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「……カイト様……」
俺はユリウスの体拭きを途中で止めユリウスの冷たく成った肌に顔を埋め泣いた…目立ちたがり屋で強引で女好きの父親だったが息子のカイトにとって前世の快斗の俺にとってもユリウスは父親でもあり弟でもあり最愛の人でもあった。
俺はこれからユリウスが居ないこの国でどの様に生きて行けば良いのか……俺の中に不安が広がり始めていた。
「カイト様旦那様の身仕度はわたくし達が致しますカイト様はソファーでお休みなさいませ」
使用人の一人が俺の泣く姿を見て気遣い俺に休むように話しをして、俺はユリウスの胸から顔を上げ首を横に振った。
「…すみません大丈夫です。このまま続けても良いですか?」
「分かりました一緒に旦那様の御体を綺麗に致しましょう…カイト様もし無理だと思いましたらわたくし達にお任せ下さい」
「はい、有難う御座います」
男性使用人三人とも笑顔で頷き俺は休めていた手を動かしユリウスの体を拭きあげた。
俺は背広を手に持ち使用人達にユリウスに服を着せる様に指示を出した。
使用人達は珍しい背広に興味を持ったようで俺に尋ねていた
「カイト様旦那様が着替えますこちらの服は何処で取り寄せましたのでしょうか?」
「この服は父様が特注で自分用に作らせた服です……この国で父様が初めて着ます思い出の服なのです」
使用人達の手伝いのお陰もありユリウスに黒の背広を着せる事が出来た。
「おおっ、旦那様お似合いで御座います…」
「……本当にお似合いです…鏡で見せてあげたい程です…旦那様」
「御亡くなりに成っています事が嘘のようで御座います」
使用人の三人達はユリウスの背広姿を見て涙声で話し掛けていた俺は最後の仕上げで黒いネクタイを取り出した。
「…今からネクタイを結んであげるよ…父様」
俺はユリウスの白いシャツの襟を捲り上げネクタイの紐を通し結び始めていた。
俺はネクタイの紐を結びながら勇樹の高校の制服を思い出していた。
高校は別々だったが制服が同じブレザーだった為ネクタイを結ぶ事が苦手だった勇樹が毎朝リビングで俺にネクタイを結ばせていた事を思い出していた。
『兄ちゃん結んで!』
『お前なーっ、朝の挨拶が兄ちゃん結んで!は無いだろう、それに今俺は朝ご飯食べて両手が塞がれて居るんだぞ、自分で結べ』
『えーっ、可愛い弟がお願いしているんだよ』
『自分で可愛いって…はぁ、後で結んでやるから先にご飯食べろよ』
『わ~い、やった。兄ちゃん愛してるよ!』
『ネクタイ結ぶだけで愛してると言って良く恥ずかしく無いよな』
『別に恥ずかしくないよ、だって俺兄ちゃん大好きだし』
『怖っ…』
『あ~っ、兄ちゃん酷っ!』
『ほらっ、あんた達早く食べないと学校に遅れるわよ』
『うわっ、ヤバ!勇樹早く食べろ』
『ええっ、ちょっと待って』
『毎朝騒がしいなお前達は、勇樹ネクタイぐらい自分で結べる様に成らないと社会人に成った時困るぞ』
『モゴモゴ…俺今学生だから兄ちゃんに結んで貰う、モグモグ』
毎朝朝ご飯を前にして、勇樹のネクタイを毎日の様に結んでいた時勇樹はじっと俺がネクタイを結ぶ姿を微笑みながら見ていたのを今姿を変え眠るユリウスに俺はネクタイを結んであげた。







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