無能令嬢だと見離された私ですが、美貌の公爵様がなぜか放っておいてくれません

天宮叶

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魔力なしの理由②

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フェリクスがルーナから身体を話し、一度だけ苦笑いをこぼす。それから胸元に片手を当てて、メリーベルに向かって礼をした。

「またお目にかかれて光栄です。可愛らしい精霊様」

「にゃ!」

返事をするように、メリーベルが一度だけ長い尻尾を揺らす。

「そういえばルーナと精霊様の出会いを聞いていなかったね」

「メリーベルと呼んであげてください。この子とは十歳くらいの頃に出会ったんです。魔力測定の儀式を行う数ヶ月前のことでした」

「儀式の前に?」

「はい。弱りきって倒れていたところを見つけて部屋にこっそり連れ帰ったんです。本当はお父様たちに飼っていいか尋ねる予定でした。けれど、魔力測定の儀式で魔力なしだと判断されたためこっそり匿うことに……。この子には苦労ばかりかけてしまったと思います」

「……なるほど。どうりで……」

「どうかされたのですか?」

なにかを確信したようなフェリクスの言葉に、ルーナは首を傾げた。なにか変なことを言ってしまったのだろうかと、不安にもなってくる。

「エルシー伯爵家はたしかに魔法使いの名門だ。けれど、その血筋は少しずつ衰えてきているともいえる。原因は精霊と対話することのできる人間が居なくなってしまったからだろう」

「精霊と対話ですか?」

「推測だけれど、エルシー伯爵家の血筋には一定数ルーナのように精霊と対話ができる人物が居たのかもしれない。精霊は人の魔力を好むと言われている。魔力量の多いエルシー伯爵家ほ血族が、精霊に魔力を与える代わりに力を貸してもらっていたとするなら……」

「エルシー伯爵家が魔法使いの名門と呼ばれていたのは精霊のおかげ?」

「そういうことになるのかもしれない。けれど、ルーナと出会ったメリーベルは弱りきっていた。魔力を貰えず力尽きかけていたのかもしれない。そんなとき魔力の潤沢な君が現れ救い出してくれたとする」

精霊は魔力を好む。

ルーナはメリーベルへと視線を向けた。くわぁ~っと大欠伸をしているメリーベルは、一見ただの猫だ。

「私の魔力がメリーベルを助けたということ?」

「にゃーん」

頬が擦り寄せられる。それはまさに疑問の答えと同義だ。

もしも、弱りきっていたメリーベルが幼かったルーナの魔力を、ほぼ吸い取ってしまったならどうなるだろうか?

「魔力測定の儀式で魔力なしだと判定されたのは……魔力枯渇を起こしていたから?」

「そういうことだろうね。魔力が枯渇すると通常は体調を崩し、すぐに気づくことができる。けれどメリーベルが恩返しに魔法で保護していたとするなら状況は変わってくるだろう」

困惑して言葉が見つからない。

魔力なしだと判定されたことを、メリーベルのせいだとも思えないからだ。心を落ち着かせるように、メリーベルの毛を撫でる。

「メリーベル、貴方は本当に精霊なのね」

「くるる」

喉の鳴る音が耳に届く。ルーナはすっきりとした気持ちで笑みを浮かべた。

魔力なしというレッテルや、過酷な人生に絶望しかけていた。けれど、そのおかげでメリーベルが助かったのだ。それなら、いままで過ごしてきた時間には大切な意味があったのだ。

 

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