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第2章、悪夢と狂気の中で
49、ビエホーの死(2)
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フアンがかわいがっていたロバのビエホーが死んでしまった。ロバとしてはかなり長生きだし、働けなくなってからもずっと修道院で大切にされていたので幸せだったと思う。でもあのことがあってから人と話すことを禁じられてただロバのビエホーだけを友達にしていたフアンの悲しみは深く、食事を全く取らなくなったと聞いた。そしてついにカルロス先生が別のロバを探すためにたった1人で馬に乗って出かけ、3日が過ぎた。
「ニコラス先生、カルロス先生はまだ戻って来ないのですか?」
「まだ戻って来ていない。今日で3日目だ。他の者には修道院長は街の大司教に急な用事で呼び出されて出かけていると伝えてある。まさかビエホーの代わりのロバを探すために出かけたとはとても言えないからな」
「大司教のドン・ペドロ氏ですか。もしあの人がいなければ僕の家族が殺されることもなかったし、カルロス先生がフアンに対して辛く当たることもなかったと思います。穏やかな生活が続いていたはずなのに・・・」
「ミゲルよ。キリスト教の権力者によって殺されたのは君の家族だけではない。たくさんのユダヤ人が罪をきせられ惨い方法で殺されている。そのことについてはいずれ詳しく君に話そう」
「はい・・・」
「1番苦しんでいるのは修道院長自身かもしれない。あの方は戦場で人を殺すのが嫌で修道士となった。だが聖職者の世界もまた醜い権力争いばかりだ。同じキリスト教徒の中で陰謀を企み暗殺をし、異教徒を殺して土地や財産を奪う、今のキリスト教世界はキリストが目指した世界とはかけ離れている。キリストは神の声を聞き、人間が互いに殺しあって滅びないために自らが犠牲になって十字架にかけられた。キリストはユダヤ人として生まれたのに、今、キリスト教徒がこのような形でユダヤ人を殺しているのを見たらどう思うだろうか?」
「・・・・・」
「カルロス修道院長は良心と慈悲の心がありすぎる方だ。だからこそフアンのために代わりとなるロバを探しに出かけた。あの方は君もフアンも深く愛している。だからこそ・・・・・無事に戻られるよう神に祈ろう」
「はい・・・・・」
夜遅く、カルロス先生は戻って来たようだった。カルロス先生とニコラス先生の話し声が聞こえる。
「ようやくロバを見つけることができた。今、馬小屋に連れて行った」
「それはよかった。カルロス院長、あなたのことだからほとんど何も食べていないのでは・・・」
「戦場ではもっと大変な経験をしている・・・しかし・・・年老いたロバくらい農家に行けばいくらでもいると思っていたがそうではなかった」
「貧しい村では働けなくなったロバをそのまま飼い続けるのは難しいのでは・・・」
「そなたの言う通りだ。元気なロバはいくらでもいるが、年老いて働けなくなったロバは水やエサを与えずに死なせているらしい。ようやく一軒の農家で年老いたロバを見つけることができた。その家の子供がこっそり水やエサを与えていたらしい。その子供はフアンにそっくりだった。修道院で大切に世話をするからと約束してロバを譲ってもらった」
「それはよかった。さっそく明日の朝にでもフアンに会わせましょう」
「いや、朝になってからでは遅い。今すぐに会わせよう。だが、フアンは私を怖れている。何度も鞭で打って脅し、ミゲルや他の子供と話をしないようにしたのだから無理もない。ミゲルに頼もう」
「ミゲルにですか?ミゲルとフアンを引き離したのはあなたです!」
「これ以上ミゲルを苦しめないためには災いをもたらすフアンと引き離すしかなかった。だが、今フアンは死にかけている。救えるのはミゲルしかいない」
「わかりました」
「そなたに任せた。私は礼拝堂にいる」
「ミゲル、寝ているところをすまないが、今からフアンを馬小屋まで連れて行って欲しい」
「ビエホーの代わりとなるロバが見つかったのですね」
「その通り!」
「わかりました。着替えた方がいいですか?」
「真夜中で人に会うこともないだろうから上着だけはおればいい」
病室に寝ているフアンを見た。かなり痩せている。
「フアン、ビエホーが戻って来たよ」
フアンは目を開けることもなく寝たままである。ニコラス先生がフアンを抱きかかえ、静かに病院から外に出た。月が道を照らして灯りがいらないほどであった。すぐに馬小屋に到着した。ビエホーがいた同じ場所に1頭のロバがいた。丁寧に世話をされていたためか、毛並みもいい。
「フアン、ビエホーが戻ってきたよ」
ニコラス先生に抱かれたままフアンはうっすらと目を開けた。手を伸ばしてロバの鬣に触れた。ロバはおとなしく触られている。フアンの目から涙が流れた。
「さあ、部屋に戻ろう」
