佐藤さん、加藤くん

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一発だけ

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・・・

ふと目が覚めた。
すぐ目の前には大きな木。
これは杉の木だろうか。
前に森近くんが言っていた。
校舎裏には大きな杉の木が
三本生えてるって。
ということは、
ここは校舎裏なのかな?

「目覚めた?花ちゃん」

「っ……千凪くん…」

どこに行ったのかと思えば
木の影で隠れてたのか。
口に詰められたネクタイは
彼の足元に転がっている。
おかげで呼吸が楽だ。

「千凪くん…私を
どうしたいの?」

私がそう問いかけると、
千凪くんは微笑んだ。

「決まってんじゃん。
花ちゃんを俺の彼女に
したいわけ!」

「でも私、千凪くんのこと
嫌いだよ?」

「好きじゃないから嫌いに
変わっちゃったな~
でも俺の彼女にするよ」

一歩も退こうとしない。
決定権は全て千凪くんが
持っていて、私の意見は
きっと受け入れてくれない
のかもしれない。
ならどうやってこの状況から
抜け出せばいいの?
私にはわからない。
こんなことになるなら
無理言って玲奈ちゃんたちに
ついてきてもらえば…

「……なんだあいつら」

「え…?」

千凪くんは突然立ち上がって
向こうへと行ってしまった。
一体どうしたのだろうかと
思っていたその時・・・
































・・・

見つけた。
木の影から出てきた千凪を
見つめて俺は思った。
佐藤さんはきっと後ろの
木にいるのだろう。
この見晴らしのいい校舎裏に
身を隠させるのにはあの木
くらいしかないしな。

「なんだよ竹坂、加藤。
ここに何の用だ?」

「その言葉、
そっくりそのまま
お前に返すよ。」

「……佐藤さんを返せ」

「返せだぁ?
元からお前のもんじゃ
ないだろうが馬鹿!」

「千凪のものでもないだろ。
とにかく、これ以上
佐藤さんに手を出すな。」

そうこう言い合いしていたら
木の影から佐藤さんが顔を
出し、こっちを見ていた。

「!!佐藤さん!」

「加藤くん!竹坂くん!」

俺たちの名前を呼ぶと
佐藤さんは走り出した。
呆気にとられていた千凪も
事態を把握して佐藤さんを
捕まえようとしたが、
竹坂に足を引っ掛けられ
盛大に転けた。

「加藤くん!!」

「さ、佐藤さん…!」

佐藤さんは勢い余って
俺の胸に飛び込んできた。

「加藤…佐藤さんを頼んだ」

「おいごら加藤!!
てめぇざけんな!!
花ちゃんを返せ!
返してくれるなら
お前の秘密守ってやるぜ!」

「は?加藤の秘密?」

突然そう言った千凪に
竹坂の表情は曇った。

「ああそうだ!
あいつはなぁ、
前の学校で…」

「千凪!!!」

思わず俺は叫んでしまった。
竹坂と佐藤さんが俺を見た。
だが俺の目に映っているのは
千凪、ただ一人だ。

「竹坂、佐藤さんと先に
教室行っててくれ…
俺がそいつ殴りたい。」

「加藤……分かった。
ほどほどにな!」

そう言って竹坂は
佐藤さんを連れて
教室へ戻った。
ここに残っているのは
俺と千凪だけ。
どんなに吐かれようが
もう怖くはない。

「やっぱり秘密に
してたんだな…?
不良上がりさんよぉ!」

「…竹坂たちは知らなかった
何でお前は知ってるんだ?」

「朝井高校ってさ、
結構可愛い娘いるじゃん?
そんで一回、こっそり
忍び込んだんだけどさ、
その時聞いたんだよね。」

「千凪……」

「悪さして謹慎してる
お前の噂をさぁ!!!」

そう言った瞬間、
俺は千凪を殴っていた。

「ってぇ…流石は不良さんな
だけあるな加藤!」

「…へらへらしやがって…
わかってんだろうな…
千凪ぃぃぃ!!!!」

「え、ちょっま…」

怯えた顔をして怯む千凪に
俺は重く蹴りを入れる。
鳩尾に一発。入りすぎない
ように調整して。
千凪は『ひゅっ』と
声を出して噎せた。
本当はもう一発入れたい
ところだが、これ以上は
千凪も危ない。
だからここで止める。

「千凪…次ふざけたこと
抜かしたらもうチャンスは
ないと思っとけ……」

千凪は泣きじゃくりながら
首を何度も上下に振った。

「悪い、ちょっとやり過ぎた
な……保健室行くぞ。」

俺は千凪の腕を肩にまわし、
担いで保健室へ向かった。
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