着いた。
優月は事前に『パパ、話があります』とメッセージで送っていた。
『明日の夜帰るからね』と、父親はのん気な調子で返してきた。
『二人だけで話したいの』とのメッセージには『いいよ♡』と少々気持ちの悪い返事があった。
しかし、父親は、美智子も麗奈もいる席で、優月に向けて尋ねてきた。
「優月ちゃん、話って何だい?」
(はああ、パパは、つくづく、残念だよね)
父、市太郎は愛情深いところはあるが、男性らしい鈍感さと無神経さを備えている。想像力もいまいち働かない。
だから、優月に対する美智子と麗奈の悪意にもまったく気付いていない。
わざわざ『二人だけで話したいの』と告げているのに、こうやって美智子と麗奈の前でもぶちまける。
市太郎は刺身を咀嚼しながら言った。
「ドレスのことで怒ってるんだって?」
美智子が顛末を既に話しているのだろう。もちろん美智子目線での顛末を。
そして、優月が自分勝手で我が儘なことになっているのだろう。
美智子と麗奈の前で話せば、必ず二人に邪魔される。美智子と麗奈の巧妙なやり取りに優月は負かされてしまう。しかし、二人だけで話せば、父親は、必ずわかってくれる。
それだから、優月は、今までこの家でやってこれたのだ。
「麗奈、傷ついちゃったわぁ。優月ったら、ちょっとドレス着たくらいで怒っちゃうんだもん」
麗奈を無視して、優月は言った。
「パパ、あとで、部屋に来て。大事なことなの。お願い」
その場はそれで済ませた。
そのあとは、市太郎の話に美智子が相槌を打ち、麗奈が茶化すという、いつもの夕飯の流れとなった。
優月は事前に『パパ、話があります』とメッセージで送っていた。
『明日の夜帰るからね』と、父親はのん気な調子で返してきた。
『二人だけで話したいの』とのメッセージには『いいよ♡』と少々気持ちの悪い返事があった。
しかし、父親は、美智子も麗奈もいる席で、優月に向けて尋ねてきた。
「優月ちゃん、話って何だい?」
(はああ、パパは、つくづく、残念だよね)
父、市太郎は愛情深いところはあるが、男性らしい鈍感さと無神経さを備えている。想像力もいまいち働かない。
だから、優月に対する美智子と麗奈の悪意にもまったく気付いていない。
わざわざ『二人だけで話したいの』と告げているのに、こうやって美智子と麗奈の前でもぶちまける。
市太郎は刺身を咀嚼しながら言った。
「ドレスのことで怒ってるんだって?」
美智子が顛末を既に話しているのだろう。もちろん美智子目線での顛末を。
そして、優月が自分勝手で我が儘なことになっているのだろう。
美智子と麗奈の前で話せば、必ず二人に邪魔される。美智子と麗奈の巧妙なやり取りに優月は負かされてしまう。しかし、二人だけで話せば、父親は、必ずわかってくれる。
それだから、優月は、今までこの家でやってこれたのだ。
「麗奈、傷ついちゃったわぁ。優月ったら、ちょっとドレス着たくらいで怒っちゃうんだもん」
麗奈を無視して、優月は言った。
「パパ、あとで、部屋に来て。大事なことなの。お願い」
その場はそれで済ませた。
そのあとは、市太郎の話に美智子が相槌を打ち、麗奈が茶化すという、いつもの夕飯の流れとなった。
445
あなたにおすすめの小説
幼馴染同士が両想いらしいので応援することにしたのに、なぜか彼の様子がおかしい
今川幸乃
恋愛
カーラ、ブライアン、キャシーの三人は皆中堅貴族の生まれで、年も近い幼馴染同士。
しかしある時カーラはたまたま、ブライアンがキャシーに告白し、二人が結ばれるのを見てしまった(と勘違いした)。
そのためカーラは自分は一歩引いて二人の仲を応援しようと決意する。
が、せっかくカーラが応援しているのになぜかブライアンの様子がおかしくて……
※短め、軽め
完璧な妹に全てを奪われた私に微笑んでくれたのは
今川幸乃
恋愛
ファーレン王国の大貴族、エルガルド公爵家には二人の姉妹がいた。
長女セシルは真面目だったが、何をやっても人並ぐらいの出来にしかならなかった。
次女リリーは逆に学問も手習いも容姿も図抜けていた。
リリー、両親、学問の先生などセシルに関わる人たちは皆彼女を「出来損ない」と蔑み、いじめを行う。
そんな時、王太子のクリストフと公爵家の縁談が持ち上がる。
父はリリーを推薦するが、クリストフは「二人に会って判断したい」と言った。
「どうせ会ってもリリーが選ばれる」と思ったセシルだったが、思わぬ方法でクリストフはリリーの本性を見抜くのだった。
〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
聞き分けよくしていたら婚約者が妹にばかり構うので、困らせてみることにした
今川幸乃
恋愛
カレン・ブライスとクライン・ガスターはどちらも公爵家の生まれで政略結婚のために婚約したが、お互い愛し合っていた……はずだった。
二人は貴族が通う学園の同級生で、クラスメイトたちにもその仲の良さは知られていた。
しかし、昨年クラインの妹、レイラが貴族が学園に入学してから状況が変わった。
元々人のいいところがあるクラインは、甘えがちな妹にばかり構う。
そのたびにカレンは聞き分けよく我慢せざるをえなかった。
が、ある日クラインがレイラのためにデートをすっぽかしてからカレンは決心する。
このまま聞き分けのいい婚約者をしていたところで状況は悪くなるだけだ、と。
※ざまぁというよりは改心系です。
※4/5【レイラ視点】【リーアム視点】の間に、入れ忘れていた【女友達視点】の話を追加しました。申し訳ありません。
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた
今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。
二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。
それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。
しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。
調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。
妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです
今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。
が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。
アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。
だが、レイチェルは知らなかった。
ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。
※短め。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる