蕩かして、愛して、貫いて

うしお

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02、送迎の宴

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一年の終わりに盛大な宴会を開き、一年間見守ってくださっていた干支神様を盛大にお見送りして、代わりに来年の干支神様をお迎えする。
それが、この宴が『歳送りの宴』とも『歳迎えの宴』と呼ばれる『送迎の宴』の由縁である。
今年は、【辰神たつがみ】様を送り出し、新たな歳神様である【巳神ししん】様をお迎えするために宴を開く。
今夜の宴は、辰神様に仕える土の宮の眷属たちが中心となって準備をしているが、もちろん、新たな歳神様である巳神様を迎えるとあって、巳神様に仕える火の宮の眷属たちも張り切っている。
土の宮と火の宮の眷属たちは、相性の良い相生そうしょうの関係だからそれほど険悪なムードにはならず、協力しあえているようだ。
本当なら、俺はこの宴の準備に関わらなくていいはずなのだが、友人からの懇願に負けて手伝わされていた。
俺は水の気みずのけが多い亥神いのかみ様の眷属だから、土の気が多い辰神様の眷属たちは苦手だし、火の気が多い巳神様の眷属たちとは、相性が最悪と言ってもいい相克そうこくの関係とあって、一処に集まるのはあまり具合がよろしくないのだ。
正直なところ、水の宮の眷属である俺にとって、この宴は敵地と言ってもいいくらいの緊張感をはらむ場所なのである。
なんだかんだ気疲れする環境なせいもあって、正直、もうくたくただった。

「いや、本当に助かったよ。末席で悪いが、宴にも参加していってくれ」

にこにこと笑いながら俺の肩を叩く河津かわずを恨めしげに睨めば、「あとでちゃんと案内するから」と囁かれた。

「……忘れるなよ」

声高に返事をするわけにもいかず、低く不快感をこめて返せば、河津はにんまりと口の端をつり上げて嗤う。

「わかってるって。先方様も、お待ちかねだからな。宴を早めに切り上げて、御簾の向こうへ籠もるつもりでいらっしゃる。十二年ぶりの逢瀬か。ゆっくり楽しめ。誰にも邪魔はさせんから」

そう言われてしまえば、機嫌を直さぬわけにもいかない。
差し出された酒を受け取り、ぐびりと飲み干す。
思い出してしまえば、久しぶりの情欲に身を焦がされそうなほどに炙られる。

「おいおい、さすがにその顔はなんとかしてくれ。案内する前に、咎められたら助けられないぞ」

「わかっている」

「……まったく、お前もずいぶんな方に想いを寄せたものだな」

「お前も似たようなものだろう」

「まあ、似たようなものではあるな。だが、お前ほどではないからな。さて、残りはあと二刻ほどか。では、またあとでな」

「……ああ」

久しぶりに、愛しいあの方に逢えるのだ。
それさえ確かなら、俺は何時間でも待っていられる。

確かに、そう思っていたはずなのに。
一目見てしまえば、思う通りになどいくはずもなかった。
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