身代わりの花は包愛に満たされる

天宮叶

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僕なんか……

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屋敷に来て二日目の朝。

与えられた部屋で一人で着替えをしていると、デューク様が入ってきた。シャツを羽織っただけの状態だったため、慌ててしまう。

「悪いっ」

デューク様も慌てて後ろを向いてくれる。

「い、いえ……大丈夫です」

顔が熱い。羞恥心と高鳴る鼓動で唇を軽く噛む。

服を着替え終えると、デューク様に声をかける。ずっと後ろを向いてくれていたため、申し訳ない。

「自分で身支度しているのか?使用人を連れてきていると思っていた」

「その……」

僕には専用の使用人は居なかった。

両親は、僕に使用人を充てがうよりも、オリビアの世話をさせたかったのだと思う。そのせいか、身支度を自分ですることが当たり前になっていた。

ときにはオリビアの身支度を手伝ってあげていたこともある。それが当たり前だったから、今日もいつも通り自分で身支度をしていたんだ。

「慣れているので」

「……なんとなく思ってたけどお前……」

顎に手を当てて考える素振りをするデューク様。その姿を見つめながら、首を傾げる。おかしなことを言ってしまっただろうか。

不安になっていると、顔を上げたデューク様が僕へと視線を向けてきた。

「家の連中は男ばかりだし、お前の世話をさせるわけにはいかない。てか、俺がさせたくない。だから使用人を雇う」

「僕なんかのためにそんな……申し訳ないです」

「使用人がいないほうが問題だ。たくっ、俺の準備が足りなかった。部屋も地味だし、アルビーには不便をかける。もう少し我慢してくれ」

「そんなこと……」

本当に充分だ。

広い部屋に、ベッドとクローゼット。化粧台まである。それだけでも充分過ぎるのに、これ以上負担をかけられない。

「僕、このままでも充分です」

絞り出すように伝える。喉の奥が狭くなるような感覚がした。

「お前、ラミレス男爵家に居た頃どんな生活してたんだ?俺の知ってる貴族ってのはもっと傲慢で、我儘で、華やかな生活をしてるんだが」

「ラミレス男爵家は元々商家ですから、普通の貴族とは違うのかもしれません。それに、弟は身体が弱くて、治療費が高額なため贅沢はできなかったんです」

嘘と本当を織り交ぜて話す。治療費は確かに高額だったけれど、両親はオリビアの身の回りのことには一切手を抜かなかった。それに商家である歴史を恥じているお父様は、誰よりも貴族らしくあろうとする所がある。そのためデューク様の言う、華やかさを惜しむことはなかった。

「だからサイズの合わない服を着ているのか?クローゼットにお前の服は用意してある。好きなものを着たらいい。気に入らなかったり、足りないなら買ってやる。金は有り余るくらいあるからな」

お母様にもらった服を着ているけれど、もらったのは随分前だ。丈が合わないのもしかたない。けれどそれをデューク様に指摘されたことが、すごく恥ずかしかった。

泣きたい気持ちに苛まれる。

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