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生後1日目
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✽✽✽
-病室-
サァァ…と窓からの生温い風が、絃の頬を撫でる。
ふわふわと寄れる白いカーテンにつられるように、絃はゆっくりと瞼を開けた。
はちみつ色の透き通った瞳がジィ…と一点を見つめる。
「………」
真っ白な天井に、ツン…と鼻につく消毒の匂い。
絃は自分が病院にいることに気付き、絶望した。
「……(また、お金がかかる……施設に迷惑が……僕が…Ωなばっかりに……)」
絃の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ち、枕を濡らす。
この世界には、男女の性別の他「α」「β」「Ω」と言う「第二の性」が存在する。
人口の2割を占めるαは、生まれた時からカリスマ性を持ち「華やかな容姿」「優れた知能」を持つ者が多い。そのため上流階級の人間に多く存在し、また男女ともにΩを妊娠させることが出来る。
人口の7割を占めるβは、人並みの容姿と能力を持ち、一般家庭に多く生まれる性である。基本的には「男女」の性でのみ生きている。
人口の1割を占めるΩは、男女ともに華奢な者が多く、また3ヶ月に一度発情期があるため、男女ともに妊娠することが可能である。
絃は、第一性は「男」だが、第二性は「Ω」だった。
Ωの発情期フェロモンはαやβを惑わすとされ、いつの時代も好奇な目で見られることが多く、迫害を受けて来た時代も存在した。
生後間もなく児童養護施設に預けられた絃は、両親の存在を知らない。
自分が「Ω」であるがために両親に捨てられた、そう思い生きてきた。
その上、Ωは発情期フェロモンを抑えるための「抑制剤」が必要なため、毎月お金がかかる。
自分の存在が施設に迷惑をかけていると、絃は常に申し訳なく感じていた。
何故なら、絃が暮らす施設は数年前から経営難に陥っており、運営を続けることが厳しい状況化であった。施設長は資金集めに奮起していたが、最近は子供達の引き取り先を探すことに意向を変えた。
そんな苦しい中でも、絃の抑制剤を欠かさず用意してくれた施設には本当に感謝していた。
だが、半年前
絃は誰にも、何を言わずに施設を飛び出した。
「…………(施設に…全部バレたかな………)」
絃は「妊娠」していることを「誰にも」知られたくなかった。
施設にこれ以上、迷惑をかけたくなかった。
学校では、教師も生徒も常に「珍しいΩ」を好奇な目で見てくるため、友人の1人も出来なかった。
頼れる人もいない中で、どんどん大きくなるお腹に絃は恐怖し、どうしたらいいのか分からず、現実から目を背けるかのように駆け出した。
「………(子供は………)」
その後は漫画喫茶や公園で夜を明かし、気付けば公園のトイレで子供を産んでしまった。
「…う…っ………(僕の…「彼」の赤ちゃんは……)」
絃は声を漏らしながら涙を流す。
すると
ガラガラッ
「!!!」
勢いよく部屋の扉が開き、絃は驚きのあまり目を大きく見開いた。
「…桜井さん?…目が覚めたんですね…良かった…」
形のいい眉を歪ませながら、ベビーフェイスな小柄の男性が絃に近づいてくる。
白衣を着ているため医者だと分かるものの、私服だったら完全に未成年に見えるこの男性こそ、絃の執刀医である産婦人科医の有村 月麦(27)であった。
「…大丈夫?起きれる?」
絃は近付いてくる有村に
「…あ、あ……あか…赤ちゃんは……っ…」
精一杯絞り出した声で、赤子の行方を確認する。
「……大丈夫。今は保育器にいるよ。絃くんよりも全然元気だよ!」
「……っ…う、ぅ…よか、…った……」
泣きじゃくる絃を見た有村は、ホッと胸を撫で下ろし呟く。
「…良かった……ちゃんと「大切な人」との赤ちゃんなんだね」
「!!!」
絃の脳裏に蘇る「彼」の笑顔と「残酷な言葉」
「……ごめん…ちょっと、考えさせて…」
妊娠を告げたあの日、絃と赤子は「彼」に捨てられた。
