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さっぱりわからない
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「ここはなんの部屋ですか?」
通りがかった研究室の前でシャノンが足を止めた。
「薬の生成や開発を行っている場所だ」
「回復薬のようなものですか?」
「そうだ。治癒術師は世界的に見ても足りない現状だから、上質な回復薬はどの地域でも取引が盛んだ。だが治癒術師と同じくらい薬師も不足している」
「そうなのですか?幼い子どもでも簡単な傷薬なら作れると思っていました」
たしかに小さな傷を治す程度の簡易的なものなら作れるかもしれない。
けれどそれは薬と呼ぶにはお粗末なものだ。
「薬は薬草をすりつぶし、成分を抽出して液状化させそこに薬師の魔力を練ることで生成される。世界のすべての物質には微量の魔力が宿っていて、薬師は自身の魔力によって物質の潜在的な魔力を活性化させ薬効を調整している。それには繊細な魔力コントロールが必要だ。上質と名の付く薬はすべて薬師の腕による産物で、作った者の力量によって効果の大小が決まる」
「薬作りはとても難しそうです」
「そうだな。魔術協会では誰でも簡単な回復薬は作れるように練習させられる。シャノンもそのうち作れるようになる」
自信なさ気に表情を曇らせているシャノンを励ましてから、研究室を離れた。
魔術協会内はとても広く、さまざまな分野の魔術を扱っているから見て回るだけでもシャノンにとっては勉強になるはずだ。
「おやおや。天下のレゲンデア様が新人を案内しているなど前代未聞ですな」
「……ハーウッド二級魔術師」
嫌な奴と出くわしてしまった。
ゼンが魔術協会に入った頃から、なにかと文句をつけては嫌がらせをしてくる男だ。
小説内では小物の悪役として登場し、ゼンがうまいこと操って悪事を働かせていた。
──そういえば王太子誘拐事件にはハーウッドも絡んでいたな。
彼はクリフ・ハーウッドという名で、ハーウッド男爵家の次男だ。ゼンやルーカスなどの若くして高い地位に上り詰めた人物を嫌っており、ルーカスとはちょっとした因縁がある。
「騎士団長と婚約したそうですな。まさか犬猿の中である騎士団と魔術協会のトップ同士が婚約とは思い切ったものです」
「ハーウッド二級魔術師には関係のないことだ。無駄話をしていないで職務に戻れ」
「チッ、若造が偉そうに」
「その若造がこの協会のトップだ。自分で言っただろう。それから、ルーカスを逆恨みするのはやめろ。見苦しいぞ」
二級魔術師の称号は伊達ではなく、ハーウッドは強力な魔術師だ。けれど性格に難がありすぎる。
数年前、ルーカスからの要請で一目巨人の討伐の援護に向かったとき、調子に乗ったハーウッドが一目巨人に喧嘩を打って返り討ちにあい、死にかけたところをルーカスに助けられたことがあった。
プライドの高いハーウッドは、助けられたことや、自分が倒せなかった魔獣をルーカスがいとも簡単に倒したことに腹を立てて逆恨みしている。
(たしかあのとき、ハーウッドは一目巨人にビビって漏らしたんだよな……)
さぞ恥ずかしかったことだろう。
「ぐぬぬッ、覚えていろ。いまに痛い目を見ることになるからな!」
目を釣り上げて怒りながらハーウッドはゼン達の横を通り過ぎていった。
相変わらずの大人気なさにため息がもれる。
「なんだか気難しそうな方でしたね」
「魔術協会で働き始めることになったらハーウッドには気をつけたほうがいい。ハーウッド男爵家は地位は高くはないが魔術の名門だ。魔術師として贔屓されてきたせいか性格に難がある人間が多い。特にハーウッド二級魔術師は突飛して魔術の才能に恵まれているから厄介だ。関わらないほうがいい」
「わかりました。僕、やっていけるでしょうか……」
「心配するな。俺が守ってやる」
微笑みながら頭を撫でると、シャノンが頬をほんのりと赤く染めて表情を緩めた。
可愛らしすぎる笑顔を見ていると、小説内でルーカスが惹かれたのも納得してしまう。
「ゼン様、それは無自覚でやっているんですか?」
「なんのことだ?」
「無自覚ですか……。ルーカス様は大変だと思います」
「????」
なんのことかさっぱりわからなくて首を傾げた。
「僕やフィーロ様以外にはしないほうがいいです」
「本当になんのことだ?シャノン、なにがだめなんだ?」
ただ頭を撫でただけだ。シャノンやフィーロ以外にはする気もない。
それに魔術協会のトップなのだから新人を守るのは当然のこと。
なにか間違えてしまっただろうか?
