一年付き合ってるイケメン彼氏ともっと深い関係になりたいのに、あっちはその気がないみたいです…

ツキノトモリ

文字の大きさ
1 / 5

第一話

しおりを挟む

彼は私と付き合っていて楽しいのだろうか。
もっと深い関係になりたいと思っているのは私だけなのだろうか……。




私、トルドラ伯爵家の長女、ウラリーには恋人がいる。その恋人はクビーク伯爵家の次男・ビクトル。綺麗な顔立ちをしていて性格も優しく、私の大好きな人だ。特に好きなのが彼の赤い瞳である。ルビーのようにキラキラとしていて美しく、その目に見つめられると胸が高鳴ってどうにかなってしまいそうだ。
こんな素敵な人と交際している私は本当に幸せ者だと思う。
なぜビクトルのような人が私と付き合っているのかというと、私が彼にガツガツいったからだ。
私と彼が出会ったのは、貴族の子女が多く在籍する学校の入学式。彼は高身長でイケメンなのでその時から目立っていて、私はすぐに恋に落ちた。でも、彼のような人が私なんかを好きになるとは思えない。どうせ付き合えるはずはないと思っていたのに、出会ってから半年経った頃にビクトルから告白された。

「一目惚れしたんだ。俺と付き合ってください」

そう告白してくれたビクトルの顔は真っ赤だったので、彼が悪ふざけではなくて本気で私に告白してくれたのだと分かった。
いやいや、でも彼が私のことを好き?こんなことがあり得るのだろうか?!
私の頭の中は大混乱で、返事をするのが遅れてしまった。

「ウラリーさん、付き合えないならはっきりと言ってくれて構わないから、返事をくれないかな」

ビクトルが申し訳なさそうに返事を催促した。私は慌てて返事をしたので、

「あっ、ひゃい、よろひくおねがいしましゅ」

と盛大に噛んでしまった。ああ、恥ずかしい。私は口元を手で押さえて俯いたが、フフッという笑い声が聞こえたので顔を上げた。

「可愛いね、君は。では、これからよろしくね」

ビクトルが私の方に手を差し伸べる。私はその手を取った。
これが私とビクトルが交際を始めたきっかけだ。

恋人になったビクトルは優しく、私にはもったいないくらい理想の恋人だった。だからこそ、私はどんどんビクトルのことが好きになっていって、彼が隣にいる時は緊張で体がカチコチに強張ってしまう。それでも、ビクトルは笑って「緊張しなくて良いんだよ」と柔らかく甘い声をかけてくれるのだ。
私のことを「ウラリー」と呼んでくれる声が好きだし、私が「ビクトル」と名前を呼ぶと嬉しそうな顔をしてくれるから胸が温かくなる。
あまりにも幸せすぎて、彼との交際に対して不安を抱いたことはなかった。
来月で付き合って一年記念だし、ビクトルに何かプレゼントしようなんて考えていたら……。

「ウラリーちゃんってビクトルさんとはどこまで進んだの?一年くらい付き合ってるんだからキスはしたのよね?」

と、友達のミラナに言われて目が覚めた。
私はビクトルと一年も付き合っているのに、キスをしたことがないのだ。

「キス……したことないの」
「え?一年も付き合っているのに?」
「うん。そうなの。一年も付き合っているのにキスをしたことがないのっておかしいかな?」
「おかしいとは思わないわよ。きっと、ビクトルさんは慎重なタイプなんでしょうね。それに、ウラリーちゃんはビクトルさんといる時緊張でガチガチになっているから、ゆっくりと関係を進めていこうって考えているんじゃないのかな?」

友達が慰めの言葉をかけてくれる。
けれど。

「それって、ビクトルに我慢させているかもしれないってこと?」

ビクトルに我慢なんてさせたくない。でも、もしそうなら彼に申し訳ない。とは言え、ビクトルとキスするのを考えるだけで気絶しそうになってしまう。
一体、私はどうしたら良いのだろうか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

イケメン恋人が超絶シスコンだった件

ツキノトモリ
恋愛
学内でも有名なイケメン・ケイジに一目惚れされたアイカ。だが、イケメンはアイカ似の妹を溺愛するシスコンだった。妹の代わりにされてるのではないかと悩んだアイカは別れを告げるが、ケイジは別れるつもりはないらしくーー?!

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜

矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。 王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。 『…本当にすまない、ジュンリヤ』 『謝らないで、覚悟はできています』 敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。 ――たった三年間の別れ…。 三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。 『王妃様、シャンナアンナと申します』 もう私の居場所はなくなっていた…。 ※設定はゆるいです。

“妖精なんていない”と笑った王子を捨てた令嬢、幼馴染と婚約する件

大井町 鶴
恋愛
伯爵令嬢アデリナを誕生日嫌いにしたのは、当時恋していたレアンドロ王子。 彼がくれた“妖精のプレゼント”は、少女の心に深い傷を残した。 (ひどいわ……!) それ以来、誕生日は、苦い記憶がよみがえる日となった。 幼馴染のマテオは、そんな彼女を放っておけず、毎年ささやかな贈り物を届け続けている。 心の中ではずっと、アデリナが誕生日を笑って迎えられる日を願って。 そして今、アデリナが見つけたのは──幼い頃に書いた日記。 そこには、祖母から聞いた“妖精の森”の話と、秘密の地図が残されていた。 かつての記憶と、埋もれていた小さな願い。 2人は、妖精の秘密を確かめるため、もう一度“あの場所”へ向かう。 切なさと幸せ、そして、王子へのささやかな反撃も絡めた、癒しのハッピーエンド・ストーリー。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。

【完結】オネェ伯爵令息に狙われています

ふじの
恋愛
うまくいかない。 なんでこんなにうまくいかないのだろうか。 セレスティアは考えた。 ルノアール子爵家の第一子である私、御歳21歳。 自分で言うのもなんだけど、金色の柔らかな髪に黒色のつぶらな目。結構可愛いはずなのに、残念ながら行き遅れ。 せっかく婚約にこぎつけそうな恋人を妹に奪われ、幼馴染でオネェ口調のフランにやけ酒と愚痴に付き合わせていたら、目が覚めたのは、なぜか彼の部屋。 しかも彼は昔から私を想い続けていたらしく、あれよあれよという間に…!? うまくいかないはずの人生が、彼と一緒ならもしかして変わるのかもしれない― 【全四話完結】

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

処理中です...