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猪突馬鹿
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ドドドドドドド……。
地鳴りのような音は、先ほどのゴブリン達の足音とは桁違いの様子だった。
「なぁにさ。いやにこの重っ苦しい音だねぇ」
「ゲギャォ! ゲギャオ! ゲギャッ! ゲギャッ!」
「なぁに? 『厄介な猪突馬鹿』が近付いている? おかしいねぇ、今までこんな通路で変なモンに出くわした覚えはないんだけどねぇ」
おばちゃんが首を傾げるように呟くと同時に、ぼくは視認していた。
「あれは、もしかして――」
ドドドドドと、ぼく達の遙か向こう側で立ち上がる土煙。
その中央には、スピードをどんどんと上げてぼく達ゴブリン車に迫り来る魔物の姿があった。
前に出張った吻鼻骨からは湯気のような鼻息が噴出している。口端に生えた一対の巨大な牙は、ゴブリン車くらいならば容易にひっくり返し、ぼく達の身体くらいあっと言う間に貫いていくだろう。
体高はおおよそ三メートルはくだらない。下手をすれば、ゴブリン車の荷台ほどに到達しそうなほど巨大な身体。
四足歩行型の龍車が地上を滑空しているかのようなスピードであっと言う間にぼく達との差を詰めてくる。
『猪突馬鹿』こと魔猪。図体に似合った豪快なぶっ飛ばし系の魔法と、巨龍をもひっくり返すほどの突進能力を持つ推定ランクCの魔物だ。
「ブモォォォォォォッ!!」
「おばちゃん、真っ直ぐこっち向かってきてます!」
「ちぃっ!」
おばちゃんは鋭く舌打ちをして、咄嗟にゴブリン達に指示を送った。
「面倒なお客さんだねぇっ。アンタ達、森で飛ばしな! この道はあれの格好の餌食になっちまうからねぇ!」
『グギャー!!』
「レアル、フェウ! 振り落とされないようにしっかり捕まってな!」
ぐいっと、おばちゃんが鞭を振るうとゴブリン達は一斉に方向転換して隣の森の中へと突っ込んでいく。
道など舗装されていない、獣道と石の連続だがそこは歴戦のゴブリン達だ。
一番揺れの少ない場所を選びながら森の中を駆けていた。
「売り物、2割は死にそうだねぇ。……ったらぁ!!」
ため息をつきながら、進行方向にある枝葉を切って苦虫を噛むおばちゃん。
「ブモォォォォォォ!!」
だが、それだけで魔猪は退かなかった。
「……何でこうなるのさね!?」
「ブモォォォォォォォォッッッ!!!」
辺りの木々をなぎ倒しながら、魔猪は執拗なまでにぼく達を狙っていた。
思わずぼくの身体が動いていた。
荷台の縁に捕まって、右手に魔法力を充填させる。
ぼくの魔法で魔猪なんて大型魔物を倒すことは出来ない。
だけど……!
「おばちゃん、ぼくが少しでも足止めします! その間に一気に駆け抜けてください!」
「あぁ、そうかい……! そりゃ随分と助かるよ、レアル。任せていいんだね!?」
「足止めくらいなら、いくらでも!」
「あい分かった! 聞いたね、お前達! 全速前進! 後ろは振り返るんじゃないよッ!!」
『ゲギャー!!』
ギュンッ。
ゴブリン車のスピードが一気に上がり、ガタガタと荷台の上も大きく揺れる。
「わっふ、わっふ、わわふふふあわふふっふふふ」
フェウの身体が空に浮いたり荷台に着いたりしていた。
「フェウ、しっかり捕まって」
ぼくはフェウを抱きかかえた。
これでフェウも安全だ。
――よし。
「ブモモォォォォッッ!!」
走ってくる魔猪。
例え魔法が弱くても、ぼくにだって足止めくらい――!
「水土混合万能魔法! 泥球!」
ドリュンッ。
ぼくの手から放出されたのは大量の泥だ。
「ぶほっ!?」
魔猪の前に池溜まりのようになった泥に、魔猪も足を取られて動きが鈍る――が。
「ォォォォンッ!!」
そんなものは効かないとでも言わんばかりに、泥の雨を上げながら魔猪は足取りを止めなかった。
ここまで執拗にぼく達を狙うのは何なんだ!?
「……くっ! 火球!」
――一瞬! 一瞬だけでいい!
ぼくの手から炎の球が二発、魔猪に向かう。
「ぶもっ! ぶほっ!!」
……面白いくらいに跳ね返されるね。
魔猪は、ぼくが放った炎の球など苦にもせずにその牙で脇へと跳ね返してしまう。
――火も、泥も効かないとなると、光で奴の目を、それとも麻痺魔法でなら……!?
ぶつぶつと、出口の見えない考えをしていたぼくの懐で、何やらもぞもぞと動くものがあった。
「……ぱぅっ」
フェウだった。
ボォォォォォォォォォォォォッッッ!!!
ぼくが放って跳ね返された火の球に覆い被せるようにして、フェウの口から極大の炎が出たのだ。
フェウが、意図的に炎魔法を使った瞬間を、ぼくは見逃すことはなかった!
