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幕間 美少女の苦悩
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とあるおっさんが強制的に次の人生へと送られた直後、おっさんが勝手にアンジェリーナ(仮)と心の中で呼んでる美少女天使が姿を現した。
美少女天使は応接室のテーブルに残っていた使用された跡のあるティーセットを見て、すでにおっさんが出発した後だと知った。
彼女は目の前にいる美女天使がそれらを用意しておっさんに応対したと解釈していたのだが、実際はおっさんが自分の手で勝手に用意して使ったものだ。
おっさんにはちゃんとした知識が無いので非常に勿体無い使い方をしていたのだが、安い緑茶や簡易な紐付きしか使った事が無いので仕方のない事でもあった。
「間に合いませんでしたか」
「はい、少し前に出発しました」
「彼に労いの言葉の1つでもかけてあげたのですか?」
「主様の為に働くのは当然の事なのに、労いの言葉が必要なのですか?」
はぁ……、その主様が助力を請うたのが事の始まりなのだから当然でしょう?
狂ったように信じると書くのが狂信ですが、主様を盲信しすぎて狂ってしまったのでしょうか?
こんなのに相手をさせてしまったは失敗だったかもしれませんが、他のはこれと姿形は同じでも主様からの命令だけを聞く生きた人形レベルの思考力しかありませんからね……。
しかも、自分がベースになってるとはいえ同じ姿の者がたくさん居る事に疑問や不満は抱かないのでしょうか?
「……次からは声をかけてあげるよう心がけてください。それにしてもずいぶんと酷い内容ですね……。彼から何か言われませんでしたか?」
「多少の質問はありました。ですが、権限の無い私では判断がつきませんでしたのであまり答えられませんでした。その他で重要と思われるものは特にありませんでした」
そんなはずが無いでしょう?
こんな悪意しか感じられない内容で文句の1つも出ないなどと、考えられない事です。
彼の事だから『知らない』『権限が無い』などと繰り返された事で、質問をはぐらかされたと感じたか無駄だと判断して聞くのを諦めたのでしょう。
それに、私もそんな幼稚な手に引っかかってやるつもりもありません。
「では重要では無いものはあったわけですね。それを報告してください」
「……主様やあなたの事を気にしていました」
ほら見なさい、それはとても重要だと、前に私が魚を捌いてた時に言ったではありませんか。
そういった報告や適切な判断が出来ないからあなたは主様に認められなかったのですよ。
もっとも、認められたのがよかったかどうかは判断が難しい部分でもありますが、言っても火に油を注ぐだけで無駄でしょう。
あの頃は私のわがままを笑って受け入れてくれる優しい人たちだったのですけどね……。
もう、あの頃の関係には戻れないという事なのでしょう。
「わかりました。では私は自分の部屋で調べ物をした後に仕事の続きに戻りますね」
「主様からのお仕事を置いてまでしなければならない仕事がまだ何かあるのでしょうか?」
「……どこかに不具合でもあるのか、どうも変換効率が落ちているようなのでその原因を探しています。何か気が付いた事があれば教えてください。頼みましたよ」
「はい」
「さすがに正面から攻めすぎましたか。まああの余裕ぶった態度だけでも主様から何らかの指示があるのは間違い無いでしょう。彼が何を伝えたがっているのはわかりませんが、今は我慢してもらうしかありません。私も彼も警戒されていますからね、下手に動いて対策を取られるのはまずいのです。……ええ、そうですね。わかりました、ではそちらに参ります」
出来れば穏便に済ませたかったのですが、これまで沈黙を貫いてきたあの方がお呼びとなるとそうもいかなくなってきましたね。
きっと会議という名の尋問で、口先や姑息な手を使って追求から逃れている主様に代わっていろいろと聞かされるのでしょう。
大恩のあるあの方まで敵対しかねない状況だと、理解出来ているのでしょうか?
これからの事を思うと頭が痛くなってきましたよ……。
主様からひどい目に合わされてる彼よりはマシなのでしょうけども、私も彼も持って産まれた不幸体質というのは厄介なものですね……。
美少女天使は応接室のテーブルに残っていた使用された跡のあるティーセットを見て、すでにおっさんが出発した後だと知った。
彼女は目の前にいる美女天使がそれらを用意しておっさんに応対したと解釈していたのだが、実際はおっさんが自分の手で勝手に用意して使ったものだ。
おっさんにはちゃんとした知識が無いので非常に勿体無い使い方をしていたのだが、安い緑茶や簡易な紐付きしか使った事が無いので仕方のない事でもあった。
「間に合いませんでしたか」
「はい、少し前に出発しました」
「彼に労いの言葉の1つでもかけてあげたのですか?」
「主様の為に働くのは当然の事なのに、労いの言葉が必要なのですか?」
はぁ……、その主様が助力を請うたのが事の始まりなのだから当然でしょう?
狂ったように信じると書くのが狂信ですが、主様を盲信しすぎて狂ってしまったのでしょうか?
こんなのに相手をさせてしまったは失敗だったかもしれませんが、他のはこれと姿形は同じでも主様からの命令だけを聞く生きた人形レベルの思考力しかありませんからね……。
しかも、自分がベースになってるとはいえ同じ姿の者がたくさん居る事に疑問や不満は抱かないのでしょうか?
「……次からは声をかけてあげるよう心がけてください。それにしてもずいぶんと酷い内容ですね……。彼から何か言われませんでしたか?」
「多少の質問はありました。ですが、権限の無い私では判断がつきませんでしたのであまり答えられませんでした。その他で重要と思われるものは特にありませんでした」
そんなはずが無いでしょう?
こんな悪意しか感じられない内容で文句の1つも出ないなどと、考えられない事です。
彼の事だから『知らない』『権限が無い』などと繰り返された事で、質問をはぐらかされたと感じたか無駄だと判断して聞くのを諦めたのでしょう。
それに、私もそんな幼稚な手に引っかかってやるつもりもありません。
「では重要では無いものはあったわけですね。それを報告してください」
「……主様やあなたの事を気にしていました」
ほら見なさい、それはとても重要だと、前に私が魚を捌いてた時に言ったではありませんか。
そういった報告や適切な判断が出来ないからあなたは主様に認められなかったのですよ。
もっとも、認められたのがよかったかどうかは判断が難しい部分でもありますが、言っても火に油を注ぐだけで無駄でしょう。
あの頃は私のわがままを笑って受け入れてくれる優しい人たちだったのですけどね……。
もう、あの頃の関係には戻れないという事なのでしょう。
「わかりました。では私は自分の部屋で調べ物をした後に仕事の続きに戻りますね」
「主様からのお仕事を置いてまでしなければならない仕事がまだ何かあるのでしょうか?」
「……どこかに不具合でもあるのか、どうも変換効率が落ちているようなのでその原因を探しています。何か気が付いた事があれば教えてください。頼みましたよ」
「はい」
「さすがに正面から攻めすぎましたか。まああの余裕ぶった態度だけでも主様から何らかの指示があるのは間違い無いでしょう。彼が何を伝えたがっているのはわかりませんが、今は我慢してもらうしかありません。私も彼も警戒されていますからね、下手に動いて対策を取られるのはまずいのです。……ええ、そうですね。わかりました、ではそちらに参ります」
出来れば穏便に済ませたかったのですが、これまで沈黙を貫いてきたあの方がお呼びとなるとそうもいかなくなってきましたね。
きっと会議という名の尋問で、口先や姑息な手を使って追求から逃れている主様に代わっていろいろと聞かされるのでしょう。
大恩のあるあの方まで敵対しかねない状況だと、理解出来ているのでしょうか?
これからの事を思うと頭が痛くなってきましたよ……。
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