ぼくの万能魔法で、フェンリルの子を最強のもふもふに育てあげたいと思います。

榊原モンショー

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隷属魔法

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 次の日の朝。
 体調は万全。服はピカピカ、おばちゃんからの優しさと美味しい朝ご飯でお腹と心がい っぱいになったぼくは、ガルラット森林裏の入り口までやってきていた。

「本当に大丈夫かい? 白角兎が現れやすくなったからと言って、大きな存在がいなくなったわけでもないんだから、充分気をつけるんだよ?」

「はい、ご心配ありがとうございます。夕方までには戻ってきます」

 白角兎の出現と、親フェンリルの先の窮地。
 強者に常にひっついているはずのこの兎が出た時点で親フェンリルの生存は考えづらいだろう。
 お会いできるならば、是非ともお会いしたいから光栄だ。

「それに、フェウの力も、ぼくの力自身も――」

 ふとフェウの方を見てみれば、どこか辺りを探るようにくんくんと鼻を動かしている。
 おばちゃんには明かしていないが、フェウだって立派にフェンリルの血を引いている。
 昨日ばっかりは驚きと謎の連続過ぎて何も出来なかったけれども、今日からならフェウの力を見定めることだって出来る。

「じゃぁ行くよ、フェウ。隷属魔法、犬の首輪」

「ぐるるるるる……」

「大丈夫だよ、隷属魔法なんて銘打ってるけど、遠くに離れすぎないようにってだけだからさ。それにフェウがもう少しだけ強くなればもう効かなくなっちゃうし」

 ぼくとフェウの間に現れたのは、光の糸のようなものだった。
 光の糸を首元にかけられたフェウは、ちょっとウザったそうに首元の光を噛みちぎろうとしていた。
 それを見ておばちゃんは「へぇ」と驚いた。

「レアル、あなた獣使いテイマーさんだったのかい。だからこんな可愛いワンちゃん連れてたのか。いいねぇ、おばちゃんも昔は獣使いテイマーでねぇ。若い頃はゴブリン突撃隊! なんて、Cランクほどの魔物束ねて森の中に突っ込んでったもんさねぇ」

 唐突なおばちゃんのヤンキー的武勇伝に戸惑いを隠せないものの、ぼくは頬をポリポリと搔いて「いえ……」と言って、続けた。

「ぼくは万能魔法の使い手です。一応獣使いテイマー分野も抑えていますが、Eランク以上の獣となるとぼくの手には余りますから」

 隷属魔法は、獣使いテイマー職の十八番だ。
 使役したい、従わせたい魔物を自分の魔法でコントロールすることが出来る。
 万能魔法使いのぼくにも使えると言えば使えるんだけど、精々Eランク程度の魔物が精一杯なんだ。
 親フェンリルの言うとおり、フェウを育てていけばすぐにレベルアップしちゃってこの隷属魔法も使えなくなるんだけど……それまでにフェウと仲良くなれてればいいんだけどね。

「万能魔法使い!? ……そうかい、そういうことだったかい。なおさら、苦労したろうねぇ……。……本当に大丈夫なのい、一人で行っても。村の者に頼んで、誰か――」

「だ、大丈夫だよ、おばちゃん! ほ、ほら、ぼくにはフェウっていう力強い味方がいるから! 本当に、本当に大丈夫だから、行ってきます! フェウ、行こ!」

「がるるるる……」

 ぼくはおばちゃんの心配を振り切るように森の中に入っていった。
 フェウも、隷属魔法の支配下に置かれているからか、素直にぼくの後ろを付いてきてくれた。

「力強い味方って行っても、万能魔法使いのあんたが使役出来てるってことは、その子もまだEランクほどでしかないってことじゃないかい……。本当に大丈夫かねぇ?」
 
 ぽつりと言ったおばちゃんの声は、ぼくの耳には届いていたけど……。
 これ以上、迷惑を掛けるわけにはいかない。
 それに、フェウの成長は誰にも見せるわけにはいかないんだ。

「はふっ、はふっ、はふっ、はふっ」

 ぼくとフェウは、薄暗い森の中へと入っていったのだった。
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