さっぱりわからないまま案内を続ける。
通りがかった研究室の前でシャノンが足を止めた。
「薬の生成や開発を行っている場所だ」
「回復薬のようなものですか?」
「そうだ。治癒術師は世界的に見ても足りない現状だから、上質な回復薬はどの地域でも取引が盛んだ。だが治癒術師と同じくらい薬師も不足している」
「そうなのですか?幼い子どもでも簡単な傷薬なら作れると思っていました」
たしかに小さな傷を治す程度の簡易的なものなら作れるかもしれない。
けれどそれは薬と呼ぶにはお粗末なものだ。
「薬は薬草をすりつぶし、成分を抽出して液状化させそこに薬師の魔力を練ることで生成される。世界のすべての物質には微量の魔力が宿っていて、薬師は自身の魔力によって物質の潜在的な魔力を活性化させ薬効を調整している。それには繊細な魔力コントロールが必要だ。上質と名の付く薬はすべて薬師の腕による産物で、作った者の力量によって効果の大小が決まる」
「薬作りはとても難しそうです」
「そうだな。魔術協会では誰でも簡単な回復薬は作れるように練習させられる。シャノンもそのうち作れるようになる」
自信なさ気に表情を曇らせているシャノンを励ましてから、研究室を離れた。
魔術協会内はとても広く、さまざまな分野の魔術を扱っているから見て回るだけでもシャノンにとっては勉強になるはずだ。
「おやおや。天下のレゲンデア様が新人を案内しているなど前代未聞ですな」
「……ハーウッド二級魔術師」
嫌な奴と出くわしてしまった。
ゼンが魔術協会に入った頃から、なにかと文句をつけては嫌がらせをしてくる男だ。
小説内では小物の悪役として登場し、ゼンがうまいこと操って悪事を働かせていた。
──そういえば王太子誘拐事件にはハーウッドも絡んでいたな。
彼はクリフ・ハーウッドという名で、ハーウッド男爵家の次男だ。ゼンやルーカスなどの若くして高い地位に上り詰めた人物を嫌っており、ルーカスとはちょっとした因縁がある。
「騎士団長と婚約したそうですな。まさか犬猿の中である騎士団と魔術協会のトップ同士が婚約とは思い切ったものです」
「ハーウッド二級魔術師には関係のないことだ。無駄話をしていないで職務に戻れ」
「チッ、若造が偉そうに」
「その若造がこの協会のトップだ。自分で言っただろう。それから、ルーカスを逆恨みするのはやめろ。見苦しいぞ」
二級魔術師の称号は伊達ではなく、ハーウッドは強力な魔術師だ。けれど性格に難がありすぎる。
数年前、ルーカスからの要請で一目巨人の討伐の援護に向かったとき、調子に乗ったハーウッドが一目巨人に喧嘩を打って返り討ちにあい、死にかけたところをルーカスに助けられたことがあった。
プライドの高いハーウッドは、助けられたことや、自分が倒せなかった魔獣をルーカスがいとも簡単に倒したことに腹を立てて逆恨みしている。
(たしかあのとき、ハーウッドは一目巨人にビビって漏らしたんだよな……)
さぞ恥ずかしかったことだろう。
「ぐぬぬッ、覚えていろ。いまに痛い目を見ることになるからな!」
目を釣り上げて怒りながらハーウッドはゼン達の横を通り過ぎていった。
相変わらずの大人気なさにため息がもれる。
「なんだか気難しそうな方でしたね」
「魔術協会で働き始めることになったらハーウッドには気をつけたほうがいい。ハーウッド男爵家は地位は高くはないが魔術の名門だ。魔術師として贔屓されてきたせいか性格に難がある人間が多い。特にハーウッド二級魔術師は突飛して魔術の才能に恵まれているから厄介だ。関わらないほうがいい」
「わかりました。僕、やっていけるでしょうか……」
「心配するな。俺が守ってやる」
微笑みながら頭を撫でると、シャノンが頬をほんのりと赤く染めて表情を緩めた。
可愛らしすぎる笑顔を見ていると、小説内でルーカスが惹かれたのも納得してしまう。
「ゼン様、それは無自覚でやっているんですか?」
「なんのことだ?」
「無自覚ですか……。ルーカス様は大変だと思います」
「????」
なんのことかさっぱりわからなくて首を傾げた。
「僕やフィーロ様以外にはしないほうがいいです」
「本当になんのことだ?シャノン、なにがだめなんだ?」
ただ頭を撫でただけだ。シャノンやフィーロ以外にはする気もない。
それに魔術協会のトップなのだから新人を守るのは当然のこと。
なにか間違えてしまっただろうか?
さっぱりわからないまま案内を続ける。
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