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10.取引しましょ?
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カラカラカラ……と。
軽快に馬車は駆けてゆく。
とても一行商人とは思えないほどには内装が整った馬車は、揺れることすらほとんどない。
いつも積み荷と一緒に乗せられていたガッタガタの木造馬車とは大違いだ。
「ふ~ん、これが精霊……。触れもしないじゃない。こんなのが、本当にあの……数百年も誰も見たことがない精霊だっていうの……?」
目の前に座るヴォルカは興味深そうに何度もシーファへの接触を試みる。
『精霊への接触を試みるならば魔石を持ってくることね。それこそ、ワイバーン級から採れる魔石ならば全身くまなく触れるわよ。あなたが倒せるならの話だけど』
「ラクト。今からもう一頭ワイバーン倒してくれないかしら。50万リールは出すわ」
「そんな簡単にAランク魔獣がボコボコ出てきてたまるか。というかそんな大金どうやって調達するつもりだ」
「その気になれば何でも出来るわよ。商人だもの」
俺たちは今、シーファが指し示した町である『ラック港』へと向かっていた。
精霊と魔石は深い関わりを持つ。
ユグドラシルという精霊たちの絶対的な魔力源がなくなった今、魔獣から回収出来る魔石を辛うじて存在源とする精霊も多く存在するという。
先ほどワイバーンから採れた魔石は全て火の下位精霊、サラマンダーへと譲渡された。
消えかかる寸前だったサラマンダーは魔石に包まれた魔力おかげで無事ことなきを得た。
「グファー……グファー……」
サラマンダーは青白い炎を宿した尻尾をパタパタと振りながら夢の中だ。
このように魔石を欲する精霊は、俺たちが知らないだけでも相当な数存在しているらしい。
特にここ数十年は、下位精霊だけでなく中位や高位・はてはシーファのような超常精霊でさえも魔力不足に耐えきれず消失する者が出ているほどに問題は深刻だという。
『そこで、この魔石が役に立つの。私はラクトと精霊契約を結んだから、ラクトの生命が尽きるまでは魔石無しでも存在だけは出来るわ。でも、他の精霊は違う。高位の精霊になればなるほど、存在するための魔力の量もより多くなるわ』
シーファの言に、ヴォルカも続く。
「要するに、その魔力欲しさで高位精霊が無意識にも魔石を求めてうっすい念波を送ってくるってこと?」
『えぇ。ラクトが狩りきった魔石も合わされば相当な魔力になるわ。最初はサラマンダーが発した念波かと思ったけども、下位精霊が求める念波ではないわ。少なくとも中位精霊以上ね』
中位精霊ってことは……シーファが語ってくれた精霊形態で言うと、意識を持ったヒト型の精霊ってことになるな。
『そして街道に現れた火の下位精霊サラマンダー。火属性の精霊が姿を見せたってことは、消えかけているのは恐らく、火属性系の精霊ね。こうなった以上、属性派閥の域を超えてユグドラシル捜索に向かわなければいけないことは承知のはずよ』
「火属性の精霊か……。…………良いな」
「もしかしてアンタたち、以外と利害の一致で組んでるパターンね?」
ヴォルカがなかなかに鋭かった。
俺は俺で、俺の『器』とやらが満ち満ちになるまで可愛い女の子精霊を救って契約。ウハウハイチャイチャ出来ればそれで満足だ。
対してシーファは『ユグドラシル』への手がかりを掴むために少しでも精霊の人手は欲しい。
これぞまさしくウィンーウィンってやつだな!
「じゃ、多分蚊帳の外であろう私から提案よ。この先アンタたちが町やギルドを越えて動くタイプの生活になるのなら、きっと役に立つわ」
ヴォルカが足を組んで、懐から一枚のカードを取り出した。
大鷲《おおわし》を象った、白銀のカードだ。
「アーヴィング商会が認めた者だけに渡してるカードよ。私たちが商路を受け持つ場所であれば大体の受注任務が通るわ」
「へぇ。そりゃ便利だ」
「少なくとも次行く場所は私たちも懇意にしている場所だから使えるんじゃない? いちいち冒険者ギルドの実力試験から受けるのも面倒でしょ?」
「あぁいうギルドの試験ってのは少なくとも一週間はかかったりするからな。次のとこで使えるなら大助かりだ」
ヴォルカが差し出してきたカードを受け取ろうとすると――。
「ただし、私は商人よ。取引しましょ? ラクトロード・アヴローラさん」
彼女はにやりと笑みを浮かべてカードを引っ込めた。
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お気に入り登録など、大変嬉しいです。ありがとうございます。
もし面白かった!続きも頑張れ!などあれば感想なども頂けると大変モチベーションに鳴って嬉しいです……!
