ラノベの特典についてきたのは美少女でした

与田リクト

文字の大きさ
4 / 4

さらば語彙力。

しおりを挟む
「生徒会長は許嫁」の新作の発売まで待っているともう5月下旬。中間テストという隕石が投下され、心は氷河期を迎えたが、数学が得意なお二方、マサとハっちゃんのおかげで苦手だった数学の赤点は逃れられそうだ。本当にあざす。”僕、理系なのに数弱なんだ”という言葉は絶対信じてはいけないのが鉄則だが、俺の場合は本当ゆえ例外中の例外なのだろう。

「テストお疲れ。とりあえず二人のおかげで今回も数学なんとかなったわ。本当にあざす。」

「おう、お疲れさんー。赤点回避できたらお礼は店員さんの写メ見せてもらうことな、告白の結果報告待ってるから頑張りやー。」

「粉砕確定だから写メとれるわけがないだろ……期待すんなよ。」

「じゃあ俺とハっちゃんに何か奢るってことでよろー。」

「お、それいいすね、じゃあ焼肉がいいなあ、人の金で食べる焼肉ほど旨い物はないよね。」

「へいへい考えとくわ、んじゃ先失礼するわ。」

「ういー、成功祈ってるよー」

 もう俺を邪魔する足枷はない。テストも告白への躊躇いもどこか彼方へと消えた。天候に恵まれた五月晴れの空。暑いことなど、特典のことを考えればどーでもよくなる。ん、だってテストで普段よりも早く終わったのだから、今回は流石に特典をとれるだろう。何度も逃してる俺にようやく運が廻ってきた。勝ち確。







 時刻は午後4時。ルーティンと化した駅到着を早く済まし、書店の前に今、俺はいる。夢にまで見た特典が現実に。心臓は文字通り鼓動が止まらないが、別の意味でも止まない。告白の件で緊張しすぎてるのだ。「口先では言葉にできても実行には移せない」。そんな戯言を何度も聞いてきた。が、ここまで来て諦めるなど選択肢にない。特典と告白、どっちも譲れない。自分は常々欲しいことに強欲なのだと実感する。内なる気持ちを改めて確認し、いざ。店内に入って見渡すと”彼女”がいつものレジにいた。

 嗚呼、可愛すぎる。……心の声聞こえてないよね?

 余計なことが頭の片隅によぎりながらも俺は彼女に例の質問を投げた。

「すみません、特典まだ残っていますか。」

 やっぱり二つのこと同時に考えるのきつい。うん、まずは特典のことからだな。ってあれ?いつもの店員さんが驚いた表情を浮かべている。ん、いや困惑してる?

「……。あっ、あ、すみません、これですね。」

 明らかに冷静さを欠いた彼女が、特典を袋に詰める。うん、俺が早く来ると思ってなかったからびびっているのだろう。顔、覚えててくれたのか。嬉しいいいいいい。

 それはおいといて。彼女から手渡された中身。ようやく、ようやく願望が叶う。人前でなかったなら。特に“彼女”の前でなければ、感動のあまり、発狂していたに違いない。全身からみなぎるこの感情をどうにか抑え、もう一つの「やる」と決めたことを。

「店員さん。それと話したいことがありまして。この後、お時間ありますか。」

「……。8時にこのビルの外で待ってもらえますか。だいぶ時間空きますけど。」

「ッッッ!了解しました、8時ですね。じゃあ、また。」

 とりあえずまとまった時間でゆっくり伝えることができそうだ。ビルから出たときの景色が今までの訪問の際と、まるで違う。もう高層ビルが絶景。それはおいといて、時間までどうしようか……あ、緊張しすぎて色紙すっかり見れていないじゃないか。どこか近くのカフェで、珈琲1杯頼んで数時間粘る間にゆっくりじっくり見よう。……まずい、興奮してきた。



カフェにて。

「あああああああああああああああああ、嬉しいいいいいい。やばい、マジやばい……語彙力失うわ、これ。」

 振られる前に、今のうち喜んでおこうと思って開封したのだが。色紙が凄いって言葉じゃ収まりきらないくらいのクオリティゆえ、告白のこと忘れて全力で発狂してしまっている。あれ、心の中で叫んだはずだよね?周りの人達こっち見つめていないかい……。あ、ごめんなさい。







 色紙とファイルを思う存分眺めていたら、なんか気づかない間にもう7時30分。嬉しすぎるあまり、また時飛ばししてしまった。幸せ。作者様、本当にありがとう。次のテストも頑張れそうだ。ん、7時半?間に合うのか不安になってきた。ここのカフェからビルまで結構かかりそうだ、急げ急げ。

 全力で約束の場所に向かう。心臓が鼓動しすぎているが、走ったことによるものなのか緊張なのか分からない。時間ギリギリで着くと、そこには夜風になびく流麗な黒髪の少女。目線が合わさり、数秒見つめる。そして自分は気になっているのだと再認識する。体が浮つく感覚。やべ、苦しいし、体が熱い。重症だこれ。憧れているなんてレベルじゃない。この子のことが好きだ。

「……お待たせしてすみません。こちらから提案しておいて。」

「いえ、私も伝えたいことがありましたから。それでご用件というのはなんでしょう。」

 ん、伝えたいこと?状況から察するに、俺が好意抱いていることに気づいたからやめてほしい的な?うん、分かっていたこと。迷惑なのは承知の上。ラノベから学んだのだ。「後悔の仕方」を。

「あ、あの。その。実は、初めて会ったときからあなたのことが気になっていました。連絡先交換していただけないでしょうか。」

 メンタル粉々にされる準備はできてる。でもアロンアルファで修復して、立ち上がるんだ、何度も。そのつもり。

「……その。とりあえず連絡先なら。交換よろしくお願いします。」

「……。」

 ? 

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜

沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」 中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。 それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。  だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。  • 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。  • 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。  • 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。  • オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。  恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。 教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。  「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」  鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。 恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

処理中です...