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カイル王子の部屋へ②

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「ロイ君、焼き菓子はどうだった?」
「あ、お、美味しく頂きました…」
「喜んでくれて良かったよ、次は何が良いかな?」
「え?次ですか?」
(まさか、この後もお菓子が来るとか?)
「次にロイ君が俺に会いに来た日に出すお菓子は、何が良いのかなと思って聞いたんだ」
「あ…」
僕は次にカイル王子に会う約束をしていた事を思い出し、テーブルの上に置いた黒いタオルに目を向けた。
(そうだった…庭園で紅茶を溢してカイル王子からタオルを借りていたんだった)
「……カイル王子にお任せ致します…」
「良いの?俺が決めても」
「はい」
「そうだな…カップのケーキも良いな…フルーツも良いしパイケーキも食べたいよな~」
「……」
次に城に来る僕に出すお菓子を考えるカイル王子に可愛いと思ってしまった。
「……っ?!」
(か、可愛い?カイル王子が可愛いなんて…何を考えているんだ僕は……僕を押し倒した人なのに…)
僕は顔が熱く成ってカップを手に持ち口元へやった。
「あれ?ロイ君そのカップ紅茶が空に成ってなかった?」
「あっ!」
「はははは、ロイ君って面白い事をするんだな顔が真っ赤に成って可愛いな」
「かわ…!?」
クスクスと笑うカイル王子に僕は気まずくて…手に持っていたカップを小皿の上に置いた。
(ううっ恥ずかしい…さっきまでお菓子の事を考えるカイル王子に可愛いと思っていた僕が、今度はカイル王子から僕に可愛いと言われてしまった……)
僕は恥ずかしさの余り下を向いていると、側に気配を感じ顔を上げるといつの間にかカイル王子が僕が座るソファーの側に立ち、笑みを見せる顔を見た。
「カイル王子?」
「何もしないと言ったけど……ごめん……」
「え?…」
僕の目の前にカイル王子の顔が影になり僕の唇に触れるのが分かった
「クスッ、あの時も驚いた顔で見ていたね」
「……」
(え!?)
カイル王子の唇が僕の唇に触れた感触が残っている事に気付いた僕は、真っ赤な顔で体が震えていたのに気がついた。
「つ、つ!?……」
「ごめんロイ君、また触れても良い?」
「え!?あ…その……ぼ、僕達は親友なのでは?…」
「うん親友だよ、親友だからロイ君に触れたいと思うんだ」
「……ぇ…」
僕は初めてカイル王子と口付けをした時を思い出し、唇が触れる感覚が甦り混乱していた。
「カ…カ…カ…カイルお……」
「メイドの事は気にしなくて良いよ、俺の影で何をしているのか見えないから」
「メ!!…見え!?……」
僕は言葉に成らない声を出し、例えカイル王子の体で見えなくてもメイドが側にいるだけで僕の頭の中は混乱していた。
(え!?ええ!?本当にカイル王子はメイドが見ている中で…)
僕の頬に触り指先に触れる唇に僕は固まり動けずにいた。
「はぁ…分かったよメイドは席を外すから」
「……ぇ……」
「君たち部屋を出てくれないか?」
「えっ、あ、はいカイル様…」
「は、はい、分かりました……」
メイド達は部屋を出て良いのか悩んだ顔を見せ、部屋の扉を開け出て行こうとして歩く足を止めていた。
「どうした?」
カイル王子は、メイドが扉の前で足を止め部屋を出ない姿を見て少し機嫌が悪い声を出しメイド達に聞いていた。
「…カイル様、ご令嬢の方がお見えです……」
「何!?」
僕に触れていた手が離れ、カイル王子は扉の方へ体を向け、ぞろぞろと部屋の中に入る令嬢達に僕も驚いてしまった






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