私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲

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 由紀也は昼前にマンションに戻ってきた。ショッピングバッグをたくさん抱えている。

「着替えや必要な身の回りのものを、女子社員に適当に買ってきてもらった」

 しかし、それらは決して適当なものではなかった。洋服もバッグも化粧品も、すべてハイブランドのものだ。
 靴は同じデザインのものが3足も出てきた。

「サイズがわからなかったからね。優月を裸足で歩かせるわけにはいかない」
「由紀兄さんが抱っこして歩いてくれてもいいのよ」

 優月にも冗談を言うだけの気力が戻ってきていた。

「ご要望とあらば、いつでも抱っこして差し上げますよ、お姫さま」
 
 由紀也は優月を抱き上げた。バランスを崩しかけて由紀也に抱き着けば、汗ばんだ由紀也の肌を感じる。
 恥ずかしくなって由紀也の胸を押すと、由紀也はすぐに降ろした。

「優月、着替えてみて」

 優月は、数着ある衣類から、濃紺のワンピースを手に取った。仕立ての良いものだ。
 着替えて化粧をして髪を整えると、気持ちがしっかりとした。
 高遠家に出向くのに、由紀也のぶかぶかのTシャツで出向くよりも、きちんとしたワンピースのほうが、ずっと気を強く持てる。
 由紀也がそこまで考えたかは知らないが、由紀也の気遣いが嬉しい。
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