今後もよろしくお願いします。
軽快に馬車は駆けてゆく。
とても一行商人とは思えないほどには内装が整った馬車は、揺れることすらほとんどない。
いつも積み荷と一緒に乗せられていたガッタガタの木造馬車とは大違いだ。
「ふ~ん、これが精霊……。触れもしないじゃない。こんなのが、本当にあの……数百年も誰も見たことがない精霊だっていうの……?」
目の前に座るヴォルカは興味深そうに何度もシーファへの接触を試みる。
『精霊への接触を試みるならば魔石を持ってくることね。それこそ、ワイバーン級から採れる魔石ならば全身くまなく触れるわよ。あなたが倒せるならの話だけど』
「ラクト。今からもう一頭ワイバーン倒してくれないかしら。50万リールは出すわ」
「そんな簡単にAランク魔獣がボコボコ出てきてたまるか。というかそんな大金どうやって調達するつもりだ」
「その気になれば何でも出来るわよ。商人だもの」
俺たちは今、シーファが指し示した町である『ラック港』へと向かっていた。
精霊と魔石は深い関わりを持つ。
ユグドラシルという精霊たちの絶対的な魔力源がなくなった今、魔獣から回収出来る魔石を辛うじて存在源とする精霊も多く存在するという。
先ほどワイバーンから採れた魔石は全て火の下位精霊、サラマンダーへと譲渡された。
消えかかる寸前だったサラマンダーは魔石に包まれた魔力おかげで無事ことなきを得た。
「グファー……グファー……」
サラマンダーは青白い炎を宿した尻尾をパタパタと振りながら夢の中だ。
このように魔石を欲する精霊は、俺たちが知らないだけでも相当な数存在しているらしい。
特にここ数十年は、下位精霊だけでなく中位や高位・はてはシーファのような超常精霊でさえも魔力不足に耐えきれず消失する者が出ているほどに問題は深刻だという。
『そこで、この魔石が役に立つの。私はラクトと精霊契約を結んだから、ラクトの生命が尽きるまでは魔石無しでも存在だけは出来るわ。でも、他の精霊は違う。高位の精霊になればなるほど、存在するための魔力の量もより多くなるわ』
シーファの言に、ヴォルカも続く。
「要するに、その魔力欲しさで高位精霊が無意識にも魔石を求めてうっすい念波を送ってくるってこと?」
『えぇ。ラクトが狩りきった魔石も合わされば相当な魔力になるわ。最初はサラマンダーが発した念波かと思ったけども、下位精霊が求める念波ではないわ。少なくとも中位精霊以上ね』
中位精霊ってことは……シーファが語ってくれた精霊形態で言うと、意識を持ったヒト型の精霊ってことになるな。
『そして街道に現れた火の下位精霊サラマンダー。火属性の精霊が姿を見せたってことは、消えかけているのは恐らく、火属性系の精霊ね。こうなった以上、属性派閥の域を超えてユグドラシル捜索に向かわなければいけないことは承知のはずよ』
「火属性の精霊か……。…………良いな」
「もしかしてアンタたち、以外と利害の一致で組んでるパターンね?」
ヴォルカがなかなかに鋭かった。
俺は俺で、俺の『器』とやらが満ち満ちになるまで可愛い女の子精霊を救って契約。ウハウハイチャイチャ出来ればそれで満足だ。
対してシーファは『ユグドラシル』への手がかりを掴むために少しでも精霊の人手は欲しい。
これぞまさしくウィンーウィンってやつだな!
「じゃ、多分蚊帳の外であろう私から提案よ。この先アンタたちが町やギルドを越えて動くタイプの生活になるのなら、きっと役に立つわ」
ヴォルカが足を組んで、懐から一枚のカードを取り出した。
大鷲《おおわし》を象った、白銀のカードだ。
「アーヴィング商会が認めた者だけに渡してるカードよ。私たちが商路を受け持つ場所であれば大体の受注任務が通るわ」
「へぇ。そりゃ便利だ」
「少なくとも次行く場所は私たちも懇意にしている場所だから使えるんじゃない? いちいち冒険者ギルドの実力試験から受けるのも面倒でしょ?」
「あぁいうギルドの試験ってのは少なくとも一週間はかかったりするからな。次のとこで使えるなら大助かりだ」
ヴォルカが差し出してきたカードを受け取ろうとすると――。
「ただし、私は商人よ。取引しましょ? ラクトロード・アヴローラさん」
彼女はにやりと笑みを浮かべてカードを引っ込めた。
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