ぼくの万能魔法で、フェンリルの子を最強のもふもふに育てあげたいと思います。

榊原モンショー

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初めてのダンジョン攻略!

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 ――ダンジョン。

 それは冒険者ギルドに所属する者にとっては憧れの土地である。
 最深階層を突破すれば、その地に眠る金銀財宝、希少種魔物の素材が選り取り見取りに手に入るからだ。
 だが、どこにでもあるものではなく識者の見解に寄れば、それは一種の固定型魔物・・・・・ではないかとされている。 
 ダンジョンが出現して日数が経てば経つほど内部は成長していく。この様子はまさに生物構造とほとんど似通っているからだ。

 そんな生物的なダンジョンだからこそ、出現はとても偶発的でどんな専門家でも予想することは出来ない。
 都市近郊にダンジョンの入り口が現れることもあれば、数年前には首都のド真ん中にも現れたことがあるらしい。

 その時は幸い低ランク程度のダンジョンだったらしく、辺りに被害まではもたらさなかったようだ。
 高難度のダンジョンだった場合、漏れ出た瘴気が空中を漂って辺りの草木を枯らしたり、動物の生態系を変化させたりする弊害もあるためにこうしてクレアさんのような冒険者ギルド所属の人に、ダンジョン攻略依頼が届けられるようになったんだとか。

 攻略して、最奥の財宝――いわば、ダンジョンの『核』を引き抜けばそのダンジョンはいとも容易く崩落する。
 こういったことから、ダンジョン攻略のスペシャリストもいるらしいが、今回のダンジョンはそんなに高難度のものでもないことからクレアさんに白羽の矢が立ったということだ。

 ぼくとフェウの歓迎会から一夜明けた早朝。
 ギルドのみんながまだ寝静まっている頃に、ぼくはクレアさんに起こされた。

 ――おい、レアル。さっさとダンジョン攻略するぞー。

 ――い、今からですか!?

 ――そりゃそうだ。ダンジョンは現れたら即消滅させるに限る。ほら、市街地のK地点だ。出撃るぞー。

 ――まだ日の光も出ていないんですけど……。

 ――でもフェウは元気そうじゃないか。な、フェウ!

 ――ァォン!!

 ――ま、マジですか……。

 こんなやり取りの後のⅠ時間後。
 既にぼく達は任務受注書に記載されていた首都郊外のK地点にやってきていた。
 クレアさんから受け取った受注書に書いてあるそれは、至って簡潔な記載で。

「推定ランクC、三階層ほどの地下収縮型――通称壺型ダンジョンの存在を確認。全体に強烈な冷気が漂うことから『氷結の壺フローズン・ポット』と命名。今の所瘴気漏れ、魔物漏れもないため地上への影響力はないと思われるものの、近隣住民の不安を鑑みて出来るだけ早く駆除されたし、ですか。出現は昨日、成長指数2%未満……。これなら、第一階層くらいならぼくでも――!」

 そんなぼくの隣。
 空洞になっているダンジョンの入り口に手をついてしゃがむ一人の女性がいた。

「――頭、いだい」

 ガラガラ声でクレアさんはぽつりと呟いた。
 どうやら昨日の宴がまだ残っているようだった。
 先ほどまでの威勢はどこに行ったんだろう。

「い、今からでも引き返しませんか? そんな状態で、本当に戦えるんですか……?」

 ぼくと同じように、フェウも少し心配そうにクレアさんを覗き込む。

「……わ、わふぅ……」

「あァ、そこは心配いらねェよ。ダンジョンに潜って瘴気に充てられてちったぁ酔いも覚めるってもんさ」

「しょ、瘴気に充てられればって、そんな無茶苦茶な――」

 瘴気って、長期間充てられ続ければ魔物になっちゃうっていう危険な空気の事だっていうのは聞いたことがある。
 それを浴びて酔いを覚ますって、何て強引な人なんだ……!?

 それでも――。
 ぼくは昨日の宴で言われた他の冒険者さん達の助言を思い出していた。

 ――ま、クレアの姉貴に付いてきゃ死ぬことはねェさ。
 ――だな。何たって、魔狩りと称されるほどに魔物討伐に関しちゃ右に出る者はいねぇんだからな!
 ――クレアの姉貴はやっぱめっちゃ強いんだぜ!! 魔狩りの名の通り、魔物をズッタンバッタン屠ってく様は、それはそれは格好いいんだ!

 みんな、クレアさんへの信頼感は抜群だったのだ。
 いかにクレアさんがみんなを乱暴に言おうが、いかにみんながクレアさんに乱暴な扱いをされようが、そこだけは唯一変わらない。
 それどころか、中央ギルド所属のクレアさんが首都支部ギルド『アスカロン』の冒険者を魔物から助けた、なんて話は至る所から出てきたのだ。
 
 みんな、クレアさんに救われていた。みんなが、クレアさんを慕っていた。

「大丈夫だ」

 クレアさんは、ポンとぼくの頭に手を置いた。

「レアルとフェウは、何としてでもわたしが守る。二人は、二人が為せることをやってくれればそれでいい」

 そう言ってくれるクレアさんは、酔っているなんて思わないほどに、純粋にとても格好良かった。

 ぼく達の役割は複雑な構図をしているダンジョン内の地図化マッピング
 手に持った地図板マッピングボードに、通った道を正確に記載していくというものだ。
 ダンジョン攻略にはこうした地図化マッピング要員が必須なんだけど、これを使える職業は盗賊シーフ職と案内犬マッピングドッグを手元に置いた獣使いテイマー職くらいしかないのだとか。
 
 とはいえ、通った道を確実に記載するだけだし、今回のダンジョンは三階層と比較的浅いことからEランクほどの実力があれば――つまり、万能魔法使いのぼくにも出来る。
 実際、フェウは案内犬マッピングドッグじゃないから地図化マッピング業務は出来ない。
 フェウの仕事というよりは、ぼくの仕事になってくる。
 ……クレアさんを失望させないように、ぼくが頑張らないと――!
 
「んじゃ、行くぜ。午前六時三十分。ダンジョン名『氷結の壺フローズン・ポット』――攻略開始だ」

 こうしてぼくの、初めてのダンジョン攻略が始まった!




「この世の魔物は、わたしが一匹残らずぶちのめしてやる……。見ててくれよな、ポゥ吉」



 ふと、入り口に入る際に聞こえてきたクレアさんの独り言は、ぼくにはまだ届かないでいた――。
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