死に戻った私は二度と後悔したくはありません

クロユキ

文字の大きさ
2 / 3

愛した人の死

しおりを挟む
「レイラ……レイラ……お願いだ…目を…目を開けてくれ…レイラ……」
夫のアルベルトは目を開けない妻のレイラを抱き締め涙を流していた。
「……お姉様?……レイラお姉様!?……嘘…嘘よね?……死んでしまったなんて…嘘でしょう?…ねえ、私よ…目を開けて…お姉様……」
妹のウェンディは、震えながら抱き締めて離さないアルベルトの側で腰を落として涙を流して姉が死んだ事が信じられなかった。
「……レイラ……様……」
医師を連れて来た騎士のグレッドは茫然と立ち医師は慌ててレイラの側に駆け寄った。
「ア、アルベルト様…奥様を…ベッドの方へお連れしてください…」
「うっ……レイラ……レイラ……」
「つ……」
茫然と立っていたグレッドが止めていた足を動かし、抱き締めて離さないアルベルトの側に立ちレイラを離すように声を掛けた。
「……アルベルト……レイラ様を…」
「うううっ……レイラ…レイラ……」
「アルベルト!!」
声を上げたグレッドに涙を流して顔を上げたアルベルトは「あ……」と声に出し、険しい顔で自分を見るグレッドを見て抱き締めていた妻のレイラを離した時グレッドは目を見開いて驚いた。
レイラの腹部には血が服から滲み出ていた。
「まさか……お前がレイラ様を……」
「!ち……違う……レイラが……レイラが……俺の目の前で……」
「グレッド様、早く奥様を…」
「っ…」
グレッドはまだ温かいレイラを抱き上げベッドの方へと急いだ。
ベッドの上に体を置いたレイラの腹部を医師は見て手を取り脈をみていた。
「……」
「…レイラ様は……」
医師は首を横に振りレイラが亡くなった事を知らせた。
「……血を流し過ぎて……お亡くなりになりました…」
「……」
グレッドは震える手でレイラの頬を触った。
「な……何故…自ら死を……死を…選んだのですか…何故…俺に話してくれたら……レイラ様……こんな事になるならアルベルトから貴女を奪い取ればよかった…レイラ……」
グレッドは、ベッドの上で少しずつ冷たくなるレイラの手を握り締め唇に口付けをした。
騎士の夫アルベルトに嫁いだレイラは夫が持っ剣で自ら腹部を刺し命を落とした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある国の王の後悔

黒木メイ
恋愛
ある国の王は後悔していた。 私は彼女を最後まで信じきれなかった。私は彼女を守れなかった。 小説家になろうに過去(2018)投稿した短編。 カクヨムにも掲載中。

婚約者を借りパクされました

朝山みどり
恋愛
「今晩の夜会はマイケルにクリスティーンのエスコートを頼んだから、レイは一人で行ってね」とお母様がわたしに言った。 わたしは、レイチャル・ブラウン。ブラウン伯爵の次女。わたしの家族は父のウィリアム。母のマーガレット。 兄、ギルバード。姉、クリスティーン。弟、バージルの六人家族。 わたしは家族のなかで一番影が薄い。我慢するのはわたし。わたしが我慢すればうまくいく。だけど家族はわたしが我慢していることも気付かない。そんな存在だ。 家族も婚約者も大事にするのはクリスティーン。わたしの一つ上の姉だ。 そのうえ、わたしは、さえない留学生のお世話を押し付けられてしまった。

【完】お望み通り婚約解消してあげたわ

さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。 愛する女性と出会ったから、だと言う。 そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。 ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

さよなら私の愛しい人

ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。 ※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます! ※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。

処理中です...