最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第二章 空中編

第二十話 スカイ闘技場での悲劇

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 一行はとても大きな建物の前にいた。外からでも歓声が聞こえる。

「ここが闘技場だ。日が出てる間はいつも戦いが行われている」
「闘技場……地上にはこんな建物無かったな」
「スカイは地上よりも戦闘狂ばっかりだからな。こんな悪趣味な建物、ここの人間にしか思いつけないであろう。さあ、中に入るぞ」
「悪趣味って、天界には闘技場は無いのか?」
「そもそも争いあったりしないからな。私がもし人間だったらと思うと恐ろしい」

 ニキスは扉を開け、受付へ向かった。

「コクリュウだ。観戦席四つ、空いてるか?」
「ええ、空いてますよ。コクリュウさんがここへ来るのは珍しいですね。戦いの熱さに惹かれましたか」
「全然。さぁラルドたち、ついてこい」

 一行は空いてる席へ向かった。
 観戦席に出ると、より歓声が大きく聞こえる。ある者は熱烈にファイターを応援し、ある者は常に雄叫びをあげている。

「ちっ、うるせえなあ」
「あ、あぁ……コクリュウさんだ!」

 それまで湧いていた会場は、静まりかえる。しかし、ファイターたちはそれも気にせず戦い続けている。

「んー、あ、ここ空いてるな。よいしょっと。さあ、みんなも座れ」

 一行は席へ座り、空の者たちの戦いを観戦し始めた。翼を持つ者は空を舞い、翼を持たない者は遠距離武器で足場から攻撃する。

「なんか、翼がはえたってだけで、そんなに変わらないんだな」
「そうだ。見るまでも無かったろう? さあ、とっとと帰るぞ」
「待てよ。もう少し見させてくれ」
「私は外で待ってる。好きなだけ見ていろ」

 ニキスは席を外し、外へ出ていった。その後も何人かの戦いを見るが、全員似たような戦法しかとらない。それなのに、会場は常に湧いている。

「ラルド君、そろそろ飽きたんじゃないか。今の君が苦労する相手なんかいないだろう」
「……そうですね。もう帰りましょうか」

 ラルドたちが席を立とうとすると、また別の戦いが始まった。
「さぁ、次はみなさんお待ちかね、地上人サンドバッグでございます!」
「な、なんだって……」
「ご覧ください! 今回の地上人は、まさにサンドバッグに最適、ちびっ子です!」

 会場に縛りつけられた地上人が運ばれてくる。観戦席に座っていた観客たちは全員戦いの場に降り、地上人を一人一発ずつ殴っていく。

「なんてことを……!」
「ラルド君、外へ出よう。このまま座っていたら、怪しまれるかもしれない」
「あの人はどうするんですか! このままじゃ死んでしまいますよ!」
「ニキス君になんとかしてもらえないか頼もう! 今はとにかくここから離れるんだ!」

 一行は急いで外へ出ていった。しかし、受付の女性が止めてくる

「お客さん、今ちょうど良いところですよ。なのに帰るんですか?」
「そうさせてもらう。俺たちはああいうのあんまり好きじゃない」
「えー、もったいないですよー」

 女性の制止を振り切り、一行は建物の外へ出た。

「ニキス、助けてくれ! 地上人の子供がボコボコにされてる!」
「ああ、それが始まったのか。助けられないこともないが、かなり難しいな」
「難しくなんかないだろう。飛来して、手に持つだけじゃないか」
「もし助けたら、今後指名手配されることになる。そうなったら困るのはお前だぞ。それに、一日で殺すほどではないさ。助けるのはトーナメントが終わってからでも遅くはない」
「お客さーん、もしかしてあなたたち、地上人なんですかー?」

 女性がラルドたちのいる方へ走ってくる。

「ニキス、一旦地上へ戻ろう。あいつ、絶対僕たちに何かしてくるぞ」
「了解。さあ、私の背中へ乗れ」

 ニキスは元の姿に戻り、一行を背中に乗せた。

「コクリュウさん、あなた、もしかして……」
「勘違いするな。こいつらは私の食料だ。決して仲間なんかじゃない」
「でも、普通、食料ごときを背中に乗せますかー?」
「良い食料だからな。それでは、さらばだ」

