蕩かして、愛して、貫いて

うしお

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01、届いた招待状

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「……まいったな」

今日は、歳神様としがみさまの交代を祝う宴が開かれる日だ。
そんな良き日に、思わず頭を抱えてしまったのは、俺のもとに届いた一通の招待状のせいだった。

歳神様とは、干支神と呼ばれる十二柱の神々の総称で、俺たちの暮らす下界を、一年間ずつ見守ってくださる貴い神様たちのことだ。
一年に一度、十二柱いる干支神様のうちの一柱が、天上界に続くと言われている不思議な大鳥居『異都門いづも』をくぐってやってくる。
異都門は、神様がお通りになる時以外は、ただの大きな鳥居でしかなく、普段は干支神様たちをお祀りしている神社の入口に建っているだけなのだが、大晦日と元日の間にある刻の間ときのあわいにのみ、眷属である我々の前にも開かれる異界の門のことを指す。
この日、この刻だけは、下界の者である我々眷属も干支神様がお過ごしになる神聖な神殿の中に入ることを許され、宴の準備を行うことが許されているのだ。
大晦日の日の入り後から元日の日の出前までの僅かな時間だが、下界で過ごされる干支神様に関わる眷属たちは一年もの間、この日のために宴の準備をしながら過ごしているといっても過言ではない。
何故なら、干支神様の眷属たちは、自分の仕えている干支神様こそが一番だと思っているので、それを内外に示すことができる宴に情熱を注ぐことこそ使命であると感じているからだ。
十二柱の間に優劣はなく、同じだけの神格を備えておられるとされているが、やはり人というものはどんなものにでも優劣をつけたくなる生き物なのか、どれだけ禁じられていても、張り合ってしまうものなのである。
干支神様は、どの神様も十二年に一度、わずか一年間しか下界にはられないが、多くの民から信仰されており、深く愛されていることは周知の事実なのだけれど。
とにかく、今夜はとても忙しい。
あまりにも忙し過ぎて、他の干支神よその眷属である俺にまで手を借りているのだから。

「俺が忙しいことは、あいつも知っているはずのことなのだけどなぁ」

それなのに、わざわざ招待状を寄越してきた友人の顔を思い浮かべて苦笑する。
俺たちの事情は知っているはずなのに、こんなものを送ってくるということは、いろいろと気を遣ってくれたのだろう。
もちろん、自分でもいずれはどうにかしなければならないとは思っている。
だが、ずいぶんと長い間、すべては相手のあることだから、と先送りにし続けてきた結果でもあるので、そう簡単にどうにかなるものでもない。

「とはいえ、これを断れるわけもない。仕方がない。もっと無茶をするしかないだろうな」
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