16 / 53
推しともっと話していたい
しおりを挟む
ホワイトシャツにブラウンのショートジャケットと、スラックスに編み上げブーツ。フォーマルな衣装を身に纏ったノエルは、緊張して表情を強張らせていた。隣には、同じく紺のフォーマルスーツを身に纏ったネイトが立っている。
エアリスの誕生日パーティーには、多くの貴族が参加していた。高位貴族も多く、初めての社交界にノエルは不安を募らせている。
けれどネイトの気持ちを思うと、緊張ばかりもしていられない。
「ネイト、来てくれたんだね。ノエルも久しぶり」
二人に気がついたエアリスが近づいてくる。隣にはフェイブル。そして、攻略キャラであるザイン、フィル、オーガストス、アギィも居た。
(ひええええ!ここは顔面国宝の宝庫やあああ!!)
ゲーム内で見ていた攻略キャラ達の登場に、ノエルの緊張は吹っ飛び興奮に変わってしまう。手腕に長け商人ながら爵位を得た、豪商のザイン・ハルバード。宰相候補であり、カリスマ性溢れる銀縁眼鏡のフィル・ジェイ。騎士団長候補として名も上がるほどの剣の才能を持つ聖騎士副団長オーガストス・アーヴェン。若い見た目ながら実は一番の年長である謎の多い魔術協会長のアギィ・シルバー。
攻略キャラ達五人に囲まれて笑顔を浮かべているエアリスは、正に主人公そのものだ。
「おめでとうエアリス」
一歩前に出たネイトが、口元に笑みを浮かべながらお祝いの言葉を伝える。エアリスが嬉しそうに花のような笑みを浮かべた。
その笑顔を見ていると、たちまち春が来たような気分になる。攻略キャラ達も、穏やかに微笑んでいて良い雰囲気だ。
ネイトの様子が気になり、横目で盗み見る。いつもとは違い、ネイトの表情は柔らかい。それに少しだけ安堵した。
「来てくれて嬉しい。今日は楽しんでいってね!」
「あぁ、ありがとう」
簡素な返事だけをして、ネイトはエアリスに背を向けた。もう少し話しても良さそうだと思うのに、ネイトはその場を立ち去る気満々だ。
意図的に避けようとしていることはわかっている。それに攻略キャラ達と共にいるエアリスを見て、思うこともあるのだろう。
「ノエル、ネイトのことお願いね」
「うん。エアリス本当におめでとう」
戸惑うノエルの背を、エアリスが押してくれた。去ろうとするネイトの手を掴み、一緒にその場を立ち去る。
ほんのりと汗ばんでいるネイト。緊張していたのだとわかり、ノエルははしゃいでいた自分が恥ずかしくなった。
「ネイト、料理がすごく美味しそうだよ。俺がネイトの分も取ってこようか?」
話しかけると、ようやく立ち止まってくれる。
「……いや、一緒に居てくれないか」
「っ、う、うん!もちろん」
弱々しくお願いされて、胸がギュッと鷲掴みされた感覚がした。普段は一人でなんでもこなせる完璧な人が、エアリスのことになると途端幼子のように不安そうな表情を浮かべる。
そのギャップが可愛らしくも思える。なのに、ほんの少しだけエアリスが羨ましくもあった。胸の奥にモヤがかかったみたいだ。
ノエルにとって、ネイトはただの推しではなくなってきている。その事実を受け入れることが、怖い。
もしも気持ちを知られてしまったら、ネイトはノエルのことを遠ざけてしまうのではないだろうか。
「どうかしたのか?」
「えっ!?ううん。なにもないよ。それより俺、社交界は初めてなんだ。だから緊張しちゃってて。ネイトが色々教えてくれないかな?」
「フッ、仕方ないやつだな」
ようやく笑みを浮かべてくれたネイト。その表情を見て、少しだけ安堵した。ネイトにはずっと笑っていてほしい。
エアリスへの想いは消えなくても、いつか大切な思い出として消化できる日が来たらいい。ネイトにとってエアリスは永遠だから。
ビュッフェ形式の食事をつまみながら、ネイトと取り留めのない会話をする。こんな風に隣に立ち、話をすることが出来ている事自体が奇跡のようだ。
むず痒いような、嬉しい心地になったノエルは思わず笑みを零す。それに疑問を感じたのか、ネイトが左右色の違う瞳を向けてきた。
「俺、こうやってネイトと話す時間が凄く好きだな」
「……物好きだな」
プイッと顔を背けたネイト。ぶっきらぼうな返しなのに、冷たくは感じない。ネイトの可愛らしい反応に、ノエルはたまらなくなって吹き出すように満開の笑みを浮かべた。
エアリスの誕生日パーティーには、多くの貴族が参加していた。高位貴族も多く、初めての社交界にノエルは不安を募らせている。
けれどネイトの気持ちを思うと、緊張ばかりもしていられない。
「ネイト、来てくれたんだね。ノエルも久しぶり」
二人に気がついたエアリスが近づいてくる。隣にはフェイブル。そして、攻略キャラであるザイン、フィル、オーガストス、アギィも居た。
(ひええええ!ここは顔面国宝の宝庫やあああ!!)
ゲーム内で見ていた攻略キャラ達の登場に、ノエルの緊張は吹っ飛び興奮に変わってしまう。手腕に長け商人ながら爵位を得た、豪商のザイン・ハルバード。宰相候補であり、カリスマ性溢れる銀縁眼鏡のフィル・ジェイ。騎士団長候補として名も上がるほどの剣の才能を持つ聖騎士副団長オーガストス・アーヴェン。若い見た目ながら実は一番の年長である謎の多い魔術協会長のアギィ・シルバー。
攻略キャラ達五人に囲まれて笑顔を浮かべているエアリスは、正に主人公そのものだ。
「おめでとうエアリス」
一歩前に出たネイトが、口元に笑みを浮かべながらお祝いの言葉を伝える。エアリスが嬉しそうに花のような笑みを浮かべた。
その笑顔を見ていると、たちまち春が来たような気分になる。攻略キャラ達も、穏やかに微笑んでいて良い雰囲気だ。
ネイトの様子が気になり、横目で盗み見る。いつもとは違い、ネイトの表情は柔らかい。それに少しだけ安堵した。
「来てくれて嬉しい。今日は楽しんでいってね!」
「あぁ、ありがとう」
簡素な返事だけをして、ネイトはエアリスに背を向けた。もう少し話しても良さそうだと思うのに、ネイトはその場を立ち去る気満々だ。
意図的に避けようとしていることはわかっている。それに攻略キャラ達と共にいるエアリスを見て、思うこともあるのだろう。
「ノエル、ネイトのことお願いね」
「うん。エアリス本当におめでとう」
戸惑うノエルの背を、エアリスが押してくれた。去ろうとするネイトの手を掴み、一緒にその場を立ち去る。
ほんのりと汗ばんでいるネイト。緊張していたのだとわかり、ノエルははしゃいでいた自分が恥ずかしくなった。
「ネイト、料理がすごく美味しそうだよ。俺がネイトの分も取ってこようか?」
話しかけると、ようやく立ち止まってくれる。
「……いや、一緒に居てくれないか」
「っ、う、うん!もちろん」
弱々しくお願いされて、胸がギュッと鷲掴みされた感覚がした。普段は一人でなんでもこなせる完璧な人が、エアリスのことになると途端幼子のように不安そうな表情を浮かべる。
そのギャップが可愛らしくも思える。なのに、ほんの少しだけエアリスが羨ましくもあった。胸の奥にモヤがかかったみたいだ。
ノエルにとって、ネイトはただの推しではなくなってきている。その事実を受け入れることが、怖い。
もしも気持ちを知られてしまったら、ネイトはノエルのことを遠ざけてしまうのではないだろうか。
「どうかしたのか?」
「えっ!?ううん。なにもないよ。それより俺、社交界は初めてなんだ。だから緊張しちゃってて。ネイトが色々教えてくれないかな?」
「フッ、仕方ないやつだな」
ようやく笑みを浮かべてくれたネイト。その表情を見て、少しだけ安堵した。ネイトにはずっと笑っていてほしい。
エアリスへの想いは消えなくても、いつか大切な思い出として消化できる日が来たらいい。ネイトにとってエアリスは永遠だから。
ビュッフェ形式の食事をつまみながら、ネイトと取り留めのない会話をする。こんな風に隣に立ち、話をすることが出来ている事自体が奇跡のようだ。
むず痒いような、嬉しい心地になったノエルは思わず笑みを零す。それに疑問を感じたのか、ネイトが左右色の違う瞳を向けてきた。
「俺、こうやってネイトと話す時間が凄く好きだな」
「……物好きだな」
プイッと顔を背けたネイト。ぶっきらぼうな返しなのに、冷たくは感じない。ネイトの可愛らしい反応に、ノエルはたまらなくなって吹き出すように満開の笑みを浮かべた。
164
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
だから、悪役令息の腰巾着! 忌み嫌われた悪役は不器用に僕を囲い込み溺愛する
モト
BL
2024.12.11~2巻がアンダルシュノベルズ様より書籍化されます。皆様のおかげです。誠にありがとうございます。
番外編などは書籍に含まれませんので是非、楽しんで頂けますと嬉しいです。
他の番外編も少しずつアップしたいと思っております。
◇ストーリー◇
孤高の悪役令息×BL漫画の総受け主人公に転生した美人
姉が書いたBL漫画の総モテ主人公に転生したフランは、総モテフラグを折る為に、悪役令息サモンに取り入ろうとする。しかしサモンは誰にも心を許さない一匹狼。周囲の人から怖がられ悪鬼と呼ばれる存在。
そんなサモンに寄り添い、フランはサモンの悪役フラグも折ろうと決意する──。
互いに信頼関係を築いて、サモンの腰巾着となったフランだが、ある変化が……。どんどんサモンが過保護になって──!?
・書籍化部分では、web未公開その後の番外編*がございます。
総受け設定のキャラだというだけで、総受けではありません。CPは固定。
自分好みに育っちゃった悪役とのラブコメになります。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
2026/01/09 加筆修正終了
【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました
未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。
皆さまありがとうございます。
「ねえ、私だけを見て」
これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。
エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。
「この恋、早く諦めなくちゃ……」
本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。
この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。
番外編。
リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。
――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる