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本編
戻ってきた平和と小さな別れと
三連休の最終日。
ナナセはフランセン邸を訪れていた。
久しぶりに味わう、家令のクライブが淹れた紅茶とシフォンケーキ。
次から次へと事件に巻き込まれるナナセに、生きた心地がしない。
そんなお小言さえ、再び顔を見れた今だけは嬉しかった。一度はもう会えないかもしれないと諦めていたから。
至福の時に、ナナセはほうと息をついた。
「ところでこのシフォンケーキ、もしかしてレモンが入ってます?」
「ナナセさん。そうやって誤魔化すところは、ご主人様に似てきましたね……」
「レムンドさんに似てきたなんて縁起でもない。誤魔化しじゃなくて、どんどんおいしく進化してるから本気で驚いてるんですよ」
「……まぁ、香り付け程度ですが。お口に合ったのならよかったです」
フレーバーのシフォンケーキを教えたのはナナセだが、一を聞いて十を知る有能な使用人達だ。これからもっとおいしくなるだろうと期待も膨らむ。
「もうすぐ秋の果物が出回りますので、ぜひ次は間を置かず帰って来てください」
こちらの世界では、夏の終わり頃に収穫する洋梨に似た果物が秋の味覚だ。一体どんなシフォンケーキになるのだろう。
「それはまた、レムンドさんの催促よりも手強い誘惑ですね」
「ご主人様はむしろ、帰りたくなるようなことしかおっしゃらないですから」
「気付いてましたか、クライブさん……」
互いの苦労を労り合っていると、わざとらしい咳払いが横やりを入れる。
もちろんレムンドだ。
「こんな老いぼれの悪口で盛り上がるとは、何と冷たいことか……」
いかにも弱々しげな風情に、ナナセもクライブも半眼になる。
正直、突っ込む気にもなれない。
ナナセは、あえて何でもない会話の延長線のように口を開いた。
「そういえば、レムンドさん。もう、帰る方法は探さなくていいですから」
気負いなく言えたことに自身で安堵する。
寂しさやほんの少しの後悔にも、きちんと折り合いが付けられている。
沈黙が下り、二人は見つめ合う。
込み入った話になることを予期し、クライブが静かに退室していく。
レムンドは、髭を撫で付けながら静かに頷くだけだった。色々質問攻めにされるかと思っていたので少々意外だ。
「やはりリオルディス殿、か」
「……何で知ってるんですか!?」
あまりに自然に言うから、反応が遅れた。
リオルディスと想いを伝え合い正式に交際をはじめたのは、終業後からこの三連休にかけてのことだ。
どこに密偵を潜ませていたら、こんなにも早く情報を掴むことができるのか。
レムンドはのんびりと笑って答える。
「さすがに、二人の関係がどこまで進んだかは儂でも分からないぞ?」
「そそそうですよ! そういうことは明け透けに聞くものじゃ……って反応から推測しようとしないでください!」
好好爺然とした笑みの下に隠した鋭い眼光が、真っ赤になって焦るナナセをしっかりと観察していた。
リオルディスもナナセもとっくに成人している上に、互いに独身。後ろめたいことは一つもないが、何かがバレそうで怖い。
「全く油断も隙もない……」
落ち着きを取り戻して再び椅子に座るナナセに、レムンドは一転優しく相好を崩した。
「……ナナセちゃん、本当によかったのう。心から信頼できる相手を、こちらの世界で見つけることができて。儂としても肩の荷が下りたような気持ちじゃ」
彼が心から喜んでくれるのは、家族としての絆があるからこそ。
そう思えばどこか面映ゆくなって、ナナセは視線をずらしてはにかむ。
「で、いつ入籍するんじゃ?」
「……え」
「誘拐事件が起きてしまったこと自体はまことに遺憾じゃが、今回の件で侍女の実力はさらに認められるようになるだろう。この機会を逃す手はない。ナナセちゃんとリオルディス殿がすぐさま結婚し、それでも侍女として働き続ける見本を示すことによって、ようやく儂の悲願が――」
「結婚なんてまだ考えてもいません!」
滔々と持論を展開するレムンドを、ナナセは慌てて遮った。
このまま後見人の思惑に流されたら、今後とてつもなく追い詰められてしまうような気がする。不安の芽はここできっちり断ち切らねばならないと、本能が告げていた。
「私だって結婚願望がないわけじゃないです。けど、そういったかたちに捕らわれる必要もないかなとも思っていて」
リオルディスと結婚し、子どもを生み温かな家庭を築く。
それはとても幸せなことだろうし、いずれは実現させたいと、ナナセ自身が強く願うようになるかもしれない。
けれど全ては、まだまだ先のこと。
「この世界では身寄りのない私に、たくさんのものを与えてくださったレムンドさんの期待を裏切るかたちになってしまうことは非常に心苦しいのですが、結婚に関してはしっかりきっぱりお断りさせていただきます!」
侍女として培われた完璧な礼をみせるも、レムンドは諦めなかった。
「だが先ほど、『まだ』と言ったな。ということは、リオルディス殿との結婚も視野に入れておるんじゃろ?」
「そりゃあ、好きな相手とのことですから。でも今は、もっと仕事に打ち込んでいたいんです。だから、すみません」
重ねて断るが、彼はなおも食い下がろうとする。何と諦めの悪い。
「実力と能力が伴うようになるには数年がかかるというのに、この国には一人前になる前に辞めてしまう侍女があまりに多いと思わんか? 人材は宝じゃ。このまま事態を放置していれば、いずれ引き継がれるべき知識も喪失してしまうかもしれん。今こそ、働き方改革が必要なんじゃ……!」
それはナナセも危惧するところだが、だからといって一介の侍女にできることはない。
シフォンケーキをすっかり平らげると、ナナセは立ち上がった。
「レムンドさん。私を結婚させるより、国王陛下に上奏した方がずっと近道だと思いますよ。そうして女性が働きやすい環境を、少しずつ作っていくんです」
脅されようが泣き落としをされようが、断固として受け入れるつもりはない。
そう言外に告げれば、レムンドは今度こそテーブルに突っ伏した。
明日からはまた忙しい日々。
連休明けというのは、学生だろうと社会人だろうと怠惰になりがちだ。気を引き締めて仕事に取り組まねばならない。
もはやレムンドの嘆きなど頭から閉め出し、ナナセは出勤方法について考える。
フランセン家が後見についていることはもはや公然の秘密のようになっているが、平民の立ち位置を貫くためには辻馬車を拾うべきだろう。少し早く屋敷を出るべきか。
部屋を出たところで、情けないレムンドの声が追いすがってきた。
「なぜじゃ、ナナセちゃん……!」
ナナセは扉の向こうでにっこり微笑んだ。
「――だって産休制度とか休業補償とか、ないじゃないですか」
パタリ。
無情にも扉は閉じられる。
世にも悲痛な叫びが、昼下がりのフランセン邸に響き渡った。
◇ ◆ ◇
ヴァンルートスを乗せた馬車が、ぐんぐんと遠ざかっていく。
今日は、王宮に逗留していた少年が、ディシェンド王国に帰国する日だ。
リリスターシェの私室から見送っているのは、誘拐事件のきっかけを作ったとして殿下方が謹慎を言い渡されているため。
期限は定められておらず、公式行事以外の外出も認められていない。
これまでずいぶん大目にみてきた国王陛下にしては、かなり厳しい罰だ。
リリスターシェも、昨晩催された送別の宴にて別れの挨拶を済ませている。
近い内に会う約束をしたらしいので、必要以上に悲しむことはないだろう。今生の別れでもない。
……そう、頭では分かっていても、寂しいものは寂しい。
それが会えなくなるということ。
窓に張り付いたままの小さな背中に、ナナセは吐息のような笑みをこぼす。馬車はほとんど豆粒のようになっていた。
「寂しくなりますね、リリスターシェ様」
「ナナセ……」
振り返った少女の鼻は、少し赤くなっていた。必死に涙を堪えているのだろう。
ナナセは手を伸ばし、リリスターシェを優しく抱き締めた。
幼い手が必死にしがみついてくれるのが、何とも可愛らしい。
「またすぐに会えますよ」
「……うん」
「それまでに、お菓子作りの腕をもっと磨いておきましょう。ヴァンルートス殿下もきっと驚くことでしょう。私も微力ながらお手伝いいたします」
「うん。ありがとう……」
手近に分かりやすい目標があれば、寂しさも紛れることだろう。
金色の細く柔らかい髪を慎重に撫でながら、リリスターシェが落ち着くのを待つ。非礼な態度だが侍女長からの叱責はなかった。
しばらくして顔を上げたリリスターシェは、かろうじて涙を堪えきったようだ。
若葉のような緑の瞳は充血しているけれど、頬に涙の跡はない。
「そういえば、ナナセ。さっき、『リリスターシェ様』って……」
窺うように訊ねられ、ナナセは頷き返す。
「不敬でしたでしょうか?」
「いいえっ、とっても嬉しいわ!」
リリスターシェはぶんぶんと首を振り、本当に嬉しそうに笑った。
「不思議ね……あなたどこか、雰囲気が柔らかくなった気がするわ。最近、いいことでもあったのかしら?」
首を傾げる王女に、いつの間にか近付いていたエビータが耳打ちをする。
「もしかしたら、リオルディス様との関係に変化があったのかもしれません」
「まぁっ、それは由々しき事態だわ! じっくり聞き出すためにも、すぐにお茶の準備をしなくてはね!」
先ほどまでの萎れた様子が嘘のように、リリスターシェは元気いっぱい動き出す。思わずエビータと顔を見合わせ笑ってしまった。
おそらく、王女に元気を出してもらうための作戦だったのだろう。
「お見事です。さすが、長年お仕えしているだけありますね」
「あなたの恋のお話を根掘り葉掘り聞きたいのは、紛れもない本音ですよ」
「えぇ……」
なぜ、侍女長にまで勘づかれているのか。
リリスターシェの明るい笑みを見られたことは喜ばしいが、長引く尋問に疲れ果てたナナセは、そう恨みがましく思わずにいられなかった。
ナナセはフランセン邸を訪れていた。
久しぶりに味わう、家令のクライブが淹れた紅茶とシフォンケーキ。
次から次へと事件に巻き込まれるナナセに、生きた心地がしない。
そんなお小言さえ、再び顔を見れた今だけは嬉しかった。一度はもう会えないかもしれないと諦めていたから。
至福の時に、ナナセはほうと息をついた。
「ところでこのシフォンケーキ、もしかしてレモンが入ってます?」
「ナナセさん。そうやって誤魔化すところは、ご主人様に似てきましたね……」
「レムンドさんに似てきたなんて縁起でもない。誤魔化しじゃなくて、どんどんおいしく進化してるから本気で驚いてるんですよ」
「……まぁ、香り付け程度ですが。お口に合ったのならよかったです」
フレーバーのシフォンケーキを教えたのはナナセだが、一を聞いて十を知る有能な使用人達だ。これからもっとおいしくなるだろうと期待も膨らむ。
「もうすぐ秋の果物が出回りますので、ぜひ次は間を置かず帰って来てください」
こちらの世界では、夏の終わり頃に収穫する洋梨に似た果物が秋の味覚だ。一体どんなシフォンケーキになるのだろう。
「それはまた、レムンドさんの催促よりも手強い誘惑ですね」
「ご主人様はむしろ、帰りたくなるようなことしかおっしゃらないですから」
「気付いてましたか、クライブさん……」
互いの苦労を労り合っていると、わざとらしい咳払いが横やりを入れる。
もちろんレムンドだ。
「こんな老いぼれの悪口で盛り上がるとは、何と冷たいことか……」
いかにも弱々しげな風情に、ナナセもクライブも半眼になる。
正直、突っ込む気にもなれない。
ナナセは、あえて何でもない会話の延長線のように口を開いた。
「そういえば、レムンドさん。もう、帰る方法は探さなくていいですから」
気負いなく言えたことに自身で安堵する。
寂しさやほんの少しの後悔にも、きちんと折り合いが付けられている。
沈黙が下り、二人は見つめ合う。
込み入った話になることを予期し、クライブが静かに退室していく。
レムンドは、髭を撫で付けながら静かに頷くだけだった。色々質問攻めにされるかと思っていたので少々意外だ。
「やはりリオルディス殿、か」
「……何で知ってるんですか!?」
あまりに自然に言うから、反応が遅れた。
リオルディスと想いを伝え合い正式に交際をはじめたのは、終業後からこの三連休にかけてのことだ。
どこに密偵を潜ませていたら、こんなにも早く情報を掴むことができるのか。
レムンドはのんびりと笑って答える。
「さすがに、二人の関係がどこまで進んだかは儂でも分からないぞ?」
「そそそうですよ! そういうことは明け透けに聞くものじゃ……って反応から推測しようとしないでください!」
好好爺然とした笑みの下に隠した鋭い眼光が、真っ赤になって焦るナナセをしっかりと観察していた。
リオルディスもナナセもとっくに成人している上に、互いに独身。後ろめたいことは一つもないが、何かがバレそうで怖い。
「全く油断も隙もない……」
落ち着きを取り戻して再び椅子に座るナナセに、レムンドは一転優しく相好を崩した。
「……ナナセちゃん、本当によかったのう。心から信頼できる相手を、こちらの世界で見つけることができて。儂としても肩の荷が下りたような気持ちじゃ」
彼が心から喜んでくれるのは、家族としての絆があるからこそ。
そう思えばどこか面映ゆくなって、ナナセは視線をずらしてはにかむ。
「で、いつ入籍するんじゃ?」
「……え」
「誘拐事件が起きてしまったこと自体はまことに遺憾じゃが、今回の件で侍女の実力はさらに認められるようになるだろう。この機会を逃す手はない。ナナセちゃんとリオルディス殿がすぐさま結婚し、それでも侍女として働き続ける見本を示すことによって、ようやく儂の悲願が――」
「結婚なんてまだ考えてもいません!」
滔々と持論を展開するレムンドを、ナナセは慌てて遮った。
このまま後見人の思惑に流されたら、今後とてつもなく追い詰められてしまうような気がする。不安の芽はここできっちり断ち切らねばならないと、本能が告げていた。
「私だって結婚願望がないわけじゃないです。けど、そういったかたちに捕らわれる必要もないかなとも思っていて」
リオルディスと結婚し、子どもを生み温かな家庭を築く。
それはとても幸せなことだろうし、いずれは実現させたいと、ナナセ自身が強く願うようになるかもしれない。
けれど全ては、まだまだ先のこと。
「この世界では身寄りのない私に、たくさんのものを与えてくださったレムンドさんの期待を裏切るかたちになってしまうことは非常に心苦しいのですが、結婚に関してはしっかりきっぱりお断りさせていただきます!」
侍女として培われた完璧な礼をみせるも、レムンドは諦めなかった。
「だが先ほど、『まだ』と言ったな。ということは、リオルディス殿との結婚も視野に入れておるんじゃろ?」
「そりゃあ、好きな相手とのことですから。でも今は、もっと仕事に打ち込んでいたいんです。だから、すみません」
重ねて断るが、彼はなおも食い下がろうとする。何と諦めの悪い。
「実力と能力が伴うようになるには数年がかかるというのに、この国には一人前になる前に辞めてしまう侍女があまりに多いと思わんか? 人材は宝じゃ。このまま事態を放置していれば、いずれ引き継がれるべき知識も喪失してしまうかもしれん。今こそ、働き方改革が必要なんじゃ……!」
それはナナセも危惧するところだが、だからといって一介の侍女にできることはない。
シフォンケーキをすっかり平らげると、ナナセは立ち上がった。
「レムンドさん。私を結婚させるより、国王陛下に上奏した方がずっと近道だと思いますよ。そうして女性が働きやすい環境を、少しずつ作っていくんです」
脅されようが泣き落としをされようが、断固として受け入れるつもりはない。
そう言外に告げれば、レムンドは今度こそテーブルに突っ伏した。
明日からはまた忙しい日々。
連休明けというのは、学生だろうと社会人だろうと怠惰になりがちだ。気を引き締めて仕事に取り組まねばならない。
もはやレムンドの嘆きなど頭から閉め出し、ナナセは出勤方法について考える。
フランセン家が後見についていることはもはや公然の秘密のようになっているが、平民の立ち位置を貫くためには辻馬車を拾うべきだろう。少し早く屋敷を出るべきか。
部屋を出たところで、情けないレムンドの声が追いすがってきた。
「なぜじゃ、ナナセちゃん……!」
ナナセは扉の向こうでにっこり微笑んだ。
「――だって産休制度とか休業補償とか、ないじゃないですか」
パタリ。
無情にも扉は閉じられる。
世にも悲痛な叫びが、昼下がりのフランセン邸に響き渡った。
◇ ◆ ◇
ヴァンルートスを乗せた馬車が、ぐんぐんと遠ざかっていく。
今日は、王宮に逗留していた少年が、ディシェンド王国に帰国する日だ。
リリスターシェの私室から見送っているのは、誘拐事件のきっかけを作ったとして殿下方が謹慎を言い渡されているため。
期限は定められておらず、公式行事以外の外出も認められていない。
これまでずいぶん大目にみてきた国王陛下にしては、かなり厳しい罰だ。
リリスターシェも、昨晩催された送別の宴にて別れの挨拶を済ませている。
近い内に会う約束をしたらしいので、必要以上に悲しむことはないだろう。今生の別れでもない。
……そう、頭では分かっていても、寂しいものは寂しい。
それが会えなくなるということ。
窓に張り付いたままの小さな背中に、ナナセは吐息のような笑みをこぼす。馬車はほとんど豆粒のようになっていた。
「寂しくなりますね、リリスターシェ様」
「ナナセ……」
振り返った少女の鼻は、少し赤くなっていた。必死に涙を堪えているのだろう。
ナナセは手を伸ばし、リリスターシェを優しく抱き締めた。
幼い手が必死にしがみついてくれるのが、何とも可愛らしい。
「またすぐに会えますよ」
「……うん」
「それまでに、お菓子作りの腕をもっと磨いておきましょう。ヴァンルートス殿下もきっと驚くことでしょう。私も微力ながらお手伝いいたします」
「うん。ありがとう……」
手近に分かりやすい目標があれば、寂しさも紛れることだろう。
金色の細く柔らかい髪を慎重に撫でながら、リリスターシェが落ち着くのを待つ。非礼な態度だが侍女長からの叱責はなかった。
しばらくして顔を上げたリリスターシェは、かろうじて涙を堪えきったようだ。
若葉のような緑の瞳は充血しているけれど、頬に涙の跡はない。
「そういえば、ナナセ。さっき、『リリスターシェ様』って……」
窺うように訊ねられ、ナナセは頷き返す。
「不敬でしたでしょうか?」
「いいえっ、とっても嬉しいわ!」
リリスターシェはぶんぶんと首を振り、本当に嬉しそうに笑った。
「不思議ね……あなたどこか、雰囲気が柔らかくなった気がするわ。最近、いいことでもあったのかしら?」
首を傾げる王女に、いつの間にか近付いていたエビータが耳打ちをする。
「もしかしたら、リオルディス様との関係に変化があったのかもしれません」
「まぁっ、それは由々しき事態だわ! じっくり聞き出すためにも、すぐにお茶の準備をしなくてはね!」
先ほどまでの萎れた様子が嘘のように、リリスターシェは元気いっぱい動き出す。思わずエビータと顔を見合わせ笑ってしまった。
おそらく、王女に元気を出してもらうための作戦だったのだろう。
「お見事です。さすが、長年お仕えしているだけありますね」
「あなたの恋のお話を根掘り葉掘り聞きたいのは、紛れもない本音ですよ」
「えぇ……」
なぜ、侍女長にまで勘づかれているのか。
リリスターシェの明るい笑みを見られたことは喜ばしいが、長引く尋問に疲れ果てたナナセは、そう恨みがましく思わずにいられなかった。
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