ぼくの万能魔法で、フェンリルの子を最強のもふもふに育てあげたいと思います。

榊原モンショー

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不穏な地鳴り

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 ドドドドド……。

「ゲギャギャギャギャギャッ!!」

 ドドドドドドドドドド。

「ゲギィッ! ゲギギ、ギャギーッ!!」

 ドドドドドドドドドドドドドドド!!

「はいよっ! この調子だよアンタ達! 光りモンなら余った小銭でもなんでも持っていっていいから、このまま都まで突っ切るんだよっ!!」

「ゲギーッ!!」「ギョギ!!」「ゲー!!」

 おばちゃんの管理下にあるゴブリン十数体が、その小さな身体に太い紐を括り付けて疾走している。
 馬車用の屋形にある荷物と、御者としてゴブリン達に檄を入れ続けるおばちゃん。
 獣使いテイマーとして十数匹を同時に使役する上に、あんなに扱い辛くてずる賢いとされるゴブリンを傘下に入れているおばちゃん、一体何者なんだろう……?

「うぉ……!? な、何だあのスピード……って、ゴブリン使いの暴走ババアかよっ!! おいクソババア! アンタいい加減大人しく通るってことは出来ねぇのか!?」

 ゴブリン達は小さな身体に似合わない大きな力とその俊敏さで、おおよそ隣の馬車よりも速度を出して都へと続く一本道をどんどん駆けていく。
 途中あっと言う間に追い越した馬車の御者がたまらず言うと、おばちゃんは先ほどの優しそうな目つきからは豹変して馬車の御者に振り向いた。

「アンタたちがいつまでもタラタラ走ってるんだよっ! まったく、トロい男は女々しいったらありゃしないねぇ! ほらっ! あんなの無視して、さっさと駆けるんだよぉ!」

『ゲギーッ!!』

 砂煙を巻き上げながら一本道を爆走する馬車ならぬゴブリン車。
 屋形の更に後ろに繋がれた荷台で、ぼくとフェウは気持ちのいい風を感じていた。

「わふー……」

 パタパタとフェウの柔らかい毛が風に揺れている。
 自分の足よりも速いゴブリン車に興味津々なようで、あっと言う間に移り変わる景色を目で追うごとに、首がひょこひょこと動いていた。

「居心地はどうだい、レアル?」

 おばちゃんがぼく達に気を遣うようにそう訪ねてきてくれる。

「それが、びっくりするくらいに快適です! こんなにスピードが出てるのに、まるで揺れないし……酔いもしない。フェウも、気持ちよさそうです!」

「わふ~~~」

「あっはっは! そうかい、そりゃぁ良かったよ! 割れ物を運ぶときも多いからねぇ。ここ数年、ゴブリン達も走るのに慣れてきてくれたから本当に貴重な人材だよ。みんな、おばちゃんの可愛い子達さね」

 カラカラと自慢げに話すおばちゃんは、ちょっと嬉しそうだった。

「慣れてきた、ってことはこのゴブリンさん達も相当おばちゃんのテイム歴は長いんですか?」

「もうそろそろで5年ほどになるんじゃないかねぇ。今じゃ、この子たち同士の中で新しい家族を作ったりしてるからね。ここにいるググとギリーなんかは、ここの運転手経緯で知り合って今は仲睦まじい夫婦さね」

 おばちゃんが前を走るゴブリン2匹を指さすと、彼らはぼく達の方を向いてにこりと笑ったような気がした。

「グギギ、グギギグギ!」

「ギャギャギャ……、グゲー、グギゲゲゲ」

「あらあら、そうなのかい。こないだ生まれたっていうあの坊ちゃんも元気にしてるのかい。でも、本当に良いのかい? アタシの所で運転手やらなくても、子供には別の生き方もあるだろう?」

「グギゲ、ゲゲゲリョウ……グギッ! ゲッ!!」

「そうかい? 子供と一緒に家族でアタシの車を引くのが夢って……嬉しいこと言ってくれるねぇ。また年明けくらいには呼んでやるから、今度はせがれも連れてくればいいさね」

「ゲギャッ!!」

 テイムした魔物との会話。
 それはお互いに相当な信頼関係がないと出来ない芸当だ。
 ましてや相手はずる賢く、人を騙すことしか考えないゴブリンときた。
 それでも、このおばちゃんの元で尽くしたい、というのはぼくもちょっと分かる気がするな。
 ……なんだかロマンチックな出会い方をしてる魔物までいるようだけど。

「…………ガル」

 ふと、フェウが落ち着かない様子で遠方を見つめた。
 荷台からすっくと立ち上がってひたすら続いている森の中をじっと見つめている。

「――フェウ?」

 ぼくがフェウの異変を感じ取った直後、前方でゴブリン達が一斉に声を上げた。

「ギェギャ!! ゲギャギャギャッ!!」「ゲギッ!! ゲゴッ!ゲゴッ!!」

「なんだい、揃いも揃って。何かが近付いてるって、そんな気配どこにも――」

 おばちゃんが辺りをふと見回した、その時だった。

 ドドド……。

 ぼく達以外に何かが駆け抜けるような、そんな地鳴りのような音がぼくの耳にも確かに聞こえてきたのだった。


 
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