最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第三.五章 地下探し編

第五十六話 レイフの一週間

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 病院で別れたサフィア捜索会。そのうちの一人レイフはベッサを回っていた。とりあえず日が暮れそうだったので、レイフは次の日から行動することにした。ホースに乗っていくウォリアとジシャンを連れて、家に帰った。

「しかし、日が落ちてきたな……二人とも、太陽が出てる間にそれぞれの場所にたどり着けるのか?」
「俺はそこまで遠くないから大丈夫だ」
「私は結界でどうにかするわ」
「そうか。もし危なくなったら迷わず村とかに逃げ込むんだぞ」

 ウォリアとジシャンはうなずいた。
 それから少しして、夕日が地面をオレンジ色に染める中、レイフの家の裏庭にたどり着いた。ホースたちは立ち上がって、主人を迎えた。

「俺は確かこのホースに乗ってたな。俺が上に乗っても良いようにって、ラルドがゴツいのをテイムしてきてくれたんだよな」
「私はー……えっと、どっちだったかしら……」

 ジシャンが迷っていると、一頭のホースがジシャンの前まで歩いてきた。

「まあ。自分が乗せていた人のことを覚えているのね。よしよし」
「ヒヒーン!」
「それじゃあ二人とも、また一週間後な」
「ああ。また会おう」
「ごきげんよう」

 二人はホースに乗り、そのまま自分たちが行くべき場所へ向かった。二人を見送ったレイフは、日が沈んできてるため、とりあえず明日から行動することにした。今日の残りの時間は、カタラとザメとの戦闘で疲れた身体を癒すことに専念する。
 レイフは裏庭からそのまま家の中に入った。家の中に入ると、遠くから鈴の音が聞こえた。その音が徐々に大きくなる。レイフは察して、かがんだ。

「ご主人様ー! お久しぶりですー!」
「ごめんなぁキャイ。一匹でずっとお留守番させて」
「いいえ、気にしてないですよ。むしろ今帰ってきたのを不思議に思っているところです。サフィアが見つかったんですか?」
「残念だが、そうじゃない。これから一週間、サフィアがいるであろう地下世界に行くために人探しをするんだ。俺はこの国を回ることになった。だから久しぶりに帰ってきたんだ。そうだキャイ、お前は地下世界について何か知ってないか? 物知りなお前なら、知ってそうな気がするぞ」
「ちかせかい……ですか? ごめんなさい。私、それがなんなのかわかりません」
「いいや、謝らなくて良いんだ。知ってる奴の方が珍しいだろうし。それより、今日の晩ご飯、一緒に食べるか?」
「せっかくだし、そうしましょう!」

 レイフは久々にキャイと喋りながら食事をした。明日いち早く行動するため、レイフはいつもより早めに寝る準備を始めた。キャイも寝室に赴き、一緒に寝ることにした。そして、翌日──

「じゃあ、また六日後な。ちゃんとお利口さんにお留守番してるんだぞ」
「はい、ご主人様。この家にはネズミ一匹たりとも入れません」

 レイフは家から出ると、まずは図書館を利用することにした。というより、ほとんどの時間を図書館で過ごすつもりのようだ。

(酒場に行っても良いかもしれんが、下手に地下世界のことを広めればオークたちの仕事を増やしかねない。ここは大人しく本だけを漁ることにしよう。六日かけても全部の本は読み切れないだろうしな)
「待てよ」

 レイフが家の外で色々考えながら歩いていると、カタラたちに遭遇した。

(ゲッ、マズい。今の声、聞こえてなかったよな……?)
「レイフ、ここで昨日の決着をつけようぜ。中に他の奴らもいるんだろう?」
「今ちょっと用事してていない。勝負はお預けだ」
「ホントかな? ザメ、急いでアレを」
「……どうやら本当みたいね。レイフの心の声は何も言ってないわ」
「ならば、力ずくで試してやる」

 レイフの家の扉に近づくカタラ。その肩を掴んで、レイフが止める。

「おいおい、泥棒みたいなことはやめんか」
「やっぱ入られたら困ることがあるんだな。だから止めるんだろ」
「よほど俺の言葉が信用ならんようだな」
「当たり前だ。先に俺たちの友達を傷つけたのはお前だからな」

