【本編完結】16才、子供を産みました〜僕がママでごめんね〜

赤井たまご

文字の大きさ
2 / 12

生後1日目

しおりを挟む
✽✽✽

-病室-

サァァ…と窓からの生温い風が、いとの頬を撫でる。

ふわふわと寄れる白いカーテンにつられるように、絃はゆっくりと瞼を開けた。

はちみつ色の透き通った瞳がジィ…と一点を見つめる。

「………」

真っ白な天井に、ツン…と鼻につく消毒の匂い。

絃は自分が病院にいることに気付き、絶望した。

「……(また、お金がかかる……施設に迷惑が……僕が…Ωなばっかりに……)」

絃の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ち、枕を濡らす。

この世界には、男女の性別の他「αアルファ」「βベータ」「Ωオメガ」と言う「第二の性」が存在する。

人口の2割を占めるαアルファは、生まれた時からカリスマ性を持ち「華やかな容姿」「優れた知能」を持つ者が多い。そのため上流階級の人間に多く存在し、また男女ともにΩオメガを妊娠させることが出来る。

人口の7割を占めるβベータは、人並みの容姿と能力を持ち、一般家庭に多く生まれる性である。基本的には「男女」の性でのみ生きている。

人口の1割を占めるΩオメガは、男女ともに華奢な者が多く、また3ヶ月に一度発情期があるため、男女ともに妊娠することが可能である。

絃は、第一性は「男」だが、第二性は「Ωオメガ」だった。

Ωオメガの発情期フェロモンはαやβを惑わすとされ、いつの時代も好奇な目で見られることが多く、迫害を受けて来た時代も存在した。

生後間もなく児童養護施設に預けられた絃は、両親の存在を知らない。
自分が「Ωオメガ」であるがために両親に捨てられた、そう思い生きてきた。

その上、Ωオメガは発情期フェロモンを抑えるための「抑制剤」が必要なため、毎月お金がかかる。

自分の存在が施設に迷惑をかけていると、絃は常に申し訳なく感じていた。

何故なら、絃が暮らす施設は数年前から経営難に陥っており、運営を続けることが厳しい状況化であった。施設長は資金集めに奮起していたが、最近は子供達の引き取り先を探すことに意向を変えた。

そんな苦しい中でも、絃の抑制剤を欠かさず用意してくれた施設には本当に感謝していた。

だが、半年前

絃は誰にも、何を言わずに施設を飛び出した。

「…………(施設に…全部バレたかな………)」

絃は「妊娠」していることを「誰にも」知られたくなかった。

施設にこれ以上、迷惑をかけたくなかった。

学校では、教師も生徒も常に「珍しいΩオメガ」を好奇な目で見てくるため、友人の1人も出来なかった。

頼れる人もいない中で、どんどん大きくなるお腹に絃は恐怖し、どうしたらいいのか分からず、現実から目を背けるかのように駆け出した。

「………(子供は………)」

その後は漫画喫茶や公園で夜を明かし、気付けば公園のトイレで子供を産んでしまった。

「…う…っ………(僕の…「彼」の赤ちゃんは……)」

絃は声を漏らしながら涙を流す。

すると

ガラガラッ

「!!!」

勢いよく部屋の扉が開き、絃は驚きのあまり目を大きく見開いた。

「…桜井さん?…目が覚めたんですね…良かった…」

形のいい眉を歪ませながら、ベビーフェイスな小柄の男性が絃に近づいてくる。

白衣を着ているため医者だと分かるものの、私服だったら完全に未成年に見えるこの男性こそ、絃の執刀医である産婦人科医の有村 月麦ありむら つむぎ(27)であった。

「…大丈夫?起きれる?」

絃は近付いてくる有村に

「…あ、あ……あか…赤ちゃんは……っ…」

精一杯絞り出した声で、赤子の行方を確認する。

「……大丈夫。今は保育器にいるよ。絃くんよりも全然元気だよ!」

「……っ…う、ぅ…よか、…った……」

泣きじゃくる絃を見た有村は、ホッと胸を撫で下ろし呟く。

「…良かった……ちゃんと「大切な人」との赤ちゃんなんだね」

「!!!」

絃の脳裏に蘇る「彼」の笑顔と「残酷な言葉」


「……ごめん…ちょっと、考えさせて…」

妊娠を告げたあの日、絃と赤子は「彼」に捨てられた。
 
視界は真っ暗に染まり、絃は這い上がれないほどの谷底に突き落とされたのだった…。

✽✽✽
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

【本編完結】αに不倫されて離婚を突き付けられているけど別れたくない男Ωの話

雷尾
BL
本人が別れたくないって言うんなら仕方ないですよね。 一旦本編完結、気力があればその後か番外編を少しだけ書こうかと思ってます。

複数番ハーレムの中に運命の番が加わったら破綻した話

雷尾
BL
合意を得なきゃだめだよね。得たところで、と言う話。割と目も当てられないぐらい崩壊します。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。

水鳴諒
BL
 目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)

恋が始まる日

一ノ瀬麻紀
BL
幼い頃から決められていた結婚だから仕方がないけど、夫は僕のことを好きなのだろうか……。 だから僕は夫に「僕のどんな所が好き?」って聞いてみたくなったんだ。 オメガバースです。 アルファ×オメガの歳の差夫夫のお話。 ツイノベで書いたお話を少し直して載せました。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

妹に奪われた婚約者は、外れの王子でした。婚約破棄された僕は真実の愛を見つけます

こたま
BL
侯爵家に産まれたオメガのミシェルは、王子と婚約していた。しかしオメガとわかった妹が、お兄様ずるいわと言って婚約者を奪ってしまう。家族にないがしろにされたことで悲嘆するミシェルであったが、辺境に匿われていたアルファの落胤王子と出会い真実の愛を育む。ハッピーエンドオメガバースです。

処理中です...