地鳴りのような音は、先ほどのゴブリン達の足音とは桁違いの様子だった。
「なぁにさ。いやにこの重っ苦しい音だねぇ」
「ゲギャォ! ゲギャオ! ゲギャッ! ゲギャッ!」
「なぁに? 『厄介な猪突馬鹿』が近付いている? おかしいねぇ、今までこんな通路で変なモンに出くわした覚えはないんだけどねぇ」
おばちゃんが首を傾げるように呟くと同時に、ぼくは視認していた。
「あれは、もしかして――」
ドドドドドと、ぼく達の遙か向こう側で立ち上がる土煙。
その中央には、スピードをどんどんと上げてぼく達ゴブリン車に迫り来る魔物の姿があった。
前に出張った吻鼻骨からは湯気のような鼻息が噴出している。口端に生えた一対の巨大な牙は、ゴブリン車くらいならば容易にひっくり返し、ぼく達の身体くらいあっと言う間に貫いていくだろう。
体高はおおよそ三メートルはくだらない。下手をすれば、ゴブリン車の荷台ほどに到達しそうなほど巨大な身体。
四足歩行型の龍車が地上を滑空しているかのようなスピードであっと言う間にぼく達との差を詰めてくる。
『猪突馬鹿』こと魔猪。図体に似合った豪快なぶっ飛ばし系の魔法と、巨龍をもひっくり返すほどの突進能力を持つ推定ランクCの魔物だ。
「ブモォォォォォォッ!!」
「おばちゃん、真っ直ぐこっち向かってきてます!」
「ちぃっ!」
おばちゃんは鋭く舌打ちをして、咄嗟にゴブリン達に指示を送った。
「面倒なお客さんだねぇっ。アンタ達、森で飛ばしな! この道はあれの格好の餌食になっちまうからねぇ!」
『グギャー!!』
「レアル、フェウ! 振り落とされないようにしっかり捕まってな!」
ぐいっと、おばちゃんが鞭を振るうとゴブリン達は一斉に方向転換して隣の森の中へと突っ込んでいく。
道など舗装されていない、獣道と石の連続だがそこは歴戦のゴブリン達だ。
一番揺れの少ない場所を選びながら森の中を駆けていた。
「売り物、2割は死にそうだねぇ。……ったらぁ!!」
ため息をつきながら、進行方向にある枝葉を切って苦虫を噛むおばちゃん。
「ブモォォォォォォ!!」
だが、それだけで魔猪は退かなかった。
「……何でこうなるのさね!?」
「ブモォォォォォォォォッッッ!!!」
辺りの木々をなぎ倒しながら、魔猪は執拗なまでにぼく達を狙っていた。
思わずぼくの身体が動いていた。
荷台の縁に捕まって、右手に魔法力を充填させる。
ぼくの魔法で魔猪なんて大型魔物を倒すことは出来ない。
だけど……!
「おばちゃん、ぼくが少しでも足止めします! その間に一気に駆け抜けてください!」
「あぁ、そうかい……! そりゃ随分と助かるよ、レアル。任せていいんだね!?」
「足止めくらいなら、いくらでも!」
「あい分かった! 聞いたね、お前達! 全速前進! 後ろは振り返るんじゃないよッ!!」
『ゲギャー!!』
ギュンッ。
ゴブリン車のスピードが一気に上がり、ガタガタと荷台の上も大きく揺れる。
「わっふ、わっふ、わわふふふあわふふっふふふ」
フェウの身体が空に浮いたり荷台に着いたりしていた。
「フェウ、しっかり捕まって」
ぼくはフェウを抱きかかえた。
これでフェウも安全だ。
――よし。
「ブモモォォォォッッ!!」
走ってくる魔猪。
例え魔法が弱くても、ぼくにだって足止めくらい――!
「水土混合万能魔法! 泥球!」
ドリュンッ。
ぼくの手から放出されたのは大量の泥だ。
「ぶほっ!?」
魔猪の前に池溜まりのようになった泥に、魔猪も足を取られて動きが鈍る――が。
「ォォォォンッ!!」
そんなものは効かないとでも言わんばかりに、泥の雨を上げながら魔猪は足取りを止めなかった。
ここまで執拗にぼく達を狙うのは何なんだ!?
「……くっ! 火球!」
――一瞬! 一瞬だけでいい!
ぼくの手から炎の球が二発、魔猪に向かう。
「ぶもっ! ぶほっ!!」
……面白いくらいに跳ね返されるね。
魔猪は、ぼくが放った炎の球など苦にもせずにその牙で脇へと跳ね返してしまう。
――火も、泥も効かないとなると、光で奴の目を、それとも麻痺魔法でなら……!?
ぶつぶつと、出口の見えない考えをしていたぼくの懐で、何やらもぞもぞと動くものがあった。
「……ぱぅっ」
フェウだった。
ボォォォォォォォォォォォォッッッ!!!
ぼくが放って跳ね返された火の球に覆い被せるようにして、フェウの口から極大の炎が出たのだ。
フェウが、意図的に炎魔法を使った瞬間を、ぼくは見逃すことはなかった!
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