 カタラはレイフの手を剥がし、家の扉を開こうとした。しかしその瞬間、内側から扉が開けられた。扉を開けたのは、キャイだった。

「なんだ? この猫」
「シャー! この家に侵入しようとする不届き者にはお仕置き!」

 キャイは目線をカタラに合わせ、強く睨みつける。すると、カタラは怯え始め、後ずさった。

「ひ、ひぃぃ……ちっ、しょうがない。今度はこの猫への対処法を考えて忍び込んでやる」
「宣戦布告とは良い度胸ね。でも、あなたは私に対処することは出来ない」
「ちくしょう……」
「さあ、ホーネ、ハッチ、この二人を止めておいてくれ。後をつけられては警戒心を常に最大にせねばならん。それで体力を奪われてたらバカみたいだ」

 ホーネとハッチは言われるがままにカタラの動きを止めた。

「お、おい! 何すんだよ!」
「カタラ、もうレイフを敵視するのはやめないか。こんなことで争っていてもしょうがない」
「いちいちボロボロになったお前を病院に運ぶこっちの身にもなってみろ。大変なんだぞ」
「そんなこと言ったって、こいつがラルドを傷つけたことに変わりはない。ラルドが許しても、俺が許さねぇ」
「お前のその行動が、ラルド君を困らせるとしても、か?」
「え……?」

 レイフはカタラのそばまで行き、もう一度話し始めた。

「良いか? お前が病室のベッドの上で寝てたとき、ラルドはずっとお前の顔を見ていたんだぞ。お前が強くなって俺に挑んだ後、彼は『人ってなんのために強くあろうとするのでしょうか』と言っていた。お前はラルド君を助けているつもりかもしれないが、その想いは残念ながらラルド君に届いていない」
「ラルドは……ラルドは、弱いんだ。俺が守ってやらねぇといけないんだ。たとえその想いが届かないとしても、俺はラルドを守り続ける」
「はっ、旅に出てすぐのラルド君にお前らがしたこと、あれが守ることだとでも言うのか? つけあがるなよ。本当にラルド君のことを想うなら、ツカイ村でひっそりと生きてるんだな」

 レイフは言いたいことを全部言ったのか、無言で振り返り、城の図書館へ向けて歩き始めた。

「待て! 待て!」

 カタラは、視界からレイフが消えるまで、いつまでも叫び続けていた。
 カタラの視界から外れたレイフは、城へ淡々と進んでいた。何度も振り返り、カタラたちが追ってきてないかを確認する。

(まったく……朝っぱらからあんなに叫んだらどうなるか、わかってないんだな。ラルド君は、あんなのと小さい頃からずっといたのか)

 レイフは黙って早歩きし、城へ急いだ。
 城門までたどり着いたレイフは、門番に門を開けてもらい、城の中へ入った。そして、玉座の間まで行き、膝をついた。

「おおおレイフ。今回は何用じゃ」
「王、今回も図書館を使わせていただきたく、参りました。探している物は、言えませんが」
「絶対に他人に喋らないから教えてほしいと言ったら、教えてくれるか?」
「……こればっかりは無理です。諦めてください」
「そうか。まあ、魔王を倒してくれたお主を拒む理由はない。好きなだけ図書館を使うが良い」
「ありがとうございます」

 レイフは立ち上がり、一礼してから玉座の間を出た。図書館に入り、早速地下世界についての情報を探す。

(えーっと、地下世界を知ってる奴を見つけたいから、賢人とかの著書を読めば良いかな)

 レイフは賢人コーナーに行き、一つ一つの本を隅から隅まで読んだ。千年前から現代まで、あらゆる賢人の本を読んだ。しかし、たった一日では読み切れない。十冊読んだだけで日は沈んだ。

「レイフ様、そろそろ閉館時間なのですが……」
「ここって、寝泊まり出来ますか?」
「え? 出来ないことはないですが、鍵は閉められますよ。その前に水を持ってくることは可能ですが」
「飯はなし……ってことですか。それでも良いからしばらくここにいさせてください」
「レイフ様、そこまでして本を読みたいのですか?」
「今の俺にはそれしかありません。今日を抜いてあと五日、ここで寝泊まりします」
「そうですか。では、水を持ってきますね」
「お願いします」

 レイフは水を入れたコップを片手に、寝る間も惜しんで本を読み続けた。しかし、閉館しているので、明かりは自分の発した火の呪文で代替している。夜が深まってきて、流石のレイフも睡眠欲に勝てなくなってきた。

(今日はこれを読んだら終わりにしよう。まだ五日もあるんだ。今日くらい良いだろう)

 レイフは火の呪文を消し、本を閉じ、コップを机の中央まで押してそのまま突っ伏した。
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