視界は真っ暗に染まり、絃は這い上がれないほどの谷底に突き落とされたのだった…。
✽✽✽
-病室-
サァァ…と窓からの生温い風が、絃の頬を撫でる。
ふわふわと寄れる白いカーテンにつられるように、絃はゆっくりと瞼を開けた。
はちみつ色の透き通った瞳がジィ…と一点を見つめる。
「………」
真っ白な天井に、ツン…と鼻につく消毒の匂い。
絃は自分が病院にいることに気付き、絶望した。
「……(また、お金がかかる……施設に迷惑が……僕が…Ωなばっかりに……)」
絃の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ち、枕を濡らす。
この世界には、男女の性別の他「α」「β」「Ω」と言う「第二の性」が存在する。
人口の2割を占めるαは、生まれた時からカリスマ性を持ち「華やかな容姿」「優れた知能」を持つ者が多い。そのため上流階級の人間に多く存在し、また男女ともにΩを妊娠させることが出来る。
人口の7割を占めるβは、人並みの容姿と能力を持ち、一般家庭に多く生まれる性である。基本的には「男女」の性でのみ生きている。
人口の1割を占めるΩは、男女ともに華奢な者が多く、また3ヶ月に一度発情期があるため、男女ともに妊娠することが可能である。
絃は、第一性は「男」だが、第二性は「Ω」だった。
Ωの発情期フェロモンはαやβを惑わすとされ、いつの時代も好奇な目で見られることが多く、迫害を受けて来た時代も存在した。
生後間もなく児童養護施設に預けられた絃は、両親の存在を知らない。
自分が「Ω」であるがために両親に捨てられた、そう思い生きてきた。
その上、Ωは発情期フェロモンを抑えるための「抑制剤」が必要なため、毎月お金がかかる。
自分の存在が施設に迷惑をかけていると、絃は常に申し訳なく感じていた。
何故なら、絃が暮らす施設は数年前から経営難に陥っており、運営を続けることが厳しい状況化であった。施設長は資金集めに奮起していたが、最近は子供達の引き取り先を探すことに意向を変えた。
そんな苦しい中でも、絃の抑制剤を欠かさず用意してくれた施設には本当に感謝していた。
だが、半年前
絃は誰にも、何を言わずに施設を飛び出した。
「…………(施設に…全部バレたかな………)」
絃は「妊娠」していることを「誰にも」知られたくなかった。
施設にこれ以上、迷惑をかけたくなかった。
学校では、教師も生徒も常に「珍しいΩ」を好奇な目で見てくるため、友人の1人も出来なかった。
頼れる人もいない中で、どんどん大きくなるお腹に絃は恐怖し、どうしたらいいのか分からず、現実から目を背けるかのように駆け出した。
「………(子供は………)」
その後は漫画喫茶や公園で夜を明かし、気付けば公園のトイレで子供を産んでしまった。
「…う…っ………(僕の…「彼」の赤ちゃんは……)」
絃は声を漏らしながら涙を流す。
すると
ガラガラッ
「!!!」
勢いよく部屋の扉が開き、絃は驚きのあまり目を大きく見開いた。
「…桜井さん?…目が覚めたんですね…良かった…」
形のいい眉を歪ませながら、ベビーフェイスな小柄の男性が絃に近づいてくる。
白衣を着ているため医者だと分かるものの、私服だったら完全に未成年に見えるこの男性こそ、絃の執刀医である産婦人科医の有村 月麦(27)であった。
「…大丈夫?起きれる?」
絃は近付いてくる有村に
「…あ、あ……あか…赤ちゃんは……っ…」
精一杯絞り出した声で、赤子の行方を確認する。
「……大丈夫。今は保育器にいるよ。絃くんよりも全然元気だよ!」
「……っ…う、ぅ…よか、…った……」
泣きじゃくる絃を見た有村は、ホッと胸を撫で下ろし呟く。
「…良かった……ちゃんと「大切な人」との赤ちゃんなんだね」
「!!!」
絃の脳裏に蘇る「彼」の笑顔と「残酷な言葉」
「……ごめん…ちょっと、考えさせて…」
妊娠を告げたあの日、絃と赤子は「彼」に捨てられた。
視界は真っ暗に染まり、絃は這い上がれないほどの谷底に突き落とされたのだった…。
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