失恋〜Lost love〜

天宮叶

文字の大きさ
11 / 22

10〜東視点〜

しおりを挟む
葉山さんが亡くなってから、俺は不安な想いを抱えていた。

自分の病室のベッドで膝に顔を埋めて泣き続ける。

俺もいつかあんな風になるのかな?

人はいつか死ぬとわかっていても怖いんだ……。

死ぬこともだけど、残された人はどうなる?

それを考えるとどうしようもなく不安になって、辛くて、恐ろしい…………。

「っ…日向…死にたくないよっ!」

大好きな人の名前を呼んで、ひたすら涙を流す。泣いたらもっと悲しくなるって分かってるのに流れる涙は止められない。

「夕陽!!!」

その時、病室の入口から声が聞こえてきて暖かい温もりが俺の事を包んでくれた。

いきなりのことに驚きすぎて反応することができず俺は固まってしまう。

だって………

坂本が俺の名前を呼んで抱きしめてくれているから。
今、一番会いたくて一番会いたくない人…。

「ひ、なた?」

名前を呼んだら坂本は俺の声を聞いて抱きしめる力を強くしてくれた。

あぁ……落ち着くなぁ。

俺は坂本の胸に顔を埋めてそっと目を閉じる。

そしたら、坂本は俺の背中に回していた手を外して離れようとしたんだ………。

やだ…どこにも行かないで!

俺は坂本の服を掴んでもっとって言って日向の顔をみた。
そしたら、坂本がまた抱きしめてくれて、俺の頭を撫でてくれる。だから俺はまた彼の胸に顔を埋めて目を閉じた。

坂本の胸の中にいると悲しいことも不安なことも何処かに無くなってしまうような気がするんだ。

だからどうか今だけは、甘えることを許して欲しい。

しばらくして俺は日向から離れると、坂本が俺の事をじっと見つめてきて、どうして泣いていたのか聞いてきた。

もう、隠せないのかな?

本当は坂本にだけは俺が死んでしまうことを知られたくなかった…。


俺は葉山さんのことを話した。

「そっか…友達が亡くなったのか…」

「うん…」

坂本は少しだけ俯いた俺の頭を優しく撫でてくれた。

それが嬉しくて、そんな些細なことにすら泣けてくるし鼓動が早くなる。

「日向……っ」

駄目だとわかっている。

坂本の優しさに甘えたら、きっと自分は必ず迷惑をかけてしまうから…。

それでも自分のことを言わないといけないこともわかっていたんだ…。

坂本に出会ったあの日から、いつか別れが来ることは分かっていた。

だから冷たい態度を取ってみたりもしたけど、でもやっぱり自分の気持ちには嘘は付けなかった。

「日向、俺、もうすぐ死ぬんだ」

「え…は?なにいってんの?」

混乱しているのか、困惑した顔で眉を寄せる坂本の手の甲に自分の手をおいて、しっかりと目を見てもう一度だけ俺は同じ言葉を繰り返し言って聞かせた。

「俺は死ぬんだ」

言いたくなかった…いや、知られたくなかった。

きっと、悲しませてしまうって分かっていたし、俺自身がこの現実を受け入れなければいけなくなるって知っていたから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕は今日、謳う

ゆい
BL
紅葉と海を観に行きたいと、僕は彼に我儘を言った。 彼はこのクリスマスに彼女と結婚する。 彼との最後の思い出が欲しかったから。 彼は少し困り顔をしながらも、付き合ってくれた。 本当にありがとう。親友として、男として、一人の人間として、本当に愛しているよ。 終始セリフばかりです。 話中の曲は、globe 『Wanderin' Destiny』です。 名前が出てこない短編part4です。 誤字脱字がないか確認はしておりますが、ありましたら報告をいただけたら嬉しいです。 途中手直しついでに加筆もするかもです。 感想もお待ちしています。 片付けしていたら、昔懐かしの3.5㌅FDが出てきまして。内容を確認したら、若かりし頃の黒歴史が! あらすじ自体は悪くはないと思ったので、大幅に修正して投稿しました。 私の黒歴史供養のために、お付き合いくださいませ。

パブリック・スクール─薔薇の階級と精の儀式─

不来方しい
BL
 教団が営むパブリックスクール・シンヴォーレ学園。孤島にある学園は白い塀で囲まれ、外部からは一切の情報が遮断された世界となっていた。  親元から離された子供は強制的に宗教団の一員とされ、それ相応の教育が施される。  十八歳になる頃、学園では神のお告げを聞く役割である神の御子を決める儀式が行われる。必ずなれるわけでもなく、適正のある生徒が選ばれると予備生として特別な授業と儀式を受けることになり、残念ながらクリスも選ばれてしまった。  神を崇める教団というのは真っ赤な嘘で、予備生に選ばれてしまったクリスは毎月淫猥な儀式に参加しなければならず、すべてを知ったクリスは裏切られた気持ちで絶望の淵に立たされた。  今年から新しく学園へ配属されたリチャードは、クリスの学年の監督官となる。横暴で無愛想、教団の犬かと思いきや、教団の魔の手からなにかとクリスを守ろうする。教団に対する裏切り行為は極刑に値するが、なぜかリチャードは協定を組もうと話を持ちかけてきた。疑問に思うクリスだが、どうしても味方が必要性あるクリスとしては、どんな見返りを求められても承諾するしかなかった。  ナイトとなったリチャードに、クリスは次第に惹かれていき……。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む

木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。 その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。 燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。 眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。 それが妹の名だと知っても、離れられなかった。 「殿下が幸せなら、それでいい」 そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。 赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎月影 / 木風 雪乃

出戻り王子が幸せになるまで

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
初恋の相手と政略結婚した主人公セフィラだが、相手には愛人ながら本命がいたことを知る。追及した結果、離縁されることになり、母国に出戻ることに。けれど、バツイチになったせいか父王に厄介払いされ、後宮から追い出されてしまう。王都の下町で暮らし始めるが、ふと訪れた先の母校で幼馴染であるフレンシスと再会。事情を話すと、突然求婚される。 一途な幼馴染×強がり出戻り王子のお話です。 ※他サイトにも掲載しております。

大事な呼び名

夕月ねむ
BL
異世界に転移したらしいのだが俺には記憶がない。おまけに外見が変わった可能性があるという。身元は分からないし身内はいないし、本名すら判明していない状態。それでも俺はどうにか生活できていた。国の支援で学校に入学できたし、親切なクラスメイトもいる。ちょっと、強引なやつだけどな。 ※FANBOXからの転載です ※他サイトにも投稿しています

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

おめでとうが言えなくて

まめなぎ
BL
祝えないのは、最低だからじゃない。 まだ手放せていないからだ。

処理中です...