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第1章 修道院での子供時代
17、修道士ニコラの伝説(1)
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ニコラス先生の授業がある日、私はフアンの手を引いて学習室の中に入った。孤児院の子供たちが席に座って待っていた。図書館の中なので大声で騒いだりはしないが、以前のように静まり返っているということはなく、みんな小声でおしゃべりをしていた。アルバロとフェリペの声が聞こえる。
「最近孤児院の様子が変わったと思わないか?」
「そうだね。食事の量が増えたし、毎日肉が食べられるようになった。それに僕は兵士になるための訓練の代わりに学習室に来るように言われた」
「カルロス院長の顔つきも変わった」
「君はカルロス院長の顔を近くでジロジロ見たのか?勇気あるなあ。僕にはとてもできない」
「近くでは見ていない。俺、目がいいからさ、遠くからじっと顔を見た」
「それでどう変わっているの?」
「昔は本当に苦虫を噛み潰したような厳格な顔だった。でも最近の院長の顔はなんていうか、苦笑いをこらえた厳格な顔なんだ」
「それ、どこが違うの?」
「全然違う!苦笑いをこらえている顔というのは、苦笑いをこらえているんだ!」
アルバロの声が大きくなり、みんなが振り返った。
「アルバロ、声が大き過ぎるよ。君の言いたいことはよくわかった。院長の顔が変わったのはフアンが原因だよ」
「そうか!フアンか。あいついろいろやらかしてくれるから、院長も苦笑いしたくなるのか」
「でもそのおかげで僕たちの生活がよくなったから、フアンには感謝しなきゃ」
「そうだな、どうせ今日もフアンはロバのビエホーに会いに行きたいと言うんだろう。いいよ、俺がいくらでも連れて行ってやる、フアンのおかげで・・・あ、ニコラス先生、おはようございます」
いつのまにかニコラス先生が学習室に入っていた。
「君たち、おしゃべりもいいが、学習室の中ではもう少し気を使ってくれ」
「すみません、ニコラス先生」
「今日はいつもとは違う授業を行う。ミゲルとアルバロ、フェリペの3人はこの部屋に残り、他の子供はフアンを連れて家畜小屋に行って欲しい」
「あ、家畜小屋に行くなら俺も外へ行くよ」
「アルバロ、今日の授業は君にも聞いて欲しい。フアンの世話は他の子に任せても大丈夫だろう。君は孤児院の中で最年長で今年15歳になった。ここを出ていかなければならない日も近いから、その前にこの修道院の歴史についてしっかり話しておきたい。君が将来どこへ行くかはわからない。でもここで育ったことを誇りに思って欲しい」
「わかりました、ニコラス先生」
私達3人はニコラス先生の後を歩いて図書館の上にある秘密の部屋へと案内された。ニコラス先生は入り口の鍵をしっかりとしめ、曲がりくねった階段や通路を通って1つの大きな部屋に入った。部屋は窓以外は壁の前に本棚が置かれ、本棚に入りきれない本は床に積み重ねられている。部屋の真ん中に小さな机があり、椅子が4つ並べられている。ニコラス先生は椅子の位置を少しずらした。古い木の机と椅子には埃がたまっている。先生と向かい合って3人が座れるようにして、手に持っていた布で椅子の埃をはたいた。
「座りたまえ。古い時代のものでほとんど使ってないが、椅子も机もしっかりと作られている」
私達3人は椅子に座り、ニコラス先生も前に座った。机の上にはこびりついたロウソクの跡がいくつもあった。
「この部屋は修道士ニコラと修道士アントニオの部屋だ」
「修道士ニコラと修道士アントニオですか?」
「2人とも昔ここに住んでいた伝説の修道士だ。教会によって聖人と認定されたわけではない。2人は歴史に名前を残すことはなく、無名のまま生涯を終えた」
「・・・・・」
「修道士の宿舎は今と同じ場所にあった。だが修道士ニコラは本に囲まれたこの場所を気に入っていた。夜、寝る時間になってからここを訪れ、本を読みふけってそのまま朝まで過ごすこともあった。部屋に戻っていないのを心配して若い修道士のアントニオが見に来ると、修道士ニコラは喜んで本の内容をアントニオに話した」
「アントニオは修道士ニコラの弟子だったのですか?」
「最初はそうだった。だが世俗に疎い修道士ニコラに比べて貴族の家に生まれたアントニオは陰謀渦巻く修道院でどうふるまったらいいかよくわかっていた。結果としてアントニオは修道士ニコラを修道院長の座につけることに成功した」
「陰謀渦巻く修道院ですか?」
「今と違ってあの時代は修道士もまた世俗の権力と結びついている者が多かった。跡継ぎになれない者が修道士となり、密かに金を貯めて実家に送った後に修道院を出て俗世間に戻るということもよくあった。だが、修道士ニコラはそれを許さなかった」
「そうなんですか・・・」
ニコラス先生は窓の外を見つめた。
「修道士ニコラはここから遠く離れたコンスタンティノープルで生を受けた。彼の父親はイタリア人貴族で十字軍の戦士でもあった」
「おおー!十字軍の戦士か。かっこいいなあー」
騎士に憧れるアルバロが目を輝かせた。今は騎士というよりも軍隊での騎馬兵と歩兵に分かれていて、貴族の子でない限り騎馬兵になるのは難しい。
「彼は父親と同じように騎士になろうとして武芸に励んでいた。ところが20代半ばで突然神の啓示を受け、剣を捨てて修道士となった」
「え、突然修道士になったの?どうして?せっかく騎士になる資格を持っているのに」
アルバロは不満そうであった。
「どうしてかはわからない。だがそれが神の啓示というものだろう。そして修道士ニコラは仲間の修道士と一緒にシチリアに渡り、そこで30歳から60歳までの30年間を過ごした」
「シチリアですか?シチリアは皇帝フリードリヒ2世の時代に世界の中心となり最も栄えていたのですよね」
今度はフェリペが目を輝かせた。
「そう、最も輝かしい時代のシチリアに修道士ニコラは住んでいた。あの時代、シチリアにはキリスト教徒だけでなくアラブ人、ユダヤ人などあらゆる民族が暮らしていた。世界中のあらゆる財宝と書物がシチリアに集められていた。そこで修道士ニコラはアヴィセンナの本に出合う」
「アヴィセンナって医者であり哲学者でもあるアヴィセンナですよね」
フェリペは私の知らない名前をよく知っていた。
「そう、ラテン語訳のアヴィセンナの本をシチリアの本屋で見つけて修道士ニコラは目を輝かした。彼は正式に医学の勉強はしていなかったが、医者のように怪我や病人の手当てをしてきた。そうした知識は修道士たちの間で伝統的に伝えられてきた。だがそうした伝統よりもアヴィセンナの方がはるかに正確であることを知った彼はラテン語訳のものだけでなく、原書も読もうとしてアラビア語の勉強を始め、ついでにコーランも読んだ」
「あの、よくわからないのですけど、キリスト教の修道士がコーランを読んでいいのでしょうか?」
私は恐る恐る尋ねた。修道士がアラビア語の勉強をしたりコーランを読むなど信じられないことばかりだった。
「あの時代のシチリアではイスラム教徒、ユダヤ教徒もたくさん住み、同じ街にイスラム教とユダヤ教の礼拝堂も作られていた。市場に行けばさまざまな国の言葉が飛び交っていた。アラビア語の勉強をしたりコーランを読むこともさほど難しいことではなかった。もっとも彼はコーランを読んだからといってイスラム教徒になったわけではない。アラビア語もコーランもすべてはアヴィセンナの思想を正しく知るために学んだに過ぎない」
「どうしてニコラス先生は修道士ニコラについて詳しく知っているのですか?」
フェリペが質問した。
「この部屋には修道士ニコラが集めた本以外に彼の書いた手記もあった。彼は自分の思想を直接本に書いてはいないが、たくさん残された手記を丹念に読めば、当時の戦争の様子や怪我の手当ての方法、シチリアでの暮らしぶりやアラビア語の単語の意味など実にいろいろなことがわかる。もっともここにある膨大な手記を丁寧に読んだ者はほとんどいないと思うがね。私ですら部分的に興味のあるところを読んだだけだ」