 ニキスは急ぎ目に飛んでいった。

「ははは、そうよね。よりによってコクリュウ様がそんなことになるわけないわよね。さーて、私も行こっと」

「ラルド、行き先はどこにする」
「サウス王国に行こう。ここからすぐ下にあるんだろう?」
「そうだな。今回もバレないように行くぞ」

 ニキスはサウスの門より少し遠いところに降りた。

「これだけ遠けりゃ見られてないだろう」
「そんなに飛んでるところ見られたくないのか?」
「人間にこき使われてるところを見られたくない。負けておいてこんなことを言うのもアレだが。では、明後日、また呼び出してくれ」
「うん。ニキス、ありがとう」

 ニキスはどこかへ飛んでいった。

「ラルド君、サウスに来たってことは、私に気をつかってくれたの?」
「はい、ジシャン様はまだ挨拶が出来てなかったってことなので」
「ありがとう。とりあえず私の家まで案内するわね」

 一行が門の前に着くと、ジシャンが門番の元へ向かった。

「ジシャン様! サフィア様捜索中とのことでしたが、見つかったのですか?」
「いえ、まだ見つかってないわ。中に入れてもらえるかしら」
「もちろんです。どうぞお通りください」

 門番が扉を開けたので、一行はサウスの中へと入っていった。

「ラルド君に気をつかってもらって申し訳ないけど、一旦私、変装させてもらうわね」

 ジシャンは呪文で一般人に姿を変えた。

「え、どうしてですか?」
「今私がそのままここに入ったら、どんちゃん騒ぎになっちゃうからね。あなたたちに迷惑をかけちゃうかもしれないから、化けさせてもらったわ。さあ、私の家に行きましょ」

 ジシャンはスキップしながら進んでいく。その後をラルドたちは追いかける。

「ふぅ。着いたわね。ここが私の家よ」

 ジシャンの家はレイフの家と違い普通の家だった。

「四人いるとちょっと狭いかもしれないけれど、どうぞ入って」

 一行はジシャンの家に入った。ジシャンは呪文で明かりをつける。

「まあ、けほっけほっ。しばらく帰ってないから、そこら中ホコリだらけね。一回丸洗いしちゃうわ」

 ジシャンは呪文で家中を綺麗にした。ホコリにまみれていた部屋は瞬く間に綺麗な一室になった。

「どうかしら? これで少しはまともになったと思うけれど」
「ああ。良いな。ボロボロだったソファもピッカピカだ」
「食べ物を持ってくるから、少し待っててね」

 ジシャンは奥の部屋へ入っていった。

「いやーしかし、トーナメント、優勝できっかな」
「きっと俺たちならやれるさ。な、ラルド君」
「空中人もニキスと同じ方法でいけば、倒せそうですしね。頑張ります」
「ははは。ラルド君がしっかり自信を持っててくれて嬉しいぞ」

 男たちが談笑していると、ジシャンが食べ物を持ってきた。

「はい、サウスウオよ。生で食べられるからね」

 一行はサウスウオを食べ終えると、レイフとウォリアは二階に眠りに行った。ラルドとジシャンは一階で寝ることにした。

「ラルド君、明後日は頑張ろうね。私たちも出せる力は全て出すわ」
「ありがとうございます。僕も全力を尽くします」
「それじゃあ、おやすみなさい」

 一行は全員眠りについた。

(うぅーん、あ、夢だ)

 ラルドは一日ぶりに夢の世界へやってきた。今度は空が舞台のようだ。

(あ、姉さんが竜に乗ってる。これから天界に行くのかな)

 ラルドは空を泳ぎ、サフィアの後を追う。しかし、光の壁に阻まれてしまった。

(光よ、去れ)

 しかし、光はずっと出たままだ。ラルドが困っていると、ニキスが飛んできた。

「おや、夢の中で会うとはな」
(ニキス! さっき聞きそびれちゃったけど、天界に姉さんはいたか?)
「少なくとも私が天界へ戻った今日はいたな。お前の活躍、喜んでたぞ」
(そうか。よーし。トーナメントで優勝して、姉さんを迎えに行くぞ)
「ところで、今日ボコボコにされてた地上人の件だが、どうやら頑丈で今日は死ななかったようだ。私が密かに回復呪文と更に頑丈になる呪文をかけておいたから、安心して明後日を待つんだ」
(わかった。けど、どうやったら助け出せるんだ?)
「トーナメントに優勝すれば、地上人を解放することを王に頼めば良いだろう」
(姉さんはそれを頼まなかったのか?)
「ああ。頼んでないようだな。あの惨状を見てなかったから、わからなかったんだろうな」
(それなら、絶対に優勝しなけりゃならないな)
「私も出来る限りサポートしよう。では、さらばだ」

 ニキスは光の壁の中へ消えていった。
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