マニーフェイク・フレンズ

天宮叶

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それって……

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キュッっていう蛇口を捻る音が響くと、止めどなくお湯が俺に降り注ぐ。

夜から朝にかけて散々求め合って、起きたら昼手前になっていた。

時間が勿体ないなと思いながら、まだ気持ちよさそうにベッドに沈んでいる薫さんをそのままにしておいてシャワーを浴びる。

怠い腰が彼とずっと繋がっていたことを俺に教えてくれるからそれが幸せで、それでいて悲しいとも思った。

都合のいい関係とかセフレとか俺には縁遠い話だと思っていたのに実際に自分の身に降りかかると現実を直視するのが少し怖くなる。

コンコンと扉がノックされる音に気づいてシャワーを止めると扉の向こうに薫さんが立っているのがぼんやりとシルエットで分かった。

扉を開けて顔だけ覗かせると薫さんはまだ眠たそうにとろんとした瞳を俺に向けてくる。

いつもは少し恐怖すら感じる切れ長の目に今は可愛さを感じて思わず抱きしめたくなった。

「体大丈夫?」

「平気っすよ」

「…無理させたから…。大丈夫なら良かった」

ほっと顔を緩ませた薫さんになんとも言えない感情が込み上げてきて俺は思わず彼にキスをする。

「…悟くん?」

「ちょっと黙っててください」

薫さんが濡れるとか今は気にする余裕もなくて、彼の頭に手を回してただひたすら彼を貪った。

「可愛い…」

必死な俺を他所に余裕そうにそう言った薫さんが応えるように舌を絡めてくれる。

同じ気持ちならいいのに…。

薫さんも俺と同じように俺の事を好きになってくれないかな…。

彼の冷たい体温は俺の熱を冷ますどころか逆にじわじわと沸騰させていく。

耐えきれなくて服を着たままの薫さんを風呂場に引き込んで壁に押し付けると、容赦なくシャワーが俺たちに降り注いでまるで溶け合うように俺たちはその中で求め合った。
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