ニコラス先生は静かに微笑んだ。
「話が長くなった。続きはまた別の日に話すことにしよう」
「最近孤児院の様子が変わったと思わないか?」
「そうだね。食事の量が増えたし、毎日肉が食べられるようになった。それに僕は兵士になるための訓練の代わりに学習室に来るように言われた」
「カルロス院長の顔つきも変わった」
「君はカルロス院長の顔を近くでジロジロ見たのか?勇気あるなあ。僕にはとてもできない」
「近くでは見ていない。俺、目がいいからさ、遠くからじっと顔を見た」
「それでどう変わっているの?」
「昔は本当に苦虫を噛み潰したような厳格な顔だった。でも最近の院長の顔はなんていうか、苦笑いをこらえた厳格な顔なんだ」
「それ、どこが違うの?」
「全然違う!苦笑いをこらえている顔というのは、苦笑いをこらえているんだ!」
アルバロの声が大きくなり、みんなが振り返った。
「アルバロ、声が大き過ぎるよ。君の言いたいことはよくわかった。院長の顔が変わったのはフアンが原因だよ」
「そうか!フアンか。あいついろいろやらかしてくれるから、院長も苦笑いしたくなるのか」
「でもそのおかげで僕たちの生活がよくなったから、フアンには感謝しなきゃ」
「そうだな、どうせ今日もフアンはロバのビエホーに会いに行きたいと言うんだろう。いいよ、俺がいくらでも連れて行ってやる、フアンのおかげで・・・あ、ニコラス先生、おはようございます」
いつのまにかニコラス先生が学習室に入っていた。
「君たち、おしゃべりもいいが、学習室の中ではもう少し気を使ってくれ」
「すみません、ニコラス先生」
「今日はいつもとは違う授業を行う。ミゲルとアルバロ、フェリペの3人はこの部屋に残り、他の子供はフアンを連れて家畜小屋に行って欲しい」
「あ、家畜小屋に行くなら俺も外へ行くよ」
「アルバロ、今日の授業は君にも聞いて欲しい。フアンの世話は他の子に任せても大丈夫だろう。君は孤児院の中で最年長で今年15歳になった。ここを出ていかなければならない日も近いから、その前にこの修道院の歴史についてしっかり話しておきたい。君が将来どこへ行くかはわからない。でもここで育ったことを誇りに思って欲しい」
「わかりました、ニコラス先生」
私達3人はニコラス先生の後を歩いて図書館の上にある秘密の部屋へと案内された。ニコラス先生は入り口の鍵をしっかりとしめ、曲がりくねった階段や通路を通って1つの大きな部屋に入った。部屋は窓以外は壁の前に本棚が置かれ、本棚に入りきれない本は床に積み重ねられている。部屋の真ん中に小さな机があり、椅子が4つ並べられている。ニコラス先生は椅子の位置を少しずらした。古い木の机と椅子には埃がたまっている。先生と向かい合って3人が座れるようにして、手に持っていた布で椅子の埃をはたいた。
「座りたまえ。古い時代のものでほとんど使ってないが、椅子も机もしっかりと作られている」
私達3人は椅子に座り、ニコラス先生も前に座った。机の上にはこびりついたロウソクの跡がいくつもあった。
「この部屋は修道士ニコラと修道士アントニオの部屋だ」
「修道士ニコラと修道士アントニオですか?」
「2人とも昔ここに住んでいた伝説の修道士だ。教会によって聖人と認定されたわけではない。2人は歴史に名前を残すことはなく、無名のまま生涯を終えた」
「・・・・・」
「修道士の宿舎は今と同じ場所にあった。だが修道士ニコラは本に囲まれたこの場所を気に入っていた。夜、寝る時間になってからここを訪れ、本を読みふけってそのまま朝まで過ごすこともあった。部屋に戻っていないのを心配して若い修道士のアントニオが見に来ると、修道士ニコラは喜んで本の内容をアントニオに話した」
「アントニオは修道士ニコラの弟子だったのですか?」
「最初はそうだった。だが世俗に疎い修道士ニコラに比べて貴族の家に生まれたアントニオは陰謀渦巻く修道院でどうふるまったらいいかよくわかっていた。結果としてアントニオは修道士ニコラを修道院長の座につけることに成功した」
「陰謀渦巻く修道院ですか?」
「今と違ってあの時代は修道士もまた世俗の権力と結びついている者が多かった。跡継ぎになれない者が修道士となり、密かに金を貯めて実家に送った後に修道院を出て俗世間に戻るということもよくあった。だが、修道士ニコラはそれを許さなかった」
「そうなんですか・・・」
ニコラス先生は窓の外を見つめた。
「修道士ニコラはここから遠く離れたコンスタンティノープルで生を受けた。彼の父親はイタリア人貴族で十字軍の戦士でもあった」
「おおー!十字軍の戦士か。かっこいいなあー」
騎士に憧れるアルバロが目を輝かせた。今は騎士というよりも軍隊での騎馬兵と歩兵に分かれていて、貴族の子でない限り騎馬兵になるのは難しい。
「彼は父親と同じように騎士になろうとして武芸に励んでいた。ところが20代半ばで突然神の啓示を受け、剣を捨てて修道士となった」
「え、突然修道士になったの?どうして?せっかく騎士になる資格を持っているのに」
アルバロは不満そうであった。
「どうしてかはわからない。だがそれが神の啓示というものだろう。そして修道士ニコラは仲間の修道士と一緒にシチリアに渡り、そこで30歳から60歳までの30年間を過ごした」
「シチリアですか?シチリアは皇帝フリードリヒ2世の時代に世界の中心となり最も栄えていたのですよね」
今度はフェリペが目を輝かせた。
「そう、最も輝かしい時代のシチリアに修道士ニコラは住んでいた。あの時代、シチリアにはキリスト教徒だけでなくアラブ人、ユダヤ人などあらゆる民族が暮らしていた。世界中のあらゆる財宝と書物がシチリアに集められていた。そこで修道士ニコラはアヴィセンナの本に出合う」
「アヴィセンナって医者であり哲学者でもあるアヴィセンナですよね」
フェリペは私の知らない名前をよく知っていた。
「そう、ラテン語訳のアヴィセンナの本をシチリアの本屋で見つけて修道士ニコラは目を輝かした。彼は正式に医学の勉強はしていなかったが、医者のように怪我や病人の手当てをしてきた。そうした知識は修道士たちの間で伝統的に伝えられてきた。だがそうした伝統よりもアヴィセンナの方がはるかに正確であることを知った彼はラテン語訳のものだけでなく、原書も読もうとしてアラビア語の勉強を始め、ついでにコーランも読んだ」
「あの、よくわからないのですけど、キリスト教の修道士がコーランを読んでいいのでしょうか?」
私は恐る恐る尋ねた。修道士がアラビア語の勉強をしたりコーランを読むなど信じられないことばかりだった。
「あの時代のシチリアではイスラム教徒、ユダヤ教徒もたくさん住み、同じ街にイスラム教とユダヤ教の礼拝堂も作られていた。市場に行けばさまざまな国の言葉が飛び交っていた。アラビア語の勉強をしたりコーランを読むこともさほど難しいことではなかった。もっとも彼はコーランを読んだからといってイスラム教徒になったわけではない。アラビア語もコーランもすべてはアヴィセンナの思想を正しく知るために学んだに過ぎない」
「どうしてニコラス先生は修道士ニコラについて詳しく知っているのですか?」
フェリペが質問した。
「この部屋には修道士ニコラが集めた本以外に彼の書いた手記もあった。彼は自分の思想を直接本に書いてはいないが、たくさん残された手記を丹念に読めば、当時の戦争の様子や怪我の手当ての方法、シチリアでの暮らしぶりやアラビア語の単語の意味など実にいろいろなことがわかる。もっともここにある膨大な手記を丁寧に読んだ者はほとんどいないと思うがね。私ですら部分的に興味のあるところを読んだだけだ」
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