ニコラス先生が声をかけた。
フアンはまた食事を食べられるようになり、ほとんどの時間を馬やロバの世話をして過ごすようになった。私はまたフアンや他の子供に会うことは禁じられ、部屋で1人で過ごすことが多くなった。ニコラス先生は特に熱心に私にヘブライ語を教えてくれた。そして私は14歳になった。
「ニコラス先生、カルロス先生はまだ戻って来ないのですか?」
「まだ戻って来ていない。今日で3日目だ。他の者には修道院長は街の大司教に急な用事で呼び出されて出かけていると伝えてある。まさかビエホーの代わりのロバを探すために出かけたとはとても言えないからな」
「大司教のドン・ペドロ氏ですか。もしあの人がいなければ僕の家族が殺されることもなかったし、カルロス先生がフアンに対して辛く当たることもなかったと思います。穏やかな生活が続いていたはずなのに・・・」
「ミゲルよ。キリスト教の権力者によって殺されたのは君の家族だけではない。たくさんのユダヤ人が罪をきせられ惨い方法で殺されている。そのことについてはいずれ詳しく君に話そう」
「はい・・・」
「1番苦しんでいるのは修道院長自身かもしれない。あの方は戦場で人を殺すのが嫌で修道士となった。だが聖職者の世界もまた醜い権力争いばかりだ。同じキリスト教徒の中で陰謀を企み暗殺をし、異教徒を殺して土地や財産を奪う、今のキリスト教世界はキリストが目指した世界とはかけ離れている。キリストは神の声を聞き、人間が互いに殺しあって滅びないために自らが犠牲になって十字架にかけられた。キリストはユダヤ人として生まれたのに、今、キリスト教徒がこのような形でユダヤ人を殺しているのを見たらどう思うだろうか?」
「・・・・・」
「カルロス修道院長は良心と慈悲の心がありすぎる方だ。だからこそフアンのために代わりとなるロバを探しに出かけた。あの方は君もフアンも深く愛している。だからこそ・・・・・無事に戻られるよう神に祈ろう」
「はい・・・・・」
夜遅く、カルロス先生は戻って来たようだった。カルロス先生とニコラス先生の話し声が聞こえる。
「ようやくロバを見つけることができた。今、馬小屋に連れて行った」
「それはよかった。カルロス院長、あなたのことだからほとんど何も食べていないのでは・・・」
「戦場ではもっと大変な経験をしている・・・しかし・・・年老いたロバくらい農家に行けばいくらでもいると思っていたがそうではなかった」
「貧しい村では働けなくなったロバをそのまま飼い続けるのは難しいのでは・・・」
「そなたの言う通りだ。元気なロバはいくらでもいるが、年老いて働けなくなったロバは水やエサを与えずに死なせているらしい。ようやく一軒の農家で年老いたロバを見つけることができた。その家の子供がこっそり水やエサを与えていたらしい。その子供はフアンにそっくりだった。修道院で大切に世話をするからと約束してロバを譲ってもらった」
「それはよかった。さっそく明日の朝にでもフアンに会わせましょう」
「いや、朝になってからでは遅い。今すぐに会わせよう。だが、フアンは私を怖れている。何度も鞭で打って脅し、ミゲルや他の子供と話をしないようにしたのだから無理もない。ミゲルに頼もう」
「ミゲルにですか?ミゲルとフアンを引き離したのはあなたです!」
「これ以上ミゲルを苦しめないためには災いをもたらすフアンと引き離すしかなかった。だが、今フアンは死にかけている。救えるのはミゲルしかいない」
「わかりました」
「そなたに任せた。私は礼拝堂にいる」
「ミゲル、寝ているところをすまないが、今からフアンを馬小屋まで連れて行って欲しい」
「ビエホーの代わりとなるロバが見つかったのですね」
「その通り!」
「わかりました。着替えた方がいいですか?」
「真夜中で人に会うこともないだろうから上着だけはおればいい」
病室に寝ているフアンを見た。かなり痩せている。
「フアン、ビエホーが戻って来たよ」
フアンは目を開けることもなく寝たままである。ニコラス先生がフアンを抱きかかえ、静かに病院から外に出た。月が道を照らして灯りがいらないほどであった。すぐに馬小屋に到着した。ビエホーがいた同じ場所に1頭のロバがいた。丁寧に世話をされていたためか、毛並みもいい。
「フアン、ビエホーが戻ってきたよ」
ニコラス先生に抱かれたままフアンはうっすらと目を開けた。手を伸ばしてロバの鬣に触れた。ロバはおとなしく触られている。フアンの目から涙が流れた。
「さあ、部屋に戻ろう」
ニコラス先生が声をかけた。
フアンはまた食事を食べられるようになり、ほとんどの時間を馬やロバの世話をして過ごすようになった。私はまたフアンや他の子供に会うことは禁じられ、部屋で1人で過ごすことが多くなった。ニコラス先生は特に熱心に私にヘブライ語を教えてくれた。そして私は14歳になった。
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