マニーフェイク・フレンズ

天宮叶

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デート?

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重い体を引きずりながら1人でシャワーを浴びて服を着ると先にシャワーを浴び終えていた月見さんが俺の髪をドライヤーで乾かしてくれた。

気持ちよさにうとうしているとふいに月見さんが俺の頬をブニッとつまんできて覚醒する。

「寝ちゃだめだよ」

「…はい」

ふぁ~って欠伸を1つして、しっかりと髪を乾かしてもらってから帰る準備を始めた。

「月見さんこれ」

「ん?」

「似合うと思って買ったんですけどよければ…。帰ってから見て貰えたら」

昨日お土産屋さんで買ったタイピンの入った小箱を手渡すと月見さんがそれを受け取ってくれてありがとうって微笑んでくれた。

「今度お礼するね」

「いいですよ。俺が勝手に買っただけなんで」

俺の言葉にそう?って答えた彼は大切そうにその箱を食器セットの入れてある紙袋に入れた。

「それからこれも」

続けざまに用意していた封筒を彼に手渡すと中身を確認した彼の笑みが一瞬で消える。

中身は勿論お金で、これが俺たちの関係を繋いでいるんだと思うと少しだけ悲しくもある。

「これは受け取れないよ」

封筒を返そうとする月見さんを制止して俺は受け取ってくださいってお願いする。

もしもこれを受け取って貰えなかったら俺たちの関係が益々分からなくなる。それだけは嫌だった。

彼とこれきりなんて耐えられないと思った。

何故こんなことを思うのかなんて分からない。

まるで月見さんをお金で買うような行為に抵抗を感じるのにそれでも辞められない理由も分からない。

ただ、はっきりとお金だけが俺たちの縁を繋ぐ糸のように感じられるから俺は月見さんの手から封筒を受け取って彼の足元に置いてある紙袋の中に押し込んだ。

「悟くん…」

「俺が言い出したことだから」

和やかな空気は飛散してどこか重い空気が俺たちの間を流れる。

本当はこんなこと良くないって分かっているんだ。

それでも、身体を求められようと、痣を沢山付けられようと、何をされようと彼の側に今は居たいから…。

「帰りましょうか」

俺は重い空気を断ち切るようにそう言って鞄を手に取った。
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