夫は家族を捨てたのです。

クロユキ

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幸せだった日

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街の中に洋服の直し屋がある。
赤ちゃんの服から大人の服まで、まだ着れそうな服を直してくれる店では一人の女性がお店を営んでいた。
カランカラン♪
「こんにちは、出来てるかい?」
「あ、こんにちは出来ていますよ」
棚から子供の服を取り出し女性客に渡していた。
「助かったよ、まだ着れそうなのに勿体無くて服を買うのも高くてね」
「ありがとうございます」
お金を渡した女性客は話しの続きをした。
「アルバートさんは帰って来たかい?」
「……いえ…」
「そうかい……心配だね…」
「……」
「出稼ぎは簡単には帰って来れないからお金を貯めてひょっこりと笑って帰って来るよ、アランちゃんも居るからね。困った事があれば遠慮しないで言ってくれ」
「ありがとうございます…」
カランカラン♪
女性客は帰り店の女性はため息を吐いて椅子に座った。
「……便りぐらい出してよ…あなたは今何処にいるの?何故帰って来ないの……」
私の名前はシェリー…七歳になる息子のアランとこの店の中で二人で暮らしている…以前は夫のアルバートも一緒に住んでいた。
八年前に夫と結婚をして子供がいて共働きでも私達は幸せだった…夫は、料理人で朝から夜まで私達の為に働いてくれた。
アランが産まれて夫はこの先の事を考えた。
『出稼ぎに行こうと思うんだ…』
『えっ!?出稼ぎ?どうしたの急に…』
『息子を見てこれから大きくなる事を考えたんだ…今からお金を貯めて君や息子に少しでも楽にしてあげたいんだ』
『あなた…』
『三年だけ俺に時間をくれないか?』
『三年も…』
『俺が留守の間兄さんに頼みたいと思っているんだ』
『えっ、エリックお義兄さんに?』
『ああ、兄さんは信頼出来るなんでも兄さんに言ってくれ』
『でも…』
『毎日は無理だけど手紙を出して仕送りもするよ、約束する三年経ったら帰って来る』
『……分かったわ…三年…あなたの帰りを息子と一緒に待っているから』
『ああ、愛しているよ』
『私もよ』
「……あなたは、三年経っても帰って来なかった……仕送りも…手紙も…出稼ぎに行って一年で途絶えてしまった……息子のアランは七歳になったのよ…あなたに会いたい……」
私は、椅子に座ったまま泣いていた。



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