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どこにも行かなくていい
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しばらく歩くと魔術訓練場へ着いた。魔術師達も多少の武術の心得は必要だ。特に治癒術師はほとんどの者が身を守る術を持たないため護身術を身につけておかなければ危ない。
「ベテランの治癒術師になるには相当な努力をしなければならない。そのうち訓練場を見るのが嫌になるぞ」
「どんなにきつくても自分で選んだことですから、途中で投げ出したりなんてしません」
「そうか」
きっとシャノンは言葉通り逃げ出すことはしない。
それどころか人一倍努力して、いつか高位の治癒術師になると確信している。
訓練場を通り過ぎると、魔術量の測定などを行う場所に向かい、シャノンの魔術精度などを確認した。
一通り回り終えた頃には日が傾き始める時間になっていた。
「疲れただろう」
「少し。でも、とても勉強になりました」
「それならよかった。今日からシャノンは魔術協会公認の治癒術師だ。だからこれを渡しておく」
ジャケットの胸ポケットから魔術協会の紋章が刻まれたラペルピンを取り出すと、シャノンに手渡す。
魔術協会の魔術師である証だ。
「ありがとうございます。つけるのが楽しみです」
「それをつければ、堂々と生きていけるだろう。伯爵家で使用人をする必要もなくなる」
シャノンが伯爵家から出ていくのは寂しい。だがシャノンのためを思うのであれば背を押してやるべきだ。
「使用人を続けたいと思うのは我儘でしょうか……」
「両立は難しいだろう。魔術協会は中途半端が許されるような場所ではないからな」
「待っているとフィーロ様に約束しました。僕は彼に嘘をつきたくないんです」
強い意思を宿す薄ピンクの瞳が真っ直ぐに見つめてくる。
フィーロへの思いが伝わってきて、強く胸を打たれるような感覚がした。
「なにも出ていけとは言っていない。シャノンは伯爵家に住んでいるのだから、あそこはお前の家だ。魔術協会には伯爵家から通えばいい」
「っ、いいのですか?」
「本気でフィーロと結ばれたいと願うのなら、伯爵家はいつか本当にシャノンの家になるだろう。それが早まるだけだ」
フィーロが伯爵家を継ぐと決断したら、シャノンは伯爵夫人になるだろう。そうならなくとも、フィーロと婚姻するのなら伯爵家に住むことにはなるはず。
「ありがとうございますっ……。ご恩に報えるように頑張ります!」
深く頭を下げたシャノンを見返しながら、ゼンは心が温かくなる感覚を味わった。
「ベテランの治癒術師になるには相当な努力をしなければならない。そのうち訓練場を見るのが嫌になるぞ」
「どんなにきつくても自分で選んだことですから、途中で投げ出したりなんてしません」
「そうか」
きっとシャノンは言葉通り逃げ出すことはしない。
それどころか人一倍努力して、いつか高位の治癒術師になると確信している。
訓練場を通り過ぎると、魔術量の測定などを行う場所に向かい、シャノンの魔術精度などを確認した。
一通り回り終えた頃には日が傾き始める時間になっていた。
「疲れただろう」
「少し。でも、とても勉強になりました」
「それならよかった。今日からシャノンは魔術協会公認の治癒術師だ。だからこれを渡しておく」
ジャケットの胸ポケットから魔術協会の紋章が刻まれたラペルピンを取り出すと、シャノンに手渡す。
魔術協会の魔術師である証だ。
「ありがとうございます。つけるのが楽しみです」
「それをつければ、堂々と生きていけるだろう。伯爵家で使用人をする必要もなくなる」
シャノンが伯爵家から出ていくのは寂しい。だがシャノンのためを思うのであれば背を押してやるべきだ。
「使用人を続けたいと思うのは我儘でしょうか……」
「両立は難しいだろう。魔術協会は中途半端が許されるような場所ではないからな」
「待っているとフィーロ様に約束しました。僕は彼に嘘をつきたくないんです」
強い意思を宿す薄ピンクの瞳が真っ直ぐに見つめてくる。
フィーロへの思いが伝わってきて、強く胸を打たれるような感覚がした。
「なにも出ていけとは言っていない。シャノンは伯爵家に住んでいるのだから、あそこはお前の家だ。魔術協会には伯爵家から通えばいい」
「っ、いいのですか?」
「本気でフィーロと結ばれたいと願うのなら、伯爵家はいつか本当にシャノンの家になるだろう。それが早まるだけだ」
フィーロが伯爵家を継ぐと決断したら、シャノンは伯爵夫人になるだろう。そうならなくとも、フィーロと婚姻するのなら伯爵家に住むことにはなるはず。
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深く頭を下げたシャノンを見返しながら、ゼンは心が温かくなる感覚を味わった。
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