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第五章
短針マシュマロと消えた写真(3)
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『みんな、おはよう! 今日はお弁当忘れないように持ってきてよ! 特にジョージ! あんたお弁当忘れても、分けてあげないからね!』
いつしか寝てしまっていた僕は、腕時計から聞こえる紅葉の元気な声で目をさました。
「千斗ー、そろそろ起きなさい」
お母さんが部屋に入ってくる。僕は慌てて腕時計を隠し、声が漏れないようにした。
「どうしたの千斗、突然布団に包まったりして。起きてるなら早く顔を洗ってきなさい」
珍獣でも見るような目だ……。そういえばこの時計は他の人にはわからないんだった。これじゃまるで怪しんでくださいって、わざわざ言っているようなものだ。お母さんはニヤニヤしている。何を怪しんでいるのか知らないけど、すごく嫌な感じだ。
『こちらミチル、お弁当の件了解です』
ミチルからヒソヒソ声での通信が届いた。たぶん近くに家族がいるんだろう。
『おはよう! ボク、マルコ、お弁当は大丈夫だよ! 今ママが作ってくれてるんだ!』
『こちら……クレイジー1号……あと十分……』
ジョージはまだ半分夢の中だ。今日の遅刻も間違いない。
「おはよう、こちら千斗。僕もお弁当は大丈夫だよ、じゃあ後で」
『朝から元気ないわよ! そんなんじゃスカーフェイスに逃げられちゃうわよ!』
ただ一人紅葉が声を張り上げる。
「お父さん、おはよう!」顔を洗って食卓に着くと、新聞を大きく開いて、すっぽりと顔を隠していたお父さんが、横から笑顔をのぞかせた。
「千斗、今日はみんなで弁当を食べるんだって? 公園で弁当なんてうらやましいな」
花見でもすると思っているのか、お父さんは新聞紙ごと僕の座る席まで椅子を引っ張ってきて、ゴニョゴニョとつぶやいた。「で? 千斗のお目当ての女の子は来るのか」
僕は、思わず口に含んでいたスープを吹き出した。
「ちっ! 違うよ⁉ お父さん! そんなんじゃないんだから!」
「なあ、いいだろ? 教えろよ」お父さんは新聞に隠れるようにしてニヤついている。
「なーにバカやってるのよ、うちの男どもは……」お母さんが、お父さんから新聞を奪いとりながら、僕が吹き出したスープをふきんで拭くと呆れた声で笑った。
いつしか寝てしまっていた僕は、腕時計から聞こえる紅葉の元気な声で目をさました。
「千斗ー、そろそろ起きなさい」
お母さんが部屋に入ってくる。僕は慌てて腕時計を隠し、声が漏れないようにした。
「どうしたの千斗、突然布団に包まったりして。起きてるなら早く顔を洗ってきなさい」
珍獣でも見るような目だ……。そういえばこの時計は他の人にはわからないんだった。これじゃまるで怪しんでくださいって、わざわざ言っているようなものだ。お母さんはニヤニヤしている。何を怪しんでいるのか知らないけど、すごく嫌な感じだ。
『こちらミチル、お弁当の件了解です』
ミチルからヒソヒソ声での通信が届いた。たぶん近くに家族がいるんだろう。
『おはよう! ボク、マルコ、お弁当は大丈夫だよ! 今ママが作ってくれてるんだ!』
『こちら……クレイジー1号……あと十分……』
ジョージはまだ半分夢の中だ。今日の遅刻も間違いない。
「おはよう、こちら千斗。僕もお弁当は大丈夫だよ、じゃあ後で」
『朝から元気ないわよ! そんなんじゃスカーフェイスに逃げられちゃうわよ!』
ただ一人紅葉が声を張り上げる。
「お父さん、おはよう!」顔を洗って食卓に着くと、新聞を大きく開いて、すっぽりと顔を隠していたお父さんが、横から笑顔をのぞかせた。
「千斗、今日はみんなで弁当を食べるんだって? 公園で弁当なんてうらやましいな」
花見でもすると思っているのか、お父さんは新聞紙ごと僕の座る席まで椅子を引っ張ってきて、ゴニョゴニョとつぶやいた。「で? 千斗のお目当ての女の子は来るのか」
僕は、思わず口に含んでいたスープを吹き出した。
「ちっ! 違うよ⁉ お父さん! そんなんじゃないんだから!」
「なあ、いいだろ? 教えろよ」お父さんは新聞に隠れるようにしてニヤついている。
「なーにバカやってるのよ、うちの男どもは……」お母さんが、お父さんから新聞を奪いとりながら、僕が吹き出したスープをふきんで拭くと呆れた声で笑った。
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