捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ

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振り向いてくれるのを願い

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妹のエミリーが屋敷へ初めて来てから、遊びに来るようになり時には屋敷に泊まるようにもなった。
「こんにちは、アレックお兄様」
「ああ、こんにちは」
「……」
妹のエミリーは屋敷へ来ると先に夫のアレックに挨拶をするようになった。
「エミリー、仕事の邪魔はしないで」
ソフィアは初めて妹のエミリーに声を上げてしまった。
「あ、ごめんなさい…お姉様…」
涙目を見せる妹のエミリーにソフィアは言い過ぎたと思い声をかけようとした。
「……エミ…」
「そんなに声を上げるとは君らしくない、エミリーさんは君に会いに来たんだ」
「……」
「アレックお兄様、お姉様に怒らないで私が忙しい時に来たのがいけないんです…」
「はぁ…少し休憩しょう、エミリーさん一緒に紅茶を飲まないか?」
「え!?良いんですか?」
「ああ…」
二人の会話をソフィアは黙って聞いていた。
「……君も、休憩するといい…」
「……わかりました…」
ソフィアは、二人を残して部屋を出ると屋敷の外へ出たソフィアは声を殺し泣いていた。
それ以来、ソフィアは妹のエミリーと夫のアレックにあまり話さなくなった。
そして、二人で一緒にいる姿を良く見るようになり、屋敷内ではメイド達の噂話を耳にするようになった。
「ねぇ、旦那様この前庭園でエミリーさんと一緒に歩く姿を見たんだけど……」
「そう言えばこの頃、旦那様の帰りが早いから夜は奥様の部屋だと思ったけど違うみたいなの」
「え、それって…」
メイド達の話を聞いてしまったソフィアは泣きたいのを我慢して部屋へと戻った。
「……嘘よ…旦那様が私に隠れてエミリーと……そんなのメイド達の作り話よ!」
ソフィアは自分に言い聞かせ、夫のアレックと妹のエミリーを信じて疑う事を拒んだ。
食事が通らない日が続いたソフィアは体調を崩し、メイド達は「ご懐妊では?」と騒ぐ者もいた。
「……疲労からの疲れのようです。奥様、何か心配事でもあるのでは?」
「……大丈夫です…医師様…ありがとうございます」
ソフィアは誰にも打ち明ける事ができず胸にしまい込んでいた。
部屋に閉じ籠もる日が続き、時々夫のアレックと妹のエミリーが様子を見に来る事があったが、安静にすれば大丈夫と二人に話、もうすぐ結婚して一年になろうとしていた。
あまり心配かけてはいけないと思ったソフィアは朝食を一緒に取るようにした。
「良かったわ、お姉様と一緒に食事ができて」
「……」
妹のエミリーは屋敷へ泊まるようになり部屋も与えられていた。
「う!?」
「どうした?エミリー」
いつの間にか夫のアレックは妹のエミリーを呼び捨てするようになっていた。
「…ううん、なんでもないの…最近胸が苦しくて……うっ!?」
「……」
(……まさか……エミリー、貴女……)
「大丈夫か?医師を呼ぼう……」
「……エミリー…貴女、妊娠しているの?」
「「!?」」
夫のアレックと妹のエミリーが一緒に驚く姿を見たソフィアは席を立ち食事の部屋を出た。
その後、医師が来て妊娠している事を告げた。
ソフィアは涙が出る事なく茫然とベッドの上に座っていた。
コンコン!
「奥様、旦那様がお呼びです」
「わかったわ……」
ソフィアは、夫のアレックの部屋に入ると涙目になっている妹のエミリーと隣には体を支える夫のアレックの姿があった。
「……お話があるみたいですが……」
「…急で悪いが…俺と離婚して欲しい…君の妹が俺の子を身籠った…」
「……」
「ごめんなさい…ごめんなさい…お姉様…私、アレック様の事をずっとお慕いしていたの…お姉様を裏切るような事をして…ごめんなさい……」
涙を流して謝る妹のエミリーをソフィアは、何も言わずじっと二人の姿を見ていた。
「……君には…申し訳ないと思っている……謝ってすむ事ではない事はわかっている……離婚をしても君がここにいたいと思うなら居ても良い…エミリーの支えとなってくれたら……」
「……わかりました……旦那様の言う通りに離婚いたします……ですが、お二人の側にはいたくありません……」
「……お姉様……」
「……っ…」
ソフィアは二人に話をしたあと部屋を出た。
グラッ…と眩暈がしたソフィアは、側にいたメイドに支えられ「大丈夫よ」と言ったあと自分の部屋へと戻った。
「……初めて…旦那様に言い返したわ…最後だもの…良いわよね……」
ソフィアは気が抜けたように茫然と扉の前から動く事なく部屋の周りを見渡していた。
コッと動き出したソフィアは化粧台の前に立ち、引き出しの中から小さなナイフを取り出した。
躊躇う事なくサクッと切った手首からポタポタと流れ落ち、ソフィアはそのままベッドの上へ仰向けになり目を閉じ、閉じた瞼から涙が流れ落ち、最後まで夫に振り向いてくれるのを待っ事が出来なかった侯爵夫人の最後だった。







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