その首輪は誰のもの?

うしお

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その首輪は誰のもの?

04、鍛錬の鬼

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「サボってない! サボってないからっ! ほんっとうに、魔術で攻撃するのはカンベンしてよーっ!」

「嘘をつけ! 本気で魔術師とやるなら、詠唱中を狙うのが基本だろうが! それをしないだけでも、サボってるとしか言えんだろうっ!」

「そ、そんなっ、これは鍛錬なんだよ! 実戦じゃな、いっ、あっ、あぶなっ! いま、かすった! ねぇっ、スヴェンさんっ、いま頭の上をかすったよ! ねぇっ、やめて! オレがハゲたらどうするの!」

「当たり前のことをぬかすな、ハビエルっ。お前がちゃんと対処すれば、ハゲないだろ! そら、次が行くぞ!」

基本的に、鍛錬は二人一組で行うことになっている。
今年で勤続十五年となるスヴェンの相棒は、三年前に騎士団に入団してきたハビエルだ。
魔術と剣の二刀流であるスヴェンに対し、ハビエルといえば長剣よりも短剣に適正があり、偵察や隠密行動が得意という騎士というには少し不穏な技能の持ち主である。
今年から組むことになったのは、騎士団の団長であるエディンの采配によるものだが、どちらかと言えば力押しになりがちにスヴェンにとって、苦手な分野を埋めてくれる頼りになる相棒でもあった。
騎士団の鎧を着ていなければ、盗賊か暗殺者に間違われてもおかしくはない技量の持ち主でもある。

「スヴェンさんのオーガ鬼ぃ!」

「バカを言うな! 脳筋オーガは、魔術を使わんだろ!」

駆け出したスヴェンが、低い位置で長剣を振るう。
それは厄介なハビエルの機動力を落とすため、足元を狙った攻撃だったのだが、ハビエルはそれを軽々と飛び越えて避けた。
避けると同時に、スヴェンの左側に回り込んだハビエルは、そのままの勢いで二本の短剣を器用に操り、スヴェンの首元を狙ってくる。
どうやら、吹っ切れたらしい。

「わかってるよ! そんな、ことっ!」

狙いどころは悪くない、とスヴェンはますます笑顔に獰猛さを滲ませ、長剣を持った右腕を鞭のようにしならせる。
長剣と短剣がぶつかり合い甲高い音を立てるのに、ほんの少しだけ顔をしかめたが、そのまま振り切った。
いまの一撃で短剣を弾き飛ばすつもりだったが、それは叶わずハビエルは自分から背後に飛んでスヴェンと距離を取る。
もちろん、スヴェンにはハビエルを逃がすという選択肢はない。
すぐさまそれを追いかけ、長剣を振るえば、ハビエルは二本の短剣でそれをいなした。

「いい反応だ」

スヴェンは長剣を振るう度に、唇の端が高く吊り上がっていくのを自覚していた。
鍛錬とはいえ、歯ごたえのない相手と組むのは疲れるだけだし、何よりも退屈だ。
それに、スヴェンは手加減というものが心底苦手なのだ。
やるなら全力でやりたい。
それが、鍛錬のための模擬戦であっても。
ハビエルと組んでから、スヴェンは手加減の必要がなくなった。
そのおかげで、退屈とも無縁になったのだから、笑いたくもなると言うものだ。
スヴェンが高い位置から振り下ろすように長剣を振るえば、ハビエルが二本の短剣を交差させてそれを受けた。
ふたりが振り回しているのは模擬剣だが、それでも鋼の棒である以上、当たれば怪我をする可能性がある。

「うっ、わ、スヴェンさん、オレのこと、殺す気っ!?」

ハビエルの交差した短剣を長剣で押し込むように攻めながら、膝をついて必死に耐えるハビエルの顔を上から見下ろす。

「お前は、この程度で死ぬようなタマじゃないだろ。甘ったれたことをぬかすな」

「ぅううぅっ、信頼してもらえるのは嬉しいけど、つらすぎるーー!」

ハビエルの嘆きは、スヴェンたちを遠巻きに見ていた同僚や通行人から微笑みとともに見送られた。
本日の業務も、滞りなく進行している。

ルペースの街は、今日もしっかり平和だった。
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