モブに転生した俺。推しキャラのハピエンを拝むまで夜も眠れない

天宮叶

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推しが押せ押せなんですが!?

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寝室へと戻った二人は、カウチソファーに並んで腰掛けた。ネイトの双眸が、口を一文字に引き結んでいるノエルの顔を映し出している。

いざ話そうと思うと、上手く言葉が出てこない。どこから話せばいいのかもわからなかった。

神様から与えられたギフトのことや、セイントナイトのこと……。

話してしまえば後戻りはできない。


「ゆっくりでいい。すべてを話さなくとも、時間をかけて一つずつ教えてくれ。私とノエルは夫夫なのだから、時間は充分にある」

「っ、俺……信じてもらえないかもしれないけど……」


次の言葉が出てこず、口を開閉させる。そんなノエルの言葉を、ネイトは黙ったまま待ってくれていた。


「俺、っ、前世の記憶があるんだっ」

「前世?」

「うん。前世で住んでいた場所にはここみたいに魔法は存在しないんだけど、すごく発展している世界だったんだ。信じてもらえないかもしれないけど、俺はその世界で何度もネイトやエアリスと出会っているんだ」


こんなことを言ってもすぐには信じてもらえないだろう。妄想癖のある人間だと思われても仕方ない。それでも隠し事を続けて、ネイトを傷つけてしまうことは避けたかった。


「それは本当に私なのか?」


確かにゲームの世界と現実のネイトが同一人物だと断言はできない。


「はっきりとネイトだっては言えないんだ。でもネイトがエアリスのことを好きになることや、エアリスがフェイブルと結婚することは知っていた。ネイト達が登場する物語があって、俺はその物語を眺めていた。ずっと推しの──ネイトの幸せを願っていたんだよ。そうやって過ごしていたら、事故にあって死んじゃったんだ」

「……それでこの世界に転生してきたのか?」

「転生のこと知ってるの?」


驚いてネイトの方へと視線を向ける。彼の瞳にノエルに対しての疑いは一切感じなかった。


「私も聞いたことがあるだけだがな。稀に輪廻転生に巻き込まれた魂がこの世界に定着することがあるらしい。本当に稀な例のため神の気まぐれと言われて迷信化されている」

「神の気まぐれ……」

「転生者は決まって特別な能力を扱うらしい。ノエルが光の魔力を扱えるのはその影響かもしれないな」


贈り物と共にセイントナイトの世界に転生してきたノエルには、神様の気まぐれと言われて納得できる部分が多い。


「それで、お前の世界の私は最後にはどうなってしまうんだ?」


手を取られ、確信を突くような質問をされる。答えられることなら教えてあげたかった。けれど、セイントナイト2をプレイしたことのないノエルには、明確な答えを用意することができない。


「ごめん……。それはわからなくて。でもネイトは俺とは違う他の誰かと……」


喉が詰まるような感覚がする。この先を言うことが怖くて、微かに手が震えていた。ネイトの隣に立つ『誰か』の存在を認めたくはない。

けれどいつか、現実を受け止めなければならない日が来るのだろう。どれだけネイトのことを大好きでも、ストーリーの進行を止めることは難しい。


「他の誰かだと?」


不機嫌さを滲ませた声音が飛んできて肩を跳ねさせる。久しぶりにネイトが怒っているところを見た気がした。


「なんで怒ってるの?」

「……鈍いと言われたことはないか?」


質問に質問で返されて戸惑う。鈍いとはどういう意味だろうか?

目を丸くさせているノエルに向かって、ネイトは一度だけため息を吐き出した。それから覆い被さるようにノエルをソファーへと押し倒してくる。


「わっ!ネイトっ!?」

「他人など必要ない」


吐き出すように発せられた言葉に息を呑む。暴れるのを止めて、オッドアイを見返す。


(あ……来る……)


直感で思ったときにはすでに、薔薇園のときのようにキスをされていた。舌先で上唇を舐められる。開いた隙間から侵入してきた肉厚の舌が、ノエルの口内を激しく貪ってくる。唾液が跳ねて、卑猥な水音が二人の間で響く。

ノエルはネイトから与えられる口付けが、抑えきれないほどに好きだ。

愛おしさと物悲しさを含ませたような心地にさせられる。触れると冷たいはずのネイトの体温が、肌を焦げ付かせてしまうほどに温かく感じて切ない。


「っ、はぁ……んっ」


息継ぎの合間に視線を交わせ、口付けと同時にお互いの表情を確認する。ネイトがなにを考えているのか知りたい。

探り当てようとしても難しすぎて、ノエルはいつも頭の中を真っ白にさせてしまう。

「私が目も当てられないほどに一途だとノエルは知っているはずだ」

「んっ、ネイトっ……これ以上はっ」

「このまま身体にわからせてやってもいいかもしれないな」


滑らかな指先が太ももを撫でてくる。

くすぐったさと、お腹の奥を刺激されるような痺れを感じて慌ててしまう。


「……やだ……ネイト、俺、だめだよ……」


潤む視界のまま、チグハグに言葉を伝える。手を止めてくれたネイトが、ノエルを抱き起こしてくれた。

首元に顔を寄せられて、心臓が更に跳ねる。


「その鈍感さがいつまで続くのか見ものだな。いつまでも待ってやる。生憎、待つことには慣れているんだ」

「ぁ……んんっ!?」


ネイトが首元に顔を埋めてくる。続いて乱れて露わになった首筋を甘噛みされてしまう。微かな痛みと痺れが脳まで駆け上がってくる。

どれだけ否定してもノエルは期待することを止められない。

鈍感なのではなく、フリをしているだけだ。それをきっとネイトもわかっている。

ジュッと肌を吸われて、チクリとした痛みに眉を寄せた。

顔を離したネイトはどこか満足そうな表情を浮かべている。その表情を見つめながら、ざわつく胸元を手のひらが白くなるほどに握りしめた。


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