囚われの白夜〜狼王子は身代わり奴隷に愛を囁く〜

天宮叶

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運命の番

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抱きしめられた瞬間、安心感が胸を埋めつくした。

「寝れないのか」

「……っ……起こしてしまいましたか」

「かまわない」

耳元でライル様の低く艶やかな声が響く。
その声や香りや熱が僕の中の何かをおかしくさせるんだ。

「……怖い夢を見たんです」

心地の良い場所から僕を元の場所へと引き戻す夢という名の現実。

「……こちらに来い」

ライル様の方を向くように寝返りを打たされると、そのまま彼の胸元に引き寄せられた。

筋肉質な逞しい腕に抱きしめられて、彼の匂いに包まれると心が段々と穏やかになって行く気がする。

「お前が眠るまでこうしていてやる」

「……っ、でも……」

ライル様に抱きしめられながら彼の腕に頭を乗せて眠るなんて恐れ多くて出来ない。

そう言いたいのに、彼の香りが僕を安堵の眠りへと誘うように僕の中を充満させていくんだ。

「俺がお前を腕の中に閉じ込めておきたいだけだ」

優しい声音でそう言われてしまうと、もうなにも言い返すことが出来なくて、戸惑いながらも彼の胸板に頬を擦り寄せた。

(温かい……)

人肌の温もりがこんなにも温かいなんて知らなかった。

ライル様は不思議な方だ。

怖いと思うのに優しくて、傍に居ると離れ難い。
これが運命の番というものなのかな……。

ライル様の鼓動が僕の鼓膜を通って心臓へと到達する。その心地のいい音が、苦しかった僕の心を癒し満たしてくれる。

気がつくと僕は再び目を閉じて眠